第87話 これじゃあ練習どころじゃない?(1)たわわなパンチボール
俺達、麗は練習を始める事になった。
麗衣の説明によると、今日は俺達高校生組が中学生組のシャドーやサンドバック、ミット打ちを見てから、それぞれ得意な競技のルールで試合形式のスパーリングを行い、麗への加入を許可するかテストするとの事だ。
何故か俺なんかを気に入ったらしい吾妻さんの希望で、彼女と組んでストレッチを行った。
「好きなところを触って良いんですよ♪」
なんて誘惑してくるが、中学生相手にそんな事をする気はない。
そもそも、絶えず麗衣か勝子が監視の目を光らせている為、やましい事など出来ようはずもない。
ストレッチが終わると、次はシャドーが始まる。
吾妻さんに対して「エロい目で見てる」とあらぬレッテルを貼られ俺と引き離され、彼女は元ボクサーの勝子がシャドーを観る事にして、俺は麗衣等と共に吉備津さんと大伴さんを観る事になった。
「セイッ! セイッ!」
爪先を外側に八字形にして軽く立つ、八字立自然体の姿勢から吉備津さんと大伴さんが中段正拳突きを始める。
正拳突きの基本は肩甲骨を絞め、身体の中心を突くようなイメージで打つ。
大体の格闘技で共通するが肩を上げず、腋を締めながら打つのがコツだ。
正しいフォームで打てているかチェックをするところだが……正直それどころではない。
大伴さんが正拳を打つたびに引き付けられた腕に当たる衝撃なのか?
あるいは腕を突く勢いなのか?
ばるんっ! ……ばるんっ!
そんな卑猥な擬音が聞こえてきそうな程、正拳突きを振るうたびに大伴さんの年齢不相応に育った、たわわな果実がボクサーに打たれたパンチボールの如く激しく揺れ動いていた。
「なぁ、武……やっぱりデカイ子の好きなのか?」
麗衣が遠くを見る様な目で言った。
麗衣だって年齢の割には随分大きい方だが、年下の大伴さんに明らかに劣っていた。
「いや……そんな事無いけど……」
「本当か? お前、いつもあたしのパンツを見ている時よりエロい目をしているぞ?」
「え? いつも気付いていたの? じゃあわざと見せていたって事?」
「馬鹿ヤロー! んな訳あるかあっ!」
ボコっ!
「「ど……どうしたんですか!」」
麗衣の罵声と俺の頭に減り込んだ拳骨の音で、大伴さんと吉備津さんは正拳突きを止めて、心配そうに聞いてきた。
「いっ……イヤ、何でもねーよ、邪魔して悪かったな……。それよりか、正拳突きはもう良いから、次は蹴りを見せてくれ」
「「ハイ! 分かりました!」」
次は空手の最も基本である前蹴りだが。
「あっ……あのお~っ。前蹴りの軌道を確認するために……そのおっ……おっ……お二人で帯を持っていてくれませんか?」
大伴さんは遠慮がちに尋ねてきた。
「ああ。構わねーけど……」
「そうですか! ありがとうございます!」
大伴さんは麗衣に帯を渡し、吉備津さんは姫野先輩に帯を渡した。
麗衣と俺で帯を持ち大伴さんを見る事になり、吉備津さんは姫野先輩と恵が見る事になった。
胡坐をかく姿勢で帯の両端を二人で持ち、大体蹴りの練習をする人物の膝より上、太腿ぐらいの位置の高さで持つ。
前蹴りは足を引き上げ、足首を伸ばし上足底で蹴り、蹴り足を引いてから元に戻す。
軸足を中心に乗せて身体を真っすぐ保たなければならず、蹴る時は軸足が伸びあがらないように意識する。
もう一つのコツは蹴った足を引くときは膝を下げない事だ。
今回帯を使うのは蹴り足を引くときに膝が下がると帯に当たらない事を確認する為の様だが……正直それどころではない。
「せいっ! せいっ!」
懸命に大伴さんは前蹴りを放ってるが、俺の注意は関係ない部分に注がれていた。
太腿あたりの高さで帯を持つという事は自然に目線がその辺りに行ってしまうという事だ。
ぽっちゃり系の大伴さんが前蹴りを放つたびにブルマの股間部が俺の目に焼き付く。
反対側の帯を持つ麗衣と目が合うとヒットマンのような目つきで俺を睨んでいた。
「あっ……あのぉ~わたしの前蹴り如何だったでしょうか?」
一言で言えば最高でしたあっ!
何て言ったら麗衣に殺されそうだ。
……まさかまともに見るどころじゃなかった何て言えない。
「はぁ……蹴りはこれぐらいで良いぜ」
麗衣は溜息交じりに答えた。
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