第84話 「くんつほぐれつ」何回言った?
「えーっと、この度は武の正規メンバーへの格上げ、恵と澪の新規加入で『麗』は大幅に戦力がアップしました。あたしのようなロクで無しについて来てくれてありがとうございます」
「この人数で改まっても仕方ないんじゃん? それよりか麗衣サン。早速、俺とくんつほぐれつ組技の練習でもしようよ♪」
「駄目だよ澪ちゃん♪ 貴女は組技は素人なのだから怪我のもとだよ? 私がくんつほぐれつ麗衣さんに柔道を指導するから♪」
「恵サン。アンタは学校で毎日くんつほぐれつしているそうじゃないですか~。俺にも麗衣サンを別けて下さいよ!」
「あらぁ? 貴女の様に私は下心が見え見えな悪い子に麗衣さんとくんつほぐれつさせてあげるなんて危険な事出来ないよ」
「恵サンこそ、麗衣サンが組技の素人だからって、良いようにくんつほぐれつエロい事をしようと思っているんじゃないですか?」
「失礼な子ねぇ……貴女こそ体格差に物を言わせて麗衣さんを力づくで押し倒して、くんつほぐれつHなことするつもりでしょ?」
メンバーが六人しか居ないのに、新メンバーの二人が早くも火花を散らしていた。
「あー! くんつほぐれつくんつほぐれつってウルセーな! 喧嘩するなら二人とも首にするぞ!」
「「ごめんさない……」」
麗衣が怒り出すと、恵と澪はしょんぼりと落ち込み、その様を見て姫野先輩がクスクスと笑いながら言った。
「まぁまぁ。落ち着きたまえ。麗衣君にくんつほぐれつするのは僕だけの特権じゃないし、そのぐらい許してあげようじゃないか」
「だから、くんつほぐれつウルセーっつーの。それよりか、姫野。受験の時期迫っているけれど大丈夫なのか?」
「僕の心配は君の成績が一度でも僕を超えたらしてくれないか?」
「うっ……、入学時から首席守り続けている奴にそんな事言われると弱いな……」
初耳の話だ。
麗衣の台詞に澪と恵は驚きの声を上げた。
「え? 織戸橘先輩! マジですか! 流石麗衣サンとくんつほぐれつさせて貰えるだけあるぜ……」
「美人で格好良くて強いだけじゃなくて頭も良いなんて反則です……麗衣さんもくんつほぐれつされたくなりますよね……」
何回『くんつほぐれつ』連発しているのか数えるのも馬鹿らしくなってきた。
そんなにコイツ等は麗衣とくんつほぐれつしたいんだろうか……俺もしたいけど。
「いやいや。ウチの様な偏差値がせいぜい60そこそこの学校で主席など大した事あるまい。それに麗衣君だって努力すれば主席を狙えるぐらい頭が良いだろ?」
え? 麗衣が主席を狙える?
まさか。そんな訳ないだろ?
そんな俺の内心が表情に出ていたのか?
麗衣がじっと俺を睨みながら言った。
「まさか武、あたしの事バカだと思ってねーか?」
「い……いや~そんな事思ってないよ」
「まぁ、たかが学年15位、スポーツ推薦と入試の成績が低い奴が集まるDクラスでもクラス内順位3位どまりだからな。馬鹿じゃねーけど大したことはねーのは確かだな」
「「「えええっ~!」」」
俺、恵、澪の三人が一斉に驚く様を見て、麗衣はじと目で俺達を見た。
「……何か姫野が主席って聞いた時より驚いてないか? やっぱり、あたしの事バカだと思っていただろ?」
「「「いいえ。違います!」」」
俺たち三人は一斉に首を振った。
恵も澪も俺と考えている事は同じだったのだろう。
「因みに勝子は姫野ほどじゃねーけど、あたしよりは全然凄いぜ。1学期の成績は学年で4位。Bクラスで1位だ。入学時にAクラスに入ってないのが不思議な成績なんだけどなぁ……」
「「「マジ!?」」」
少し補足すると、俺達が通っている学校は入学時の成績によりクラス分けされ、基本的に内申や入試時の成績が良い順にA、B、C、Dクラスの順に割り当てられ、勝子が所属するBクラスは二番目に頭の良いクラスで、俺と麗衣、恵の所属するDクラスは一番成績が悪いか、スポーツ推薦で入学した生徒が集まっている。
つまり俺のDクラスは学力底辺のクラスであり、その影響もあってか、他のクラスよりも棟田の様な不良が居る比率が高いのだ。
「もっと上のレベルの学校行けば良かったんじゃないの?」
ウチの高校は学区内3位程度だから、そんなに成績が良いのであれば学区内2位の高校か、有名大学付属の私立高校でも合格できる学力がありそうなものだが。
「内申悪かったしね。それに、私は高校なんて麗衣ちゃんと同じなら何処でも良かったから」
と、如何にも関心が無いかの様に勝子は素っ気ない。
微妙な空気が流れたので、俺は恵に話を振った。
「ええっとぉ……恵って何位?」
「ええっとぉ……人に聞くときは自分から話すものだよ?」
それはそうだよな。
「俺はクラスで16位……学年で80位ってところだけど……」
2年になると理数系クラスが出来る。
理数系クラスへの進級希望者の中で成績上位の45名が理数系クラスへの進級が可能だ。
また、文系の進学クラスも出来る。
これは文系希望者の上位45名がこのクラスへの進級が可能である。
今こそ無くなったが、苛められていた環境から少しでも逃れる為に俺は文系の進学クラスへの進級を望んでいた為、勉強はかなり頑張っているつもりだが、苦手な理数系の成績がどうしても伸びず、中途半端な順位にとどまっていた。
俺達の学年は生徒総数180人であり、理数系クラスの希望者数によるが、俺が文系の進学クラスへ進級できるか微妙なラインだ。
「恵は何位なんだ?」
「えっとぉ……憐れむ様な目で見られるのが分かっているからノーコメントで良いかなぁ?」
もしかして、俺達の中では一番頭が良さそうな顔をしているコイツの成績が一番悪いのか……。
これ以上追求すると益々恵に嫌われそうだから止めた。
「まぁ、成績に関する話はそのぐらいにして……心配しなくても今日を最後にして麗への参加は自粛して受験に専念するよ。可愛くも心強い後輩がこんなに加入してくれたしね。とは言え、顔を知られてしまい、麗のメンバーが三人だった頃の様にゲリラ戦法で暴走族狩りをするという訳にも行かなくなったしね……まだまだ戦力不足だと言わざるを得ないね……」
姫野先輩がしばらく抜けるとして、俺、麗衣、勝子、恵、澪の五人しか居ない。
暴走族がタイマンを張るとは限らず、集団戦になった場合圧倒的に不利である。
「うーん……とは言え手頃な人材が居ないよな……環はあたしと違ってプロ目指しているから駄目だろうし」
環って誰の事だろうか?
麗衣が頭を悩ませていると、澪は麗衣に向かって挙手しながら言った。
「ハイハイ。それなら俺に心当たりあるんで麗に入れて貰っていいですか?」
「まぁ実力によるけどな……数ばっかり増えても駄目だぞ」
「あ、多分、大丈夫です。タイマンさせたりはしないですよね?」
「勿論タイマンなんかさせるつもりねーよ。まぁ集団戦の時にあたしらの背中を守るぐらいの実力があれば良い」
「それなら充分ですね。三人心当たりがあるので、今すぐここに呼んで良いですか?」
「構わねーけど……そいつ等ってもしかして
まさか赤銅三兄弟何てオチは無いよな?
「違いますよぉ~俺とオナ中(同じ中学)の恋人達ですよ」
何で恋人達って複数形なんだ?
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