第48話 タイマン予告動画(*過激な表現あり)
*本話には過激な描写が含まれている為、苦手な方はブラウザバックしてください。
あの後、授業を受け、昼休みの三十分と放課後の一時間、約束通り勝子に鍛えて貰い帰宅した。
身毛津がタイマンの日時と場所を指定すると言っていた事が気になったので、PCを立ち上げ「身毛津守」と検索すると、身毛津のSNSは確かに実在した。
身毛津のSNSを確認すると、「
観たくも無いが確認しないわけにもいかないので、表示されているURLをクリックする。
すると、薄暗く、ゴミ屋敷の様に荒れた部屋が映し出され、サングラスをかけた身毛津の姿を映すと、顔をカメラに寄せて言った。
「オイ? 聞いているか麗のクソビッチ! 最近暴走族潰しとかで雑魚相手にイキってるらしいけどよぉ?
身毛津はカメラに向かって中指を立て、挑発するかの様に舌を出した。
「囲んでリンチしちまえばテメーラなんざ楽勝だけどよぉ、女相手だから特別にタイマンで許してやるよ。場所はここ立国川ホテル駐車場。日時は明日の20時だ。良いな? タイマンはさっさと終わらせて、その後は生涯身体と記憶の両方に刻み込まれるような長い夜になるからよぉ……
立国川ホテルとは市内のはずれにあるホテルであり、何年も前に倒産し、廃墟となっていたが取り壊しもされずに長年放置されており、ネット上では廃墟巡りのスポットとして話題になっているそうだが、部屋によっては犯罪の痕跡も見つかっており、危険な場所としても知られている。
「この部屋はよぉ、俺達、
映像は芝が所々禿げたり焦げている畳の上に敷かれたボロボロな布団と、幾つかの空になった栄養ドリンクの瓶や灯油の缶、大小様々な大きさの石、洗面器、煙草、花火、ライター、アイスピック、赤い錆びがこびり付いている折れたカッターの刃、割れた電球……。
これらが一体何に使われていたのか想像に難くない。
中には使用済みと思しき萎び、破けたコンドームまで散乱している様子を映し出した。
畳やひび割れが目立つ壁には何箇所か血の跡があり、壁に描かれた下手な裸体の落書きと共に、女性としての尊厳を奪いつくされた犠牲者の物であろう、電話番号や数名の女性の名前やあだ名と、女性器を表現した落書きが十個程並べて書かれていた。
「今度はテメーの名前を壁に書いてやるよ。で、これは俺達が今まで一人ヤル度に一つ描いていたんだけどよぉ」
身毛津は女性器の落書きを指さした。
「よくある正の字じゃ芸がねぇからこの絵にしたんだけど、これも飽きちまった。でも、良い事思い付いたんだけれどよぉ、麗のクソビッチの身体中に今までヤッた分だけコイツを刻み込んでやればオモシレ―じゃん? 裸体アートってか? 俺って天才じゃん? ひゃはははっ!」
何が面白いのか知らないが身毛津は笑い出した。
「いいか? テメーラ明日はヤッた後裸体アートにしてやるからよぉ? 逃げんなよ? まぁ、逃げても良いぜ。逃げたところで面も学校も割れているから埒るだけだけどな。その時は裸体アートじゃ済まねーからな? ひゃはははっ! で、麗関係者以外の諸君! 次回はライブで実況レイプを公開する予定なので乞うご期待! 裸体アート中にションベン何回漏らすか予想して楽しみにしていてくれよな!」
そこで映像は終わっていた。
完全にイカれている。
既に性犯罪を繰り返しているようだし、警察に通報するべきだろう。
麗衣は反対するだろうけれど、こんな連中とまともに関わるべきではない。
早速通報する事を考えたが、その前に確認したい事があった。
俺はスマホに登録されている「
「はい。もしもし」
数回のコールで別の高校に通う幼馴染であり、この前の計画に協力して貰った猛は電話に出た。
「猛! あれは一体どういう事なんだよ!」
「……いきなり言われても何の事か分からないんだけど?」
猛はのんびりとした口調で答えた。
「とぼけるな! あんな事出来るのお前しか居ないだろ!」
「いや、だから何の事だか分からないんだけれどさぁ? 分かる様に言ってくれよ?」
「俺達の……
俺の質問の意味を考えていたのか? 猛は数秒間を置いてから否定した。
「いやいや。そんな事初めて聞いたし、それは濡れ衣ってモンだよ。何か証拠でもあるのかい?」
確かに猛がやったという証拠は無いが、何故か確信めいたものを俺は感じていた。
「証拠は無い……でも、あんな事出来るのはお前ぐらいだろ?」
「そんな事ないっしょ? あんなガバガバなセキュリティじゃ、俺じゃなくても少し知識があればハッキング出来るっしょ?」
「本当か? 嘘ついてないよな?」
「嘘ついてどうするの? それに、わざわざハッキングしなくても、あんなもの監視カメラの覗き見サイトで観れたりするものだよ? インセカムが数年前にニュースになったじゃん?」
インセカムという言葉は知らなかったが、監視カメラの覗き見サイトに関しては確かロシアのサイトで世界中の無防備な監視カメラの映像が観れてしまうと報道されていた事を思い出した。
「確かに……そういうもので配信されている映像を誰かがコピーした可能性もあるよね」
「だろうね。そもそも俺がそんな事をして何の得があるんだよ? ……全く、無償で手伝ってあげたのに気分が悪いね。あの後一度も礼はおろか、連絡すらよこして来なかったのに失礼だよね?」
猛は立腹気味に言った。
ここの所、色々な事が起きすぎて猛と連絡していなかったのは悪かったかも知れない。
「やっぱりあのタイミングで通報してくれたの猛だったのか? どうして後で教えてくれなかったの?」
「いや、俺から言い出したら何か恩着せがましいじゃないか? でも、今みたいに濡れ衣着せられたから仕方ないから言ったんじゃん。全く……予定と全然違ってたし、武君が人殴ったりもしていたから通報するタイミングで凄く迷ったんだよ?」
まだ猛が犯人ではないという確証は持てないが、それとは別にあの時に助けて貰った礼はきちんと言うべきであるのは確かだ。
「ゴメン……すっかり忘れていた。そっちも大変だったろうね。助けてくれてありがとう」
「どういたしまして。で、今日は電話かけてきた件はそれだけ?」
猛の事を信用して相談すべきだろうか?
不安ではあるが、俺の限られた交友関係では、こんな事を聞けるのは猛しか居ないから猛に頼むしかなかった。
「えっと……本当に悪いけれど、もう一回同じ事を頼まれてくれないか?」
「監視カメラの設置場所やセキュリティにもよるけど。あと、この前みたいに予定と全然違うのは無しにしてくれよ?」
そりゃこの前みたいな状況は困るだろうな。
「今回はこの前猛がやってくれたみたいに様子を観て、こっちがヤバくなった時だけ通報して欲しい。相手もヤバそうだけど、タイマンだったら彼女達なら負けない可能性も高いから」
「それは良いけど、何処で喧嘩するつもりなの?」
「立国川ホテルの駐車場」
場所を告げると猛は呆れたような声を上げた。
「はぁ? 何言ってるの? あそこ廃墟じゃないか? 監視カメラなんかとっくに無いでしょ?」
確かに言われてみればその通りだ。
「それもそうだよな……ちょっと今回の相手はヤバそうだし、事前に通報した方が良いのかな?」
「それも一つの手だけど、経緯を説明してくれない? 場合によっては余計マズイ事になる可能性もあるしね」
俺は猛に今日の出来事を説明した。
◇
「結論から言うと
俺の説明を聞き終わると、猛はそう断じた。
「どうして?」
「理由は二つある。まず、顔も学校も割れているから、通報で一時的に退けたり逮捕されたりしても何れぶつかる可能性があるって事。不良っていうのは
これを回避するには転校でもするしか無いって事か。
まぁ顔がネットで割れてしまった時点で転校したところで安全とも言い切れないが。
「もう一つは動画を観て
「でも、前も
「今回の動画だと麗が暴走族潰ししているって、その
「じゃあどうすれば良いかな……」
「当日、すぐに空メールでも送れる状態にしておいて。もし、麗が負けそうになった時、知らせてくれればすぐに通報するよ。今度は動画については警察に言えないけどね」
不安ではあるが、結局猛に頼るしかなさそうだ。
「悪いね。今度飯でも奢るよ」
「男に奢られてもなぁ……。それよりか、その麗衣ちゃんだっけ? 動画で観たら結構可愛かったし、一度会ってみたいかもね」
それって麗衣を紹介しろって事か?
どうやって理由を説明すれば良いんだ?
そもそも麗衣が見知らぬ他人と会いたがるものだろうか?
「ゴメン。多分無理だ」
「ああ。冗談だよ。武君がゾッコンみたいだから、ちょっと
「なっ……そんな事は……」
「言わなくても分かるって。こんな危険な目に遭っていても、その子から離れたくないんでしょ? じゃなきゃこんな事普通は出来ないでしょ?」
「うっ……」
「いやぁ、女に興味がないかと思っていたけれど、武君にもついに春が来たか。応援する代わりに今回も無償で手伝ってあげるよ」
姫野先輩や勝子にも俺の気持ちを見抜かれてしまっていたが、そんなに俺って分かりやすいだろうか?
「まぁ、その事は今度詳しく聞くとして、通報するより良い手があるよ」
「通報よりも良い手って?」
「
◇
第30話以来、久々の川上猛登場ですが誰か覚えていらっしゃる方は居られますでしょうか……実は何回も出せるタイミングがあったのですが、ついつい書き忘れていて武を恩知らずの酷い奴にしていました。(滝)
なお、廃墟の探索は不法侵入として罰せられますので決してやらないで下さい。
あとは言うまでも無い事ですが、女性への暴行は絶対にしないで下さい。
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