第45話 勇者、我が手中にアリ
白い光に包まれ、目を開けるとわたしとお父様は王城に居た。
「召喚魔法か……」
「さすがは魔王様だ。よく分かってらっしゃる」
わたしとお父様の前に居たのはわたしの偽物のお父様……通称
そしてそのお偽父様の周りにはたくさんの騎士や宮廷魔導士が居て、わたしたちを囲んでいた。
「悪いことは言わない。大人しく宝石少女を差し出せ!」
「断る。俺の娘に手を出す不届き者め。この魔王様が直々に成敗してくれる!!」
魔王とか言ってる時点で悪役確定なのにセリフが逆転してるのは何故だろうか……?
「自分の身は守れても、娘が居ればお前はそこまで守れないだろ? お前ら! 娘を狙って焼き尽くせ!!」
「えっ?」
魔導士たちがわたしに目掛けて魔法を打ってくると、お父様は結界を張ってわたしを守る。
お父様の助けになることをしたいけれど、今のわたしは足が上手く使えないので、文字通り足を引っ張ってしまうだろう。
それにお父様も1人の方が動きやすいようだし。
「戦争がしたければやってやるよ」
「いくら貴様が魔王とてこちらには40人程の勇者がいる! 貴様には勝てまい!」
自身満々に言うお偽父様とそれを聞いて若干「嘘だろおいおい勘弁してくれよぉ」みたいなオーラを放つお父様。
もしかして二人ともわたしが勇者をかっさらったこと知らないのかな?
「お父様、勇者なら全員屋敷に住まわせてあるよ。ついでに言うと凄い馴染んでるよ」
「「……は?」」
二人のおっさんが呆けた声を出す。お父様は仮面をしてて表情が見えないけど、お偽父様顔芸人かと思うぐらいに変な顔してる。
「勇者、我が手中にアリ」
「ああ、なるほど。我ながら本当に恐ろしい娘だ……」
安心したのか一気に魔導士を片付けるお父様。しかし今度は騎士たちが剣を構えてお父様の作った結界を破壊しに向かう。
戦いはただ時間を費やすだけだった。しかし、ここで問題が発生した。
「おとうさま、トイレ……」
「…………無理だ。漏らせ」
結界あるあるの1つ。『こういう時に限ってトイレに行きたくなっちゃうよね?』が発生。
お父様はわたしに漏らすように言う。
しかし、わたしとてこんな所で漏らしたら、あの時のように一生の恥である。モタモタしてるとお父様が何か投げてきた。
「それ使え。この前召喚魔法を試した時に出てきたヤツだ」
「はあ!?」
お父様が投げたのは地球なら何処にでもあるようなペットボトル。
「ふざけてるの!?」
さすがにわたしもこれには怒る。これでもわたしは女の子だ。こんなにたくさん人が見てる空間でペットボトルにしろとか言われても無理がある。
「周りから見えないように遮光結界に変えてやるから」
そう言うとお父様は結界を黒くして何も見えない状態にした。
「ほら早くしろ!」
「そ、そんなこと言わないで……絶対に聞かないでよ! 耳塞いでてよ!?」
「わかったわかった。早くしろ」
恥ずかしいけどわたしにはこれしか残されていなかった。だから少し粗相をさせてもらった。
「ちにたい……」
「そ、そうか。アストくんと結婚するんだろ?」
「あしゅとにあわしぇるかおもにゃい……」
「大丈夫だ。お前は出してない! ほら見てろ!」
わたしが泣きながらお父様を見るとお父様が『わたしボトル』を持って空間魔法の中に放り込んだ。
「でも音が……しかも持たないでよ……」
「確かに興奮する音とぬくもりが……ってそうじゃねーよ!」
「もうお嫁にいけない……」
なんで結界の中って音が響くの? しかもぬくもりってどういうことなの!? なんでお父様はわたしボトルに触るの!?
わかんないよ! わかんないわかんないわかんないわかんないわっかんなーい!!
お父様のする行動が何一つ、これっぽっちもわかんないのぉ!!
『私のフェノンを泣かせる悪い子はどこにいるのかしら?』
その時、わたしの真横に1つの魔方陣が現れた。
そして、その魔法陣が光を放つとそこには1人の女性の姿があった。
「まったく、ようやく来たか━━━━エマ」
「お待たせ。フェノン」
「おかあさま……?」
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