第44話 犯人はお前だ!
アリバイ確認をしたその日の夜、わたしはお父様に呼ばれてお父様の居る部屋に向かっていたのだけど、車イスを自分で動かすのは疲れたのでたまたま近くにあったエリーが監禁されてる部屋を開けて助けを求めた。
「エリー」
「フェリナスちゃん、どこか行くの?」
「ちょっとおとうさまに呼ばれてね。だけどここからだと遠いし、腕が疲れちゃって……アストの所まで押してくれない?」
「うん、いいよ」
というわけでわたしはエリーに押して貰ってお父様が呼んだ部屋まで運んでもらうことにした。
そして周囲が静か過ぎて何故か気まずいのでエリーに押してもらいながら会話をすることにした。
「アストが襲われたのはブラフだと思うんだよ」
「どうして?」
「普通に考えればアストが襲われたと知れば狙われてるのはあの3人の誰かだと思ってあの3人に守りを固めるでしょ? それに殺害予告までしておいて白昼堂々と襲うなんて考えられないよ」
「そうだね」
おとうさまに呼ばれた部屋に行くためにエリーが車イスごとわたしを持ち上げて階段を上る。
「それで現場にはかなり薄いけど、部屋全体に魔力の痕跡があった。つまり犯人は広範囲魔法を使ったってこと。
そういう魔法は絞るのが簡単だから直ぐに割り出せたよ。『幻影魔法』を使ってアストを襲ったんだよ」
階段を上ったエリーは車イスをゆっくりと地面につける。そしてお父様に呼び出された部屋に向かう。
「幻影魔法を使ったなら犯人は自分をいち早く捜査外に出たかったんだと思う。だから犯人像は最初に推測したモノと真逆の存在になる」
お父様に呼び出された部屋の前に到着するとエリーは足を止めた。
「つまり犯人は小柄でそれなりの戦闘力があるのを隠してる女性なんだよ」
「さすがフェリナスちゃん! 本当にスゴい━━━━ね!!」
エリーはわたしに包丁を刺そうとしてきたけど、魔力の壁に弾かれた。
「っ!?」
「やっぱりエリーが犯人だったんだね……リア!」
「せいっ!」
リアはエリーの後頭部を殴るとエリーはその場に倒れた。リアはその隙に上に乗っかり間接技を決める。
「フェリナスちゃんやめてよ! 私たち友達でしょ!?」
「じゃあ今なんでわたしを殺そうとしたの? 口封じでしょ?」
すると部屋の中に居たお父様がいくつかの書類を持って出てくる。
エリーはリアが全力で押さえつけているので動けない。
「俺だってバカじゃない。王城に誘うんだ。怪しいやつがいないか調べるのは当然だ。それで今回の殺害予告と合わせて怪しい人を予め区別して部屋を指定した」
お父様がそんなことをしてたのかと感心してるとお父様は話を続けた。
「これは調べた時に出てきたお前の資料だ。お前は商人の娘と出てきた。そして家族構成なども何も嘘はなかった」
「じゃあなんで私を怪しんで……!」
「家系図が綺麗過ぎたんだよ。商人は大抵若い女性と老けたおっさんが結婚する。それなのにお前の家系図は全て年齢が近い人と結婚してたんだよ」
お父様の言う通り、この世界の商人業界は闇が深い。女に生まれた商人の子供は何か特別な事情がない限りは性欲にまみれた変なおっさんと結婚する運命がある。
わたしは商人の娘というのは何もしなくても入ってくるお金で贅沢してる人生の代償でおっさんと結婚するものだと考えてる。
「そしてこれほど偽造の記録が出てこないとなると国が絡んでるだろう。調べてやったさ。そしたら王家の第三皇女がルーズベルト領に行ったきり行方不明になってた。お前は
お父様が確信に近付く。するとエリーは壊れたのかと思うぐらいに笑い、話始めた。
「そうよ! あんたの言う通り私はゴールランド王国第三皇女のエリー・ゴールランドよ!」
そしてエリーは話した。お父様の最初の妻を殺せばその友人であるお母様もルーズベルト領を空ける日が多くなる。屋敷の警備が薄くなればわたしを言葉巧みに騙して拉致監禁出来ると。
そうすれば王家は発展する。そう言った。
「エリーはわたしの力を知ってたの……?」
「私の魔眼は相手を解析することが出来るのよ」
エリーの魔眼でわたしのことは全て王家にバレてたらしい。それで宝石を作れることを知った王家はより一層わたしを欲して手紙を寄越したということみたい。
郊外学習をこの国に決める際にわたしを眠らせたのもエリーのようだ。どうしてもわたしを拐いたかったのだろう。
「宝石少女……もし王家が手に入れればこの国は変わる。だから私はフェリナスを連れて帰るしかないのよ! 私たちの国のために!」
エリーが大きな魔法陣を展開した。いや、これはエリーの魔力ではない。
「お前だけは連れて帰らせてもらう!」
「二人とも離れろ!!」
「そうはさせない!」
エリーが拘束魔法でわたしを縛るとお父様がリアを魔法陣の外に追い出してるのが見え、その瞬間にわたしとお父様は白い光に包まれた。
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