第46話 最後の戦い
魔法陣から光が放たれるとそこにはお母様がいた。
「フェノン、大丈夫? 誰にやられたの?」
お母様はわたしの涙を手で拭いながら聞いてくる。
お母様がどうやってここまで来たのかは知らないが、お父様に虐められたわたしはお母様に抱きついてお父様を指さした。
「おかあさま! おとうさまがわたしを虐めてくるのぉ!」
「……アナタ?」
わたしがお母様に泣きつくとお母様はお父様を睨んで威嚇する。
お父様は目に見えるぐらいの冷や汗を流していた。
すると先ほどまで玉座に座って偉そうにしてたお偽父様に変化が起きた。
「え、エマ……ど、どうしたんだ……?」
恐る恐るお母様に聞いたお偽父様。するとお母様はお偽父様の方を笑顔で見た。けれど、そのお母様の目は全然笑ってなかった。
「私のことを呼び捨てにしないでくれます? 私はあなたの旦那じゃないんですから。私の旦那はただ1人。この人だけなのよ!」
お父様に抱きつきながらお母様は言った。するとお偽父様は「バカなバカな、そんなはずは!」とひたすら呟いていた。
「お前は魔法で確実に妊娠させたはずだ! 魔王は仮の父親だったはずだ!」
「それが妊娠しなかったのよね~。どうしてかしら?」
お母様は体力の魔力を外に放出させながら言った。周りに居た騎士たちはお母様の魔力に制圧されてその場に倒れ込んだ。
「きさま……まさか……!」
「今さら気づいた? ふふっ、残念だったわねぇ? あれれぇ? 妊娠確定魔法じゃなかったのぉ? おっかしぃーわねぇ~? もしかして魔法が不完全なほど魔力操作がなってなかったんじゃな~い?」
スゴい煽るお母様に対してお偽父様はこめかみに血管が浮いていた。
わたしの推測では『魔力コーティング』が原因だと思った。妊娠確定魔法だろうが着かなければ関係ない。お母様はそこに着眼したのだろう。
「フェノンは正真正銘のわたしの娘よ。けれどあなたとの繋がりはないわ。これ以上私の娘に近づかないでくれます?」
「きさまぁぁああぁぁぁああああ!!!」
怒り狂ったお偽父様が剣を抜いてわたしたちに走ってくる。
するとお母様は何やら魔法を使うらしく凄まじい魔力を放出していた。
「天地を裂き、全てを操りし者よ! いまここに顕現し、彼の者にその威光を示せ!!」
お母様が詠唱を唱えるとわたしたちとお偽父様の間に大きな魔法陣が現れた。
「いいこと? これが本当の召喚魔法よ。さあ、光来せよ! 『召喚魔法:第八形態 超越神龍』!」
お母様が詠唱すると大きな魔法陣は凄まじい光を放ち、その部屋にあった全てのモノを吹き飛ばした。
「きゃっ!?」
「フェノン、大丈夫か?」
「おとうさま、ありがと……」
この部屋のモノと一緒に吹き飛ばされそうになったわたしはお父様に掴まえられて吹き飛ばされずに済んだ。
そしてその魔法陣の上にはとても大きな黒い龍がいた。
「「「……は?」」」
お母様以外の3人が呆けた声を出す。だって、龍なんて普通召喚できるようなモノしわゃないし、かなりの魔力を消費する。それなのに平然としてられるお母様。
こんな現実、呑み込める訳がない。
『エマ、我は人間が嫌いだと言ったはずだが?』
「だからアナタを呼び出したのよ。お願いね? ファフニール?」
『龍遣いの荒いヤツめ。我が友がそこまで滅ぼしたいのなら我は喜んで協力しよう。……ん?』
ファフニールと呼ばれた黒龍はわたしのことをジッと見つめてくる。
わたしは少し怯えながらも顔を合わせた。
『ほう、娘か。よくもまあこんなドMからここまでマトモな娘が産まれたものだな』
ファフニールさん。お母様が喜んでるのでやめてください。
『小娘よ。お前の母親が我と会った時なんと言ったと思う?』
ファフニールに問われてわたしは考えた。そして、考えた末にわたしが出した答えはこれだった。
「きっとこれから私はこの龍にめちゃくちゃにされるようね。じゃあみんな。私行ってくる!
お待ちくださいエマ様! という感じだと思います」
一人二役を演じたわたしを見てファフニールは真顔になって、わたしのことを見てきた。
『さすが娘だ。母親の考えなどお見通しというわけか……フッ、気に入った。特別に背中に乗せてやろう』
ファフニールがそう言うとお母様はわたしを抱っこしてファフニールの背中に乗った。
そして、お父様も背中に乗ろうとすると綺麗に尻尾で弾かれた。
『頭に乗るな雑種。貴様のようなおっさんなど誰も乗せたくないわッ!』
「おっさん……」
あっ、お父様がダメージ受けてる。けどもう三十路過ぎてそうだし、おっさんだよね。仕方ないよ。
するとお父様は観念したのか自分で魔法を使い、空を飛んだ。
『どれ、まずは城下から破壊するとしようか』
ファフニールは空を飛ぶと王都……もとい城下を火の海に沈め始めた。王都に住むヤツらなんて商人か貴族ぐらいだ。
あんなクソ王子に歯向かえなかったようじゃ大したヤツじゃない。
だから……いいよね?
「皆殺しってこういうことを言うんだな」
「そうね。素晴らしい言葉じゃない?」
「あははっ……」
あっという間に城下は火の海になり、ファフニールは王城にも着火させ始めた。
そこでわたしは1つお願いしてみることに。
「…………」
『まあいいだろう。少し待ってな』
そして、城のほとんどが燃えた頃。お偽父様は王家の者を自ら全員殺し、燃え始めた部屋にあるその玉座に座っていた。
「アハハハハッ!! 見ろッ! この俺こそがこの国の王だッ!」
「それは違うよ」
わたしはファフニールから飛び降り、魔力強化を駆使して玉座の前に立つ。
「アンタの言う国なんてもうない。滅んだからね。
さて、この前はよくもわたしのことを虐めてくれたね。カルロスやエリーはもう死んだけどまだアンタがいる。
この意味、わかるよね?」
わたしはゆっくりと玉座に近づいて歩く。するとお偽父様は玉座に座ったまま話してくる。
「貴様ごときで何ができるというのだ! 右足が壊れ、今も少し歩いてるだけで苦しいのだろ? そんな無理はしなくても━━━━」
わたしは魔力強化のほとんどを右手に回すとわたしの右手は青白く、とても強い光を放ち始めた。
「見ろ、わたしの、この小さな拳をッ!」
「……は?」
わたしは手を握りしめ、拳を作り、玉座に居座るゴミクズへと近づき━━━━━━
「てめェの魂を、記憶を、存在を……
全部纏めて粉々に打ち砕く拳だァァア!!!」
━━━━━━その顔面を殴り飛ばした。
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