第33話 勇者様ご招待
「ナタリー!」
「おかえりなさいませ。フェノン様。そしていらっしゃいませ勇者様方」
ナタリーはわたしを抱っこするとクラスメイトたちに頭を下げた。
帰省期間の間にクラスメイトたちを学園に置いておくわけにもいかないし、かと言って宿に泊まらせるのも何か悪い気がしたのでお母様に頼んで屋敷に泊まらせることにしたのだ。
「こちらこそお世話になります」
美紀ちゃんが頭を下げるとクラスメイトたちも頭を下げた。
「ディアナは女性の方を、フロウは男性の方をそれぞれ部屋に案内してあげて」
「「お部屋にご案内致します」」
ディアナとフロウのその姿を見てこの二人って実はマトモだったのかと疑ってしまった。
でもよく見たらディアナがフロウの足を踏んでた。フロウは少し嬉しそうだったし、お母様は何か羨ましそうに見てた。
「ではフェノン様、お部屋に行きましょうか」
「うん!」
わたしはナタリーに抱っこされたまま自分の部屋へと戻った。
わたしは部屋に戻ると靴を脱いでベッドの上に飛び込んだ。
「久しぶりの日に当たったベッド……おやすみぃ」
「フェノン様、外を歩いて来てるのですから足に着いた砂を落としてください」
そんなことしなきゃいけないの……? めんどくさいなぁ……
「枝毛も多いようですし……さては髪の毛の手入れをサボってましたね?」
「うっ!」
ナタリーの予測が図星過ぎて何も反論できない。
だってよくわからないし、髪のケアってめんどくさいからつい……
「フェノン様、まずはお風呂ですよ。さっ、行きますよ」
「えー」
ナタリーはわたしを抱っこして大浴場に向かった。
すると先客がいるようで、いくつか篭があって、その中に着替えが入っていた。
「ほら皆さんはお風呂に入ってますよ。入ろうとしなかったのはフェノン様だけです」
ナタリーはそう言ってわたしを下ろすと手練れた手つきでわたしの袴を脱がし始めた。
「今日からフェノン様には洗い方をきっちり教えてあげます」
「そういうのいいから……もうナタリーがやってよ」
わたしはナタリーと会話しながらお風呂場に入ってシャワーの前にある椅子に座った。
「私は学園の大浴場には行けませんので無理ですよ。まあ、夕食後も入るので今は洗ってあげますよ」
なんやかんやでナタリーは甘い。基本的にわたしのお願いをなんでも聞いてくれる。
実は最近は全寮制とかめんどくさいので家から通える人は家から通えるようにするというものにしようと考えている。ただし、三年生を超えた生徒は一部を除いて必ず寮で寝泊まりするというオマケつきではあるけど。
「フェノン様、目を瞑ってください」
ナタリーはわたしにシャンプーハットをつけてからシャワーをかけた。そしてシャンプーでわたしの頭を洗っていく。
「フェノンさん、家だとずいぶん子供っぽいね……」
「そうだね。学園の時とは大違いだよね」
お風呂に浸かりながら余計なことを会話するクラスメイト二人。ナタリーがちょっと笑いを堪えてるように見える。
「フェノン様、もしかしたらこの1週間の間、面白いことが多いかもしれませんね」
「そんなことない」
「そうですかねー? シャワー流しますよ」
それからトリートメントと身体を洗ってもらってお風呂に浸かった。
するとクルミさんが近づいてきた。
「ずいぶん甘えん坊さんじゃないか」
「……そんなことないです」
わたしはクルミさんから目を逸らしてお風呂の中央付近にある岩を見ると何かが水に落ちたような音がした。
「……みんな集まれ」
クルミさんの一言で女子生徒たち全員がクルミさんの元に近寄った。
それと同時にナタリーが戦闘体制になって岩影に近づいく。
ナタリーは服を脱いでないのでお風呂の中に入ることはできないが、彼女には遠距離攻撃である風魔法を使うことができる。何かあったらその風魔法で上手くやってくれると思う。
「『ウィンドスラッシュ』!!!」
ナタリーが突然魔法を放った。それと同時に岩の上に二人の
全裸で━━━━━━━━
「「「『ターン・アンデッド』!!!」」」
クルミさんを含めた女子生徒たち全員が一斉に浄化魔法を放った。
このお風呂に男という存在は汚いから消そうという考えなのだろう。
その隙にわたしは魔力の壁で犯人たちを捕まえ、ナタリーの元に送るとナタリーはその男たちに目隠しをして両手両足を縄で縛った。
わたしたちはお風呂を急いで出て、脱衣場で服を着るとナタリーが犯罪者たちを連れてきた。犯人は男子生徒二人だった。
「覗きなんてサイテー」
女子生徒たちによる言葉の暴力が始まった。言い訳だけさせてみると彼らが入浴してた所に女子生徒たちが入ってきて出られない状況となり、そこに
「ナタリー、わたしもまざりたい」
「フェノン様は男の汚物なんて見るべきではありません」
わたしは処刑場から仕切りを挟んで反対側にある椅子に座り、ドライヤーでナタリーに髪を乾かしてもらっている。
ナタリーは髪を乾かすのが上手くて、つい寝てしまいそうになる。
「フェノン様、眠いですか?」
「うん……」
「お昼寝にしましょうか」
ナタリーはわたしを抱っこして部屋へと戻っていった。
そして、処刑された男子生徒二人がどうなったのか。それを証言してくれるご息女とメイドはお昼寝をして全てを忘れたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます