第31話 魔力の消費は幼女の元
ボットントイレに落ちそうになった後、エリーお姉ちゃんに泣きながら感謝をしたわたしは疲れて眠ってしまった。
そしてわたしが目を覚ますとリアお姉ちゃんがパンツを履かされていた。
「リアおねえちゃん? どうしたの?」
「アイツが俺に無理やりパンツを履かせたんだ……」
この人はいったい涙目で何を言ってるのだろうか? もしかしてこの人も普通じゃないの? 露出狂なのかな?
「よしよし……」
わたしはリアお姉ちゃんの頭をゆっくり撫でた。するとそのタイミングで扉が開いた。
「フェノン! ただいまー!」
「おかあさま! おかえりなさい!」
わたしはお母様に抱きついた。やっぱりお母様がいると安心する。まあ、1番安心するのはナタリーなんだけど、それは胸の中にしまっておく。
「とりあえずもう遅いからお風呂に入って寝なさい? お母さんは屋敷戻るけど、フェノンは今日だけはここに泊まるのよ? わかった?」
お母様行っちゃうの……? わたしも帰りたい……
わたしはお母様におねだりするけど、お母様は本当は連れて帰りたいけど、今日はできないと言って断ってくる。しぶしぶわたしはここに泊まることを決意した。
「じゃあ明日朝一で来るから。フェノン、良い子にしてるのよ」
「うん……」
お母様はわたしの頭を撫でると部屋を出ていった。
そして、クルミさんはお母様が部屋を出ていったのを確認するとわたしをお風呂場まで誘拐していった。
わたしはただ震えているだけで動けなかった。
「フェノンさん。こんにちは」
わたしの目の前には何故か風紀委員長がいた。
なんであなたもここにいるんですか……。もしかしてわたしを
「なんか小さくなった?」
「委員長、実はゴニョゴニョ……」
クルミさんが何か風紀委員長の耳元で囁いていた。間違えなくわたしを殺すための作戦を考えているんだ……逃げないと!
わたしはその場から逃げるために走った。裸だけど走った。でも殺されるよりかはマシだ。
そして脱衣場のドアを開けようとしたところでドアノブに手が届かず、執行人である二人に確保された。その逃走劇の時間はおよそ10秒。非常に短かった。
「全く、逃げようとするとは今のフェノンくんからは考えられないな」
「そうね。本質的には似てるけど、行動面は随分違うのね……凄い怯えてるけどアナタ何かしたの?」
「いや、今回ばかりは何もしてないな。この頃のフェノンくんはエマさんとメイド以外とは誰とも会話してないらしいからコミュニケーション能力が低いのかもしれないな」
わたしは暴れて逃れようとするが、身体強化すら習っておらず、恐怖で身体の動きが鈍っているわたしと、身体強化をした大人であるクルミさんとの力の差は激しく、わたしはクルミさんから逃れることは出来なかった。
「言われて見れば口数も少ないような……」
「子供というのは簡単に変わるものなのだろ……つまり今のうちに何かを信じ込ませて、このまま育てれば私の言うことを何でも聞いてくれるようなおもちゃに━━━━」
「やめなさい。というか既におもちゃのように弄んでるじゃない」
何か物騒なお話をするこの執行人たち。わたしは恐怖のあまりその場で気を失った。
そして、その夜のこと━━━━
「おはようフェノン……寝てるね。かわいい。フェノンが小さい頃はこんな寝顔だったんだ……ナタリーに任せてたのがよくわかっちゃう。
おっと、先にやることはやらないと。とりあえず時間魔法は完了。あとは自動で発動するように仕込んで……」
お母様が何か怪しいことをしていた。
翌日、わたしが朝起きると元の姿に戻っていた。服はお母様が朝一に来たのかいつもの寝間着のワンピースを着ていた。
そして少しダルいような感じだった。わたしが起き上がるとお母様の姿が見えた。
「おはよう、フェノン」
「おかあしゃま? おはよぉごじゃいましゅ……」
寝ぼけていてろれつが上手く回らず、変な感じになった。けど、それを聞くものはお母様だけ。なら気にする必要はない。リアたちはいまもぐっすりと眠っている。
「説明するからこっち来てくれる?」
「うん……」
わたしはお母様と食堂に移動した。まだ朝早いため券売機の電源は切れていて、受け取り口はシャッターで閉められていた。
「とりあえず今回は時間調節して身体の時間を元の時間より3日進めた状態になってるんだけど……どう? 平気?」
「ちょっとダルいけど、これぐらいなら大丈夫」
「無理はしないでね。それと、吸魔石に新しい機能追加して置いたからもう同じようなことにならないから安心して?」
わたしはいろいろと不思議に思って首を傾げた。
新しい……機能? 吸魔石ってただ魔力を吸収するだけの石だよね? 機能追加ってなに? アプデ? この石はスマホか何かですか?
でもそれは置いとくとして、もうあの苦しみを味わらなくていいのはとても嬉しい。お母様は本当にスゴい。
どうしてわたしなんかがお母様の娘なんだろ……?
「吸魔石が吸収する1日の魔力吸収量が一定値に達すると中に埋め込んだ時間魔法のルーンが自動的に発動してフェノンの身体だけを星刻印の精錬前に戻すようになってるの。効果はだいたい3日。3日経てば元に戻るから安心して?
一応記憶は戻らないようにお母さん、フェノンのために頑張ったから大丈夫よ。何か質問はある?」
お母様が説明を終えると質問があるか聞いてきた。もちろん質問なんてないのだが……
「おかあさまはどうしてこんな魔法も使えない劣化物にここまでしてくれるの? わたしなんてあのクソ王子の子どもなのにどうして育てるの?」
「フェノン……」
するとお母様はわたしの頬を引っぱたいた。わたしはあまりに突然過ぎて何も反応出来なかった。
ちなみにかなり痛い。お母様の力強すぎ。
「自分のことを劣化物なんて言わないの! お母さんに取ってフェノンは大事な娘なんだから! 誰かの劣化とか下位互換とかそういうのはないのッ!! フェノンにしか出来ないことだってたくさんあるんだから! 生徒会長だってやってるんでしょッ!? だからもっと自分に自信を持ってッ!!」
「おかあさま……ごめんなさい━━━━」
わたしはお母様に抱きついた。するとお母様はわたしの頭を優しく撫でた。ついでに治癒魔法も使った。
「あのねフェノン。一度しか言わないからよく聞いて?」
「うん……」
「━━━━━━━━━━なのよ」
お母様の言葉を聞いた瞬間わたしは目を丸くした。お母様を見るとお母様は笑っていた。
「じゃあお母さんはそろそろ帰るから、みんなによろしくね」
「うん……ありがと、おかあさま……」
お母様は寮を出て屋敷に帰っていった。わたしも部屋に戻っていつもの袴に着替える。
来週からは完全制服開始なので、袴を着る機会も減ってしまう。
ちなみに制服を着てないといけないのは平日で寮に居ない時である。それ以外では制服の着用は必要ないのだが、制服の便利さを知ってしまうと寮の中で私服を着ている人の方が珍しくなるだろう。
「フェノンおはよう。あっ、戻ったのか」
「うん、おはようリアおねえ……リア」
癖が抜けなくて間違えて言ってしまいそうになって慌てて訂正したが、わたしの顔は恥ずかしさで赤くなり、リアは黒い笑みを浮かべていた。
「リア
「そういえばリアは女の子になったんだって? 女物のパンツ履かないんじゃなかったの?」
「なっ!?」
リアに煽られたのがうざかったので、言い返した。これ完全に互いの墓穴を掘っている状態なのだが、どうせ聞いてる人なんて居ないので気にしない。
「ようやく尻尾を見つけたよリアくん……いや、田中くん」
「は?」
大きな箱を持ったクルミさんが部屋に入ってきた。
あっ、リアの正体バレた。これはマズいかも……リアの正体を暴こうとしてるということはあの箱の中には証拠品がたくさん入っているのかな?
「君が全ての元凶だったようだね。私たちはずっと佐藤がうんこを漏らしたことでこの世界に転移したと思い込んでいた。だが、実はそうではない」
わたしはクルミさんに見えないように後ろを向いて必死に涙を堪えた。
「いったい何を言ってるんだ? 俺はリアだぞ? 俺は田中じゃないぞ?」
「嘘探知魔法に反応アリ」
後ろから現れた嘘探知魔法を持ったクラスメイト。というかこれ女子全員来てるじゃん。そして嘘探知魔法のセコさ。
「フェノンくんが口を割ってくれなかったからずいぶん時間が掛かってしまったが、もう逃げられないぞ」
わたしって意外と偉くない? わたしを脅すことで有名なあのクルミさんにリアの秘密を守り切ったんだよ? 凄くない? ねえ、褒めてよ。凄いでしょ?
「では審議の時だ」
こうしてリアの正体を巡る裁判が始まったのだった。
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