『小さなお話し』 その43

やましん(テンパー)

『クラクション』

『これは、フィクションです。とくに、ふくむところは、ございません。怪談であります。』


          🌸



 2×世紀も、なかば、再びやってきた、やっかいな伝染病のあと、さらに襲ってきたのは、食糧危機でありました。


 なんせ、自給率が足りない我が国のこと。


 お米だけは、しばらくは、なんとかなりそうなのですが、食品の輸入はほぼ、ストップ。


 原油は、厳しいけど、まあ、あと、2年くらいは、なんとかなりそう。


 主要国が鎖国に走るなか、輸出もできず、経済はかなり厳しいのです。


 風が吹けばなんとか、なのか、なんだかんだで、60歳以上で、仕事についていないひとは、まんまるで、眠った目をした『すやすやバッジ』を付けないと、外出できなくなりました。


 寝たきりのかたには、それなりの、対策がありました。


 60歳以上の無職のひとは、購入できる食糧品や日常生活品の数が、かなり、限られるのです。


 でも、お弁当の宅配も停止しているいま、買い出しは必要なのですが、まあ、あまり、食べなくても、大丈夫だろう、というわけですな。


 高齢者にとって、食べることは、数少ない楽しみです。


 そこを狙い打ちした政府は、高齢者からは人気最低でしたが、若い人たちからは、むしろ、支持されました。


 我が国は、超高齢社会を、なんとかしようとしていました。


 そのためには、高齢者を間引きする必要が、ありました。


 さまざまな、政策が、じつは、秘密裏に、実行されておりましたのであります。

 


 まだ、残党ウィルスさんによる、スポット的な感染が起こりますが、比較的効くお薬もみつかったので、危険性は、既知のインフルエンザくらいには、下がりそうになっては、おりましたが、まだまだ、世界的には、大流行している地域もありましたのです。


 それでも、高齢者には、やはり、危険性は高かったのです。


 さて、あるひ、やましんさんは、スーパーでお買い物しました。


 小さな買い物袋をぶら下げて、よたりよたり、帰ろうとしていると、駐車場で、クラクションを、ばんばん鳴らしている車がいます。


 なんだろう?


 とは、思いながら、干渉するひとは、いません。


 それは、車に残された、まだ、小学校に上がる前くらいの、たぶん、兄妹さんです。


 やましんさんは、車の横に行き、手でばつ印して、ニコニコ言いました。


 『どしたのー? いたずらは、だめだよー。』


 ふたりは、ちょっと、うなずきましたが、急に、サイレンサー付きのガンを取り出し、まどから、やましんさんの眉間に、弾を打ち込んだのでした。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 

           おしまい


 


        👼


 


 それじゃ、あんましだあ❗


 と、おっしゃいます方のために、終結部を、ふたつ、試しに、書きました。


          🔫



 スーパーから大きな袋を抱えた、ふたりのお母様が出てきて、さかんに、やましんさんに、謝りました。


 『いえいえ。はははははは。』


 と、やましんさんは笑いました。


 額には、弾が当たった跡が、赤くなって、残っておりました。


 やましんさんは、お母様から、高価な巻き寿司をいただきました。



     🌸   🌸  



 やましんさんの亡骸は、専門の清掃会社に、さっさと、片づけられて、それで、おしまいになりました。


         🌸

      

              おしまい

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『小さなお話し』 その43 やましん(テンパー) @yamashin-2

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