その2
「え、あ、え? 小太郎?」
「いかにも」
「いか、え? なにその話し方。頭打った? 頭打って膨張した?」
朝の日差しにはいいホルモンが出るのだという。テレビでキョーコ女史が何かの話題で触れていた。キョーコ女史が言うのだ、間違いあるまい。
かくて私も陽を浴びて全身からなんかいいホルモンを放出する。おそらく光合成もこのような仕組みなのであろうな、と私は世界の真理の一端を知る。日々揺れる木々にも尊敬を忘れない。これもまた、ダンディ。
「さて、学校へ向かおう、丸眉よ」
「丸眉いうな」
丸眉こと雨宮
「で、どうしたの小太郎、その頭」
「どうしたもこうしたも、アフロだ」
「それは見てわかるけどさ」
「ダンディだろう?」
「会話する気ある???」
会話も弾ませ、学校へと歩みを進める。
県立
威風堂々、たくましい我が姿に、道行くみながみな振り返る。その中には同じ学び舎に通う者の姿もちらほらと。ふふふん。思わず鼻が鳴る。熱い視線がすべてを物語っている。「なんてたくましいの!」「ステキ!」こう思っていることは疑いようがない。
「小太郎、めちゃくちゃ視線感じるんですけど」
「ああ、なんとも熱いししぇんだ」
「慣れない視線に噛んでんじゃん」
ところでさ、と朋香は丸眉をひそめる。
「そのアフロで教室まで行くの? 先生になんか言われたらどうするの?」
「どうするも何も……」
何か言われる。
その可能性を今の今まで考えたことがなかった。
ロダンの考える人の像のように拳を顎に当ててみる。そしてはたと気づいてしまう。
「……まさか、求婚?」
「どつくぞ」
「痛いからやめてくれ」
やれやれなどと朋香は肩をすくめた。
「何もないといいんだけどね……」
そして我々は門をくぐる。
新たな一日がこうして始まったのである。
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