8
扉が開いて、
「モリー」に男が入ってきた。
「邪魔するぜ」
男はマスターをチラリとだけ見た。
「また、あんたかい」
マスターは男を目で追った。
男はいつもの窓際の席に座る。
マスターがゆっくりと、
男の前に水の入ったグラスを置いた。
「あの子は」
「あいつのところだよ」
「そうかい」
「チェリーパイをもらえるかな」
「悪いな、切らしてるんだ」
「そもそも、チェリーパイなんてメニューにないだろう」
男はマスターを見て、ニヤリと笑う。
「研究中だ」
「あの子に作らせる気かい」
「それはないな」
男は、じっと窓の外を見ている。
海月が大きな紙袋を抱えて、
砂利道を歩いてくる。
「戻ってきたみたいだぜ」
男は独り言のように言った。
ドアが開いて、海月が店に入ってくる。
「おじさん、ただいま」
「おかえり」
「嬢ちゃん、おかえり」
窓際の男が海月を見た。
「なんだ、クマさん来てたんだ」
「あいつの所に行ってたのか」
「うん、クマさんパン食べる。焼きたてだよ」
「食べるかな」
男が微笑む。
「野イチゴのジャムつけるね」
「ねえ、嬢ちゃん」
「あいつはチェリーパイ作れるかなあ」
「どうだろう。今度聞いてみるよ」
「あたしは作れるけど」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます