3
勢いよくカフェのドアが開いて、女が入ってくる。
ダークスーツを着た女は、店の入口で誰かを捜している様子。
もう一度ドアが開いて、女の子が入ってくる。
「ご苦労様」
マスターが女の子に声をかける。
スーツの女は、マスターを見て近づいていく。
マスターが少し後ずさりする。
「月ちゃん、どうだった」
「面白い人だね」
「バターの作り方は教えてあげたの」
「教えたよ」
「ご主人」
「ご主人」
スーツの女が、マスターに話しかける。
マスターが女を見る。
「まあ、お掛けください」
マスターが女に空いている席を手で示した。
女はマスターが示した席にゆっくりと座った。
海月が水の入ったグラスを女の前に置く。
「どうぞ」
微笑みかけた海月を、女が上目遣いでチラリと見る。
マスターがコーヒーをテーブルの上に置き、
女の向かい側に座る。
女はコーヒーを見た後、マスターの顔を見る。
「サービスです」
「それで何のご用でしょう」
「物件を探している」
女がポツリと言った。
考え込む、マスター。
「ないのか」
「あることはあるんですが」
「ぼろいアパートで」
「それでもいい」
「あなたみたいな人には、お勧めできないな」
「今は男が一人住んでいるだけで」
「それでもいいって、言っているだろう。見せてくれ」
興味ありげに見ていた海月の目と
マスターの目が合った。
「わかりました」
マスターは首を小さく振りながら、女にそう告げる。
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