第10話 こころの距離

「なあ夕陽。そろそろ返事もらえないか?」


☀︎もったいぶるなぁ


⭐︎そ、そんなんじゃないもん


☀︎結果はわかってるのに?


⭐︎……結果じゃないもん


「あ、う、うん。その、お付き合いの件だよね?」


「ああ。俺の気持ちは変わらない。ずっと夕陽と一緒にいたいんだ」


☀︎青春だねぇ


⭐︎……もぅ


「あ、ぅん。ありがとう。……その、お付き合いとかよくわからないけど、お願い、します」


「あ、ああ! ありがとう。大丈夫。2人で一緒に探そう!」


☀︎……ヒクわぁ


⭐︎……


「あれ? 古木くんと夕陽ちゃん?」


「糸井先輩? お久しぶりです。先輩達の卒業式以来ですね」


☀︎どれだけ引っ張ったんだよ


⭐︎えっと、その、に、2年くらい?


☀︎そりゃ、喜びもひとしおだ


⭐︎あはははは


「ん? んんん! それは恋人繋ぎってやつだね? そっか、とうとう恋人同士になったか〜」


「長い片想いでした」


「ま、誠くん」


「本当なんだからしょうがないだろ」


「あ〜、はいはい。イチャイチャは私と別れてからにしてね?」


「い、イチャイチャなんて、してません。メイ先輩は大野くんと待ち合わせですか?」


「えっ? 私? え〜っと、そ、そうだね〜」


「「?」」


☀︎どこの大野くんと待ち合わせだろうな?


⭐︎えっと、その、ね?


『バタン』


「メイお待たせ。わりぃ、渋滞してて、って知り合い?」


「あ、うん。高校の部活の後輩。たまたま見かけ———あ?」


☀︎あ?


⭐︎あ〜


「メイ?」


「……あさひくん」


「何? こいつも後輩?」


「……うん、そう、かな?」


「「……」」


☀︎俺、後輩か?


⭐︎一応、高校の、ね?


「まさか糸井先輩が浮気するなんて思わなかったな」


「……うん」


「にしても大野のやつ。何食わぬ顔しやがって。怒るなり悲しむなりするもんじゃないのか?」


「えっと、たぶん、傷ついてたよ? 悲しそうな目してたもん」


☀︎は?


⭐︎私にはわかったよ?


「ごめんなさい」


「何しにきたの? 俺にはもう用はないはずだろ?」


「その、ケジメをつけに来ました。あさひくんと付き合っていながら、先輩に誘われて遊びに行きました。仲良くなって、その、男女の仲になって、付き合うようになりました」


「男嫌いって設定だったはずなのに、ビッチにキャラ変してやがったか」


「なんと言われようと悪いのは私だから受け入れます。ごめんなさい」


「そのごめんなさいは何に対してだ? 浮気してごめんなさい? 別れてくださいごめんなさい?」


「……両方、です」


☀︎聞くまでもないよな


⭐︎……


「好きにしたら? 浮気するようなやつに興味ねぇし」


「……はい。今までありがとう。楽しかった」


「……楽しかったやつが浮気なんてするかよ」


☀︎だろ?


⭐︎う〜ん? でも付き合ってるときは幸せそうな顔してたよ?


☀︎ふ〜ん。結局、そばにいてくれるヤツがいれば良かったんだろ。


⭐︎えいっ!


☀︎なんだよ。急に抱きついてくんなよ


⭐︎愛情表現です


☀︎いらね〜よ。てかお前にまで騙されてたら人間不信になるわ


「よ〜し、男女混合ダブルスだ。3回勝ち抜いたら終わりな」


「大好きな幼馴染と付き合えて舞いあがってるな古木」


「そ、そんなんじゃないさ。ただ大会近いからみんなに試合感覚を持って欲しくてだなあ」


「はいはい。じゃあ俺が小野ちゃんと組んでいいか?」


「いいわけないだろう。夕陽は俺のパートナーだ」


☀︎浮かれてるよな?


⭐︎……若干


☀︎盛大に。もうちょっと落ち着いて欲しいもんだぜ。


⭐︎それに関しては返す言葉もありません。


「夕陽!」


「うん」


☀︎さすがカップル。息ピッタリ。


⭐︎……


「やるじゃないか! それならこれはどうだ? ミラクルスマッシュ!」


「きゃっ!」


☀︎おっ! 強烈なスマッシュに小野選手うまく返せず。玉ははるか彼方へ!  


⭐︎大好きな朝陽くんの元に飛んでいきました。


☀︎投げやりないい方だなぁ


⭐︎いじわるする人が悪いだと思うよ?


「やべっ! フェンス越えちまった!」


☀︎ある意味天才だよな


⭐︎なんで?


☀︎動き回ってる俺の足元に正確なパス寄越すんだからな。


「えっ?」


 ☀︎ピッタリしたぜ。ピン球ごときに足元すくわれたんだからよ。


「いてっ!」


「大野! 大丈夫か?」


「あー、やばいかも。歩けねぇ」


「おい、大会前だぞ? 卓球部!」


☀︎お〜。荒れそうだな〜。


⭐︎他人事みたいに言わないでよね

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