第9話 デート

「なあメイ」


「ん? 何?」


「なんでこんな席なんだよ?」


☀︎映画はゆったりスペースで見たいだろ?


⭐︎い、いいんじゃないかな?


☀︎おたく、なんか企んでるな?


⭐︎か、考えてない、よ?


「えっ? せっかくだからカップルシートがいいなって思ったの。だって、私たちカップルじゃない?」


「いや、これカップルがイチャイチャするためのシートだろ? それならラブホ行けよ。みたいな」


「えっと、ラ、ラブホに行きたいってことかな?」


☀︎言ってねぇよな?


⭐︎う〜ん?


「いや、せっかく金払うんだから映画みたいじゃん。楽しみにしてたやつだし」


「あっ、う、うん。私も楽しみにしてたよ? 初デートだし、ね?」


⭐︎初デート……朝陽くんも?


☀︎さぁな?


⭐︎えっ? ……メイ先輩以外にも?


☀︎映画は期待外れだったな


⭐︎話逸らした

 

「ったく。期待外れもいいとこだったじゃねぇか」


「ふぇっ? そ、そうかな? あの、期待以上の効果だったよ?」


⭐︎……映画、見てたんだよね?


☀︎当たり前だろ?


「ほらっ、しっかり立てよ。それともお姫様抱っこしてやろうか?」


「こ、腰がね? あの、ちょっと激し過ぎだと思う、よ?」


「お前、ハグとキスだけだろうが。他人に聞かれたら勘違いされるような言い方するなよ」


「そ、そのキスが激しかったんじゃない! どれだけ窒息しそうになったことか!」


「なんだよ。じゃあ、まあ、キスはやめておくか」


「ちょ! ちょっと朝陽くん。私そんなこと言ってないもん! ただちょっとだけ息継ぎをね? その……そっか! 慣れてないからできないんだよ。うんうん。だからいっぱい練習しよ?」


「はっ? 練習って? キスのか?」


「う、うん。あの、上手にできるようになるから、もうしないなんて言わないで?」


「なんで泣きそうになってんだよ? んじゃ、どこかで練習するか?」


⭐︎き、キスの練習? どこで? その、えっ? 練習?


☀︎バカだよな


⭐︎あの、朝陽くんが言い出したんだよね?


☀︎どうせ、あんたも練習してたクチだろ? キスだけに。


⭐︎し、してないもん! 


☀︎ああ、そうか。あんた顔に似合わずエロ———


⭐︎くないよ? ちょっと人聞き悪いんじゃないかな?


☀︎そうか? だって大学の時も———


⭐︎ち、違うもん! 私のせいじゃないもん! そ、それに、昔の話しだもん!


☀︎昔、ねぇ? エロいのはいまも変わらねぇけどな?


⭐︎……朝陽くんのバカ


「う、うん! あっ、でもその前にご飯食べたり買い物したりしたいかな?」


「デートかよ!」


「デートだよ〜」


「まっ、いっか。ほらっ、行くぞ」


「あっ、う、うん! えっと、ちゃんと恋人繋ぎしてくれるんだね」


「はっ? 嫌ならやめるけど!」


「も、もう! 嫌なんて言ってません! だからやめないし! やめたら腕に抱きつくからね?」


「あ〜、当たってるんだけど? 当ててるの。ってやつだろ? まあ、いいぞ。そっちにするか?」


「……い、意外と朝陽くん、積極的だよね?」


「そっか? じゃあまあ、帰るか」


「ちょ、ちょっと! まだデート中だよ?」


「わがままなやつだなぁ」


「あまり、いじめないでね?」


「はいはい。んじゃあ、メシいこうぜ。どこか行きたいところあるか?」


「うん! あの、イタリアなんだけどピザが食べ放題なんだって。どう、かな?」


「じゃあ、行くか」


「うん」


⭐︎なんだかんだで優しいんだよね


☀︎は? 善意の塊みたいなものだろ?


⭐︎よく、いじわるされてるよ?


☀︎俺はよく迷惑かけられてるけどな


⭐︎うっ……


「へぇ〜、ピザはオーダーバイキングか。でも頼むのは1枚ずつだろ? メイ食べれるのか?」


「私だって体育会系だよ? しっかり食べます」


「どこをどうみたら体育会系なんだよ。まあ、たしかに胸は慎ましい感じだけどな」


「あ・さ・ひ・くん! セクハラなんだからね? もう! 人が気にしてることを……。ね、ねぇ? その、朝陽くんもやっぱり大きい方がいい?」


「あん? いや、別に。大きさよりも形と感度じゃね?」


⭐︎……


☀︎重要だろ? まあ、あんたの場合は———


⭐︎なにも言わなくていいです。


「そ、そっか。あ、形はそんなに……。感度は、……って、さっきから話がおかしな方向にいってるよ⁈」


「メイがエロいからだろ?」


「エロくないもん! も、もうとりあえず頼もう? 私は明太クリームパスタのセットにする。朝陽くんは?」


「俺は和風にする」


「は〜い。すみませ〜ん!」


⭐︎ペペロンチーノじゃないんだ。


☀︎まあ、ニンニク臭くなっちまうしな


⭐︎あれ? 私と一緒のときはよく食べるよね?


☀︎なんか変か?


⭐︎あはははは


「ね、ねぇねぇ。このハチミツのピザ美味しいね。また後で頼んでいい?」


「まあ、いいけどよぉ。そのほっそい身体によくまあ入るもんだな。お前、ダイエットとは無縁だろ?」


「な・ま・え! お前とかあんたは禁止! ダイエットくらい普通にするよ? だって恋する乙女だし」


「……自分で乙女とか言うなよ」


「花も恥じらう女子高生だよ? いまだけなんだから強気にいかなきゃ!」


「まあ、来年はJKからJDだからな。その後はOLだろ? どんどんと響きがエロくなるな」


「朝陽くん。そろそろエロから離れようか?」


☀︎健全な高校生なんだから仕方ないよな?


⭐︎健全? なのかな?


☀︎あんたには言われたくないけどな?


⭐︎なっ、なんで?


☀︎ん? 言っていいのか?


⭐︎やっぱりいじめっ子だよ


「はぁ。美味しかったね」


「ああ。美味しかったけどな? メイの印象が変わったわ」


「ほぇ? ちょ、ちょっと待って? まさかと思うけど大食いとか、かな?」


「いや、まぁ……、しっかり食ったし、どこかで身体動かすか?」


「うぅぅ。誤魔化された。その、大食いはやめて、ね? あっ、公園で散歩しない?」


「おう、いいぞ。健全だしな」


「私はいつも健全です」


「……」


「ちょっと?」


⭐︎私もいつも健全です


☀︎あんた、じゃなくて夕陽は昔から健全とは無縁だろ?


⭐︎うぅぅ〜。そんな印象嫌だよ


「ん〜! 風が気持ちいいね」


「だな。にしても小さい手だよな。握ってると潰しそうだ」


「あはははは。簡単に潰れないからちゃんと握っててね」


⭐︎メイ先輩、かわいいなぁ


☀︎そうか?


⭐︎素直じゃないね。


☀︎夕陽はかわいいぞ?


⭐︎ふぇっ? あ、ありがとう……


☀︎なぁ〜んてな


⭐︎……


「今日は楽しかったよ。送ってくれてありがとうね」


「おう。じゃあな」


「あ、ちょっと待ってよ。最後に、んっ」


「んっ? ……大胆だな」


「えへへへ。じゃあ気をつけてね」


⭐︎いいなぁ


☀︎ん? するか?


⭐︎ふぇっ? んっ! ん〜! って、ちょっ、ちょっと冷たい手でお腹———、も、もう!

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