第8話 お付き合い

「好き」


⭐︎えっ?


「は?」


「だから、好きなの。朝陽くんのことが」


⭐︎ストレートだね


☀︎だな


「はぁ、そりゃどうも」


⭐︎へっ?


☀︎なんだよ?


⭐︎あ、えっと……そんな応え方したんだね


「って、それだけ?」


⭐︎ほら先輩も困ってるよ


☀︎好きって言われただけだぞ?


⭐︎そうだけどね? 他の意味も含まれてると思うよ?


「はっ? お礼じゃだめなのか?」


「あっ! そっか。うん言葉が足りなかったね」


「ん? だな。じゃあそういうことで」


「うん、またね……、じゃないよ? 待って待って。続き、続きを聞いて」


⭐︎……わかってたんだよね?


☀︎そこまで自意識過剰じゃねぇよ。


「なんだよ続きって」


「……うん。もう朝陽くんにはストレートに話さないと伝わってくれないよね。はぁ」


「なんか馬鹿にされてる?」


「してないもん」


「もんって。まあわかりやすく頼むよメイ。付き合いたいならそう言ってくれよ」


⭐︎……意地悪だ


☀︎面倒になったんだよ


「意地悪だなぁ。それでお付き合いしてもらえますか?」


「あ〜、なんで付き合いたいんだよ?」


「好きだから以外で?」


「まあ、それが大事なのか……、それなら無理かな?」


「なん、で?」


「俺がメイを好きかわからねぇから?」


「……わからない?」


「ん? おおっ。なんで食いつき気味なんだよ」


「好きかもしれないんだよね?」


「絶対にメイじゃないとダメでは———」


「いい! 今はそれでもいい。メイが好きって言ってくれるように頑張るから。だから付き合って」


☀︎変だよな?


⭐︎変じゃないと思うけどなぁ。ねぇ、朝陽くんは私のこと———


☀︎先進むぞ


⭐︎……ばか


「付き合うって男女の付き合うだよな?」


「うん。手繋いで一緒に帰ったり、休みの日にデートしたり」


「キスしたりセックスしたりだろ?」


「もう! 飛躍しすぎ」


「違ったのか」


「……違わないけど、その……朝陽くんもしたいと思う?」


☀︎思う?


⭐︎なんで私?


☀︎だってお前、大学———


⭐︎あ、朝陽くんが答えるみたいだよ


☀︎の時に、


⭐︎答えるみたいだから!


「メイとか? そりゃ健全な男子高校生なんだからしたいと思うぞ」


「そ、そう? うん、そういうのも含めて、だよ」


「で、お前は俺としたいの?」


⭐︎他に言い方なかったのかな?


☀︎シンプルイズベストだぞ


「ふぇ? あ、その今すぐってわけじゃなくて、その。いずれはそういう仲になりたいなって思うよ」


「ふ〜ん。でもお前、俺と付き合って大丈夫?」


「どういうこと?」


「学校での評判良くねぇだろ。お前も色眼鏡で見られるかもよってこと」


⭐︎知らない人が勝手に言ってただけだもん


☀︎そんな奴らばっかりだったけどな


「私は朝陽くんと一緒にいたいの。他の人は関係ないんだよ? 私の気持ちは、変わらないよ?」


☀︎変わらない、か


⭐︎……


「そっ。まあ、いいぜ」


「本当? やった。ありがとう」


「なんだよありがとうって。じゃあ行くか」


「えっ? どこに?」


「ホテルだろ?」


「いずれって言ったよ?」


♢♢♢♢♢


「なあ夕陽」


「どうしたの誠くん」


「俺と付き合ってくれないか?」


「えっ?」


「やっぱりお前が好きなんだ。お前じゃなきゃだめなんだ。俺の隣にはお前が必要なんだ!」


☀︎力説だな


⭐︎……私の隣にはね、運命の人がいるんだよ


☀︎へぇ


「あっと、その……」


「だめか?」


「ダメと言うか、そんなこと考えたことなかったから」


「じゃあ考えてくれ。返事は今すぐじゃなくていい。だから真剣に悩んでくれ」


☀︎勝手なやつだ


⭐︎あはははは


♢♢♢♢♢


『ドンっ』


「あ、す、すみません」


「ああ、あんたみたいにちっこいのにぶつかられてもなんともねぇよ」


「こらっ朝陽くん。私の後輩怖がらせないでよ」


「おいメイ。俺が被害者だぞ」


「ごめんね夕陽ちゃん。口調はキツいけど優しい人だから大丈夫よ」


「あ、いえ。私がボーッとしてたんで」


「おいメイ」


「うん? あ、夕陽ちゃん。私の彼氏の朝陽くん。柔道部だし悪目立ちしてるから知ってるかな? な〜んて。知ってたね」


「は、はい」


「お前、付き合い出してから俺の扱い雑じゃねぇか?」


「そんなことないよ? ちゃんと後輩に彼氏自慢してるもん」


「今の会話のどこに自慢があった?」


「悪目立ちかな?」


「よし、別れるか」


「ま、まって! ごめんなさい。冗談だから! 調子にのって彼女ヅラしちゃっただけなの。だから別れるなんて言わないで」


「なんで、涙目なんだよ」


「だってぇ。別れるなんて嫌だもん」


☀︎青春だな


⭐︎笑えないよぉ


「あ、あの」


「ああ。まだいたのか」


⭐︎私の扱い雑じゃない?


☀︎気のせいだろ?


「さっきは本当にごめんなさい」


♢♢♢♢♢


「夕陽、帰るぞ」


「あ、うん」


☀︎ラブラブじゃねぇか


⭐︎違うもん


☀︎まだか?


⭐︎朝陽くん、意地悪ばっかりだもん 


☀︎もんって、子供か


「あれ? メイ、あの女ってさっきのチビか?」


「えっ? ああ、そうだね」


「隣は彼氏か?」


「古木くん? う〜ん、いまはどうかわからない」


「はっ? まあいいや」


「うん。こっちはこっちでイチャイチャしようね?」


「今からか?」


「腕組んで帰って、最後にキ、キスかな」


「へぇ? なあ、メイはキスしたことあるのか?」


「えっ? ないよ。あ、の。初めてだから優しくしてね?」


「キスだけじゃなかったのか。あまり手持ちないぞ」


「ごめんなさい。キスだけで、んっ!」


「だけで?」


「不意打ちずるい。ファーストキスだったのに」


「やり直すか?」


「……もう一回しよ?」


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