第6話 私の王子さま

「あ・さ・ひ・くん。おはよう」


「っス。なんでいるの?」


☀︎まさか自分がストーキングされるとはなぁ


☆ストーキングって……糸井先輩なのに


☀︎じゃあなんて言うんだ?


☆ええ〜っと……待ち伏せ?


☀︎懐メロかよ


「なんでって、朝陽くんと一緒に登校したかったからかな?」


「ストーカーか?」


「その言い方、悪意がない?」


「貞操の危機を感じる」


「むぅっ! それはさすがにひどくない?」


「まあ、やましい気持ちがないならな」


☀︎女はお〜おかみ〜


☆違うよ?


☀︎説得力に欠けるな


「あ、あの……」


「小野さん! 来てくれてありがとう」


「い、いえ」


☀︎なんだこれ?


☆え〜っと、放課後の呼び出し?


☀︎あ〜、誰が?


☆……私がです


☀︎はっ?


☆呼び出されました


「あの! 小野さん。単刀直入に言います。俺と付き合ってくれないかな?」


「えっ、あ、あの? わ、私?」


☀︎ほぉ、モノ好きなやつもいたもんだな


☆う、ぅん?


「小野さんは奥ゆかしくて」


☀︎陰湿で?


「笑顔が可愛くて」


☀︎愛想笑いが得意で?


「む……み、みんなに優しくて、そんな小野さんのことが好きになりました」


☀︎あ、理解したわ


⭐︎しないで欲しいな


「あ、あのですね。えっと」


「悪いな、そいつ口下手なんだ」


「っと古木だっけ? なにお前小野さんの彼氏?」


☀︎だよな?


⭐︎違うよ?


「保護者みたいなもんだ」


「はっ? てか邪魔しにくるなよ。仮に保護者だって言ってもデリカシーなさすぎだろ」


☀︎王子さまは世間知らずなもんだろ?


☆朝陽くんは糸井先輩にとっては王子さまだったのかな?


「まあ、どうとでも言ってくれ。夕陽さっさと部活行くぞ」


「えっ? ちょっ、誠くん待ってよぉ」


「小野さん?」


「あっ、あの「ごめんなさい。好きな人がいるの」えっ、えっ?」


☆どうやって断わろうと悩んでたら隣でも告白されてる人がいて


「んっ? あれ、糸井先輩だなぁ」


「あっ、誠くん戻ってきてくれたんだ」


「ごめんなさいが聞こえたから見たら違う人だったからさ」


☀︎同じ場所でコクるなよ


☆私に言われても……


「好きな人?」


「うん。だからごめんなさい」


「まあ、それならしゃ〜ないな。諦めて受験に専念するわ」



「さすが受験生。切り替えが早い。あんたもあれくらい早く切り替えたら?」


「ちっ! ロリ巨乳なんてドストライクだったのによ。変なヤロウが付いてるんじゃ、じっくり楽しめねぇよ」


「下心丸出しだな」


は余計なこと言わなくていいんだよ」


「あ、あのごめんなさい。好きな人はいませんけどあなたとは付き合えません」


☀︎まあ、身体目当てのやつなんか嫌だわなぁ


☆う、うん


「まあ、もういいよ。興味なくしたわ」


「……はい」


⭐︎なんか私が悪いみたい


☀︎結果オーライ



「あれっ? 古木くんに小野さん? こんなところで何を……」


「先輩?」


⭐︎先輩、何かを察したみたいで顔が赤かったの


☀︎察しがいいなぁ


⭐︎誤解だもん


「あっ、うん。二人の仲をしとやかく言うつもりはないんだけどね、折角入部してくれたのに不純異性交友で停学ないし退学ってのもね?」


☀︎まあ、疑われても仕方ないよな


⭐︎なんでかなぁ


「先輩、違いますよ。ここにいた理由は先輩と一緒。夕陽が告白されてたんですよ」


「古木くんに……じゃないんだよね?」


「ですね。俺は迎えにきただけです」


「ちょっと待った! じゃなくて?」


「……じゃないですよ」


「あ〜、タカさ〜ん、チェックみたいな感じかな?」


☀︎素直じゃないな


⭐︎朝陽くんが言えるのかなぁ


「それは置いといて、先輩やっぱりモテるんですね。頻繁にあるんですか?」


「えっ? あははは。そんなことないよ。小野さん……夕陽ちゃんって呼んでもいい?」


「あっ、はい」


「うん、ありがとう。夕陽ちゃんなんてしょっちゅうなんじゃない? 古木くんも気が気じゃないね」


☀︎さっさとコクれよってな


⭐︎……もう


「あの、糸井先輩」


「メイでいいよ、夕陽ちゃん」


「あっ、じゃあメイ先輩」


「ふふふ、なにかな?」


「さっき好きな人がいるって」


「ああ、うん。最近ね、できたんだ」


「断るための口実じゃなかったんですね」


「うん、古木くんと違って正直なの」


☀︎正直すぎるのもな


⭐︎うれしくない?


☀︎面倒


⭐︎あははは、ひどいなぁ


「当てましょうか?」


「えっ⁈」


「多分、卓球部と柔道部では有名なんじゃないですかね?」


「うそっ! なんで?」


「あからさまですよね? 先輩達が言ってましたよ。糸井は男性恐怖症克服か? ってね」


「ん〜〜〜? な、なんのことかなぁ」


⭐︎メイ先輩、誤魔化すのヘタすぎ


「あの、柔道部の大野くんですよね?」


「え〜っと、ん〜っとね、あはははは」


「……この前の防球フェンスの時ですか?」


「はぁ〜、もうっ! そうです」


「やっぱり」


「まさか自分がこんなに単純だと思わなかったよ」


☀︎自覚してなかったんだな


⭐︎そうかなぁ? あんな風に助けられたら意識しちゃうよ?


☀︎助けてねぇし


「あれは……仕方ないと思います」


「うぅぅ〜、恥ずかしいなぁ。でも夕陽ちゃんもわかってくれるんだね」


「……はい」


「真っ赤になっちゃって。夕陽ちゃんも乙女だね」


☀︎乙女なのか?


⭐︎知らないっ


「あまり恋愛に興味なさそうですけど糸井先輩、勝算はあるんですか?」


「……後悔だけはしたくないから。当たって、ダメなら砕け散ります」


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