第5話 年上キラー誕生

「おい卓球部! またピン球飛んできてるじゃねぇか!」


「やべぇ! 防球フェンス立て忘れた」


⭐︎毎日怖かったよ


☀︎忘れる方が悪い


⭐︎ですね


「ごめん! 今すぐ出すから」


「頼むぜ糸井! 怪我でもしたらお前看病してくれるのかよ」


「ごめんって。すぐにやるから」


☀︎弱いくせに


⭐︎先輩、いつも大変そうだったよ


☀︎つけ込まれる方も悪いけどな


⭐︎うぅぅぅ〜


「なあ糸井。卓球部なんて辞めてうちのマネやってくれよ。お前ならみんな大歓迎だぜ」


「えっ? いや、私卓球部だから」


「いいじゃねぇか。今年はイキのいい新人も入ってきたしうちの方が将来性あるぜ?」


「おい」


「うおっ! なんだ大野か。ビビらすなよ」


「んなとこでサカってないで練習しろよ。あんたら弱いんだからよ」


「はぁ? お前いくら全国行ったことあるからって調子———」


「続きは畳の上で聞いてやるよ」


「ちょっ、まて引っ張るなよ!」


⭐︎じ〜


☀︎なんだ?


⭐︎別に。優しいなぁって思っただけ


☀︎はぁ?


「先輩、大丈夫でしたか?」


「ああ、古木くん。うん、大丈夫。それよりもフェンス出し忘れないようにしないとね」


「すみません、俺らのミスです。気をつけます」


☀︎優しいなぁ


⭐︎誰が?


☀︎ま・こ・とくん


⭐︎……


「糸井先輩!」


「あ、古木くんお疲れ様」


「これからみんなでファミレスにでも行こうって話してるんですけど、一緒にどうですか?」


☀︎さすがリア充だなぁ


⭐︎コミュニケーション取ろうとしてたんだよ


☀︎説得力ねぇな


⭐︎ぼ、ぼっちじゃないもん


「あ、ごめんね。私、用事あるから」


⭐︎り、リア充?


☀︎はぁ?


「ね、ねぇ君」


「はっ?」


「私、卓球部3年の糸井メイ。あなたは?」


「あ〜、なんで?」


「えっと、さっきは助かりました。ありがとう」


「……なんのこと?」


⭐︎先輩、かわいいよね


☀︎あ〜、なんのこと?


「ふふっ、わかってるって顔に書いてあるよ。大野くん?」


「知ってんじゃん」


「目の前で名前呼ばれてたもん。君の口から聞きたかったの」


「訳わかんねぇ」


「素直じゃないんだね。でもありがとう」


「はぁ〜、年上女は苦手なんだよ」


「そうなんだ。年下じゃなきゃだめとか?」


「なんの話だよ。トラウマになってるだけだ」


⭐︎あれっ? 年上苦手?


☀︎なんだよ?


⭐︎ん? あれ?


「トラウマねぇ。うん、じゃあトラウマ解消に協力します。大野くん、よかったら友達になってくれない?」


「はっ? 面倒くさそう」


「そう?」


「だってあんたかわいいからモテるだろ。仲良くすると変な奴らに恨まれそうだ」


「かわっ……! そ、そんなことないよ。それに、大野くん他人の目なんて気にしなさそうだよね」


「まあ、な」


「ねっ、だからお友達からお願いします」


⭐︎


☀︎変か?


⭐︎先輩、意外とあざといんだぁ


「で、なんでついてくんの?」


「友達だから?」


「了承してねぇし」


「お願いしたよ?」


「あんたも人の話聞かない系だな」


「メイでいいよ」


「は?」


「呼び方、あんたって呼ばれるのはちょっと寂しいかな。別にいいでしょ?」


「どうせ聞かないんだろ?」


「ふふっ、その通りです」


「まあいいや、でメイはなんでついてくるんだよ」


「……」


「おいっ」


「……あ、うん。大野くんってすごいよね(全く意識してないから呼べるのかな?)」


「会話にならねぇ」


「ごめんごめん。ちょっと考えごと。私の家もこっちなんだ。たまたま帰る方向が一緒だっただけだよ」


「なにがたまたまだよ。校門で待ち構えてただろ」


⭐︎せ、積極的だなぁ


☀︎一歩間違えればストーカーだぜ


「ところで大野くんのファーストネームはなんていうの?」


「個人情報」


「名前くらいは問題ないよね?」


「あざといんだよ。智だよ智」


「そっか、さとしくんねって騙されないよ?」


「チッ!」


「あっ、ごめんね。うざい?」


「そこまでは言わないけど、あんた……メイはぐいぐいくるな」


「あはははは、私もびっくり。ほんとは男子、苦手なんだよね」


「人付き合いうまそうだけどな」


「表面上はね。だから年上が苦手な大野くんと男子が苦手な私が友達になることはwin-winな関係なんですよ」


「朝陽」


「ん〜?」


「名前だよ」


「朝陽くんか〜、うん。なんかピッタリだな。ねぇ、朝陽くん」


「あ?」


「改めて友達になってくれないかな?」


「……まあ、いいか」


「ほんとに? やった! じゃあ友達記念に連絡先交換しよ?」


「登録の仕方よくわからんから勝手にやってくれ」


「ふふふ。はい、じゃあちょっとスマホ借りるね」


⭐︎私、しばらく教えてもらえなかったよね?


☀︎問題児が何言ってるんだ?


⭐︎……ナニモイッテナイデス


「はい、ありがとう。じゃあ朝陽くん、また明日ね」


「おお」


⭐︎青春っぽい


☀︎恋愛脳のおたくとは違うぞ?


⭐︎あの、ね? だから名前でね?


☀︎メイ?


⭐︎なんで他の女の人の名前呼ぶかな?


☀︎今回、夕陽の出番なかったし


⭐︎……触れないでよぉ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る