第4話 部活も隣

「一中の大野?」


「ッス」


「なんでウチにきた? お前去年の県大会優勝したんだろ?」


「問題ある?」


⭐︎あれ? 相手って3年生だよね?


☀︎さあ? 問題ある?


「いや、ないけどさ。強豪私立からスカウトあったんじゃない?」


「まあ、あったけど問題ある?」


「とりあえず確認だけど入部希望だよな?」


「ッスね」


「うちは強豪じゃないけどいいのか?」


「問題ある?」


⭐︎口癖?


☀︎面倒だっただけ?


⭐︎やっぱりなぁ


「す、すみません。入部希望です」


「あらっ、ようこそ卓球部へ!」


「1年C組の小野夕陽です」


「同じく古木誠です。よろしくお願いします」


☀︎部室でイチャイチャするのが目的だろ?


⭐︎も〜、違うもん。元々やってたんだもん


「あの、ここって柔剣道場ですよね? ここで練習してるんですか?」


「そうなのよ! あのね、去年までは体育館の隅で肩身が狭い思いしてたんだけどね、剣道部が廃部になったおかげでここ使わせてもらえるようになったの!」


☀︎笑えねぇ理由だけどな


⭐︎私、廃部理由知らないの。部員不足?


☀︎学校で合宿して、道場に布団敷いて寝てたんらしいんだけど、その時に盛り上がりすぎて乱取りならぬ乱交したらしい


⭐︎ふぇ?


☀︎で、だ。朝先コウにバレて廃部となったとさ。めでたしめでたし


⭐︎めでたいのかなぁ


☀︎卓球部にとってはな


「おっす朝陽」


「よう」


「結局柔道部どうした?」


「入った」


「ウチみたいな進学校、運動部なんて弱小じゃねぇ?」


「勝ち抜きなら問題ねぇ」


「言うねぇ」


「賢こそバイトは?」


「即採用。昨日から働いてるよん」


「どこでやるんだ?」


「ファミレス。キッチン希望だったんだけどどうしてもホールやって欲しいって頼まれちまったぜ」


「嫌味なイケメンだな。さっさと自分の教室行けよ」


☀︎ツラいいやつは人生得だよな


⭐︎う〜ん? なのかな〜?


☀︎おたくは微妙だからな


⭐︎あはははは。辛辣だなぁ


☀︎俺みたいなのは不利だからな


「お前か生意気な1年は?」


「はっ?」


☀︎な?


⭐︎なって言われてもね?


☀︎普通に廊下歩いてるだけだぞ?


「身体も態度もでかそうだな」


「何? こんな進学校でもあんたみたいなのがいるんだ」


「あっ? お前後輩のくせに口の聞き方なってねぇな」


「尊敬できないやつに敬語使う必要ないだろ?」


⭐︎自業自得なところもあるんじゃないかなぁ


☀︎俺は平和主義者だぞ?


⭐︎適当なことばかり言うんだから


「面白いやつだな。遊んでやるからちょっと———」


「こらっ、3年生。さっそく新入生いじめちゃだめでしょ」


「げっ! 鈴音ちゃん!」


「ちゃんと先生って言いなさい」


「いいじゃんか鈴音ちゃん」


「はいはい。生徒指導室でしっかり聞こうか? 進路相談と一緒に」


「いやいや。遠慮しておくよ。おいお前、鈴音ちゃんにお礼言っておくんだな!」


「なんだあれ」


「よくお礼言っておくんだな」


「……」


☀︎面倒なやつは無視するに限るだろ


⭐︎え、ええ〜


「お・お・の・くん」


「……そろそろチャイムが鳴るかな」


「放課後なんだから鳴っても問題ないでしょ」


「はぁ、めんどくせぇ。なんすか御堂先生。部活あるんすけど」


「なによ。冷たいわね。昔みたいにすずねぇちゃんって呼んでくれていいのよ?」


「言わねぇよ! ってか学校で馴れ馴れしくするなって言ったのお前だろ」


☀︎年寄りは都合悪いことはすぐに忘れやがる


「お前? あさくん? 誰に向かって言ってるのかな?」


「んだよ。とにかく俺に関わってくるなよ」


「ほんとに、いつまで経ってもかわいいわね」


⭐︎ほ、翻弄されてる。これが「お姉ちゃんの力」なんだ


☀︎何バカなこと言ってんだ?


「こ、こんにちは〜」


⭐︎練習初日は緊張したよ


☀︎なんで? お手手繋いで行ったんだろ?


⭐︎繋いでないもん。1人だったし!


「あ、あの〜」


「す、すみませ〜ん」


「ど、どうしよう。卓球部の人誰も気づいてくれないよ」


⭐︎卓球部は道場の奥で練習だったから柔道部を横切るのは怖かったよ


「おいっ」


「へっ?」


「……入り口塞ぐなよ」


「あ、す、すみません」


「周りよく見ろよ」


「は、はい!」


⭐︎怖い先輩を怒らせたと思ったよ


☀︎俺が悪いのか?


⭐︎私が鈍臭いだけです


「あ〜、この前見学来てくれた子だ。本入部してくれるんだね」


「あ、は、はい。よろしくお願いします」


「は〜い、こちらこそ。3年の糸井メイいといめいよ。一応部長です」


「あ、これ入部届です」


「うん。小野さんね。この前一緒だった男の子は他所いっちゃったのかな?」


「いえ。後からきますよ」


「ほんと? よかった。ここは柔道部の縄張りみたいなものだからね。味方を増やしておかないとね」


「さっき大きい先輩に睨まれました」


「んっ? そんなに大きな———、あっそれ、今年の新入生だよ。ものすごく強いみたい」


☀︎なんだその説明


⭐︎仕方ないんじゃないかな? 近づくなオーラ出てるもん


☀︎じゃあなんでおたくはいつも近くにいるんだよ?


⭐︎えっ? 意識してないからわからないよ。なんでだろうね?

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