第25話 寝床探し

ようやく事情聴取も終わり、解放された私は部屋に………あれっ?

一体私の部屋はどこだろう。

それに気が付き、廊下の真中で立ち止まった。

イレギュラーで予定に無かった宿に泊まり、

状態を把握しないままドナドナされたんだ。

私はこの宿での情報は、まだ何も知らされていなかった。

さて……一体どうすればいいんだ?

この宿が貸し切りならば、どこかの部屋を尋ねれば、

誰かしらいると思うんだけど、

貸し切りで無かった場合、

訪ねたその部屋が、もし見ず知らずの人の部屋だったらどうなる?

とんでもない場面に遭遇すれば、謝っても済む事ではない。


「………戻るか。」


訓練司令官さんならば私の…いや、隊長達の部屋を教えて貰えるだろう。


「すいません訓練司令官様。

ちょっとお聞きしたい事が有るんですが…。」


ドアをノックし声を掛けるが、

中からの応答は無し、ウンともスンとも言わない。

一体どうしたんだろう。

あの訓練司令官さんに何か有ったとは思えない。 

もしかしてシャワーを浴びているとか、既に寝入っているとか……。

まぁそれらはまず無いな。

訓練司令官さんほどの人が、

ノックの音や声に気が付かないなどの隙を見せる筈が無い。

もし寝ていても物音ひとつで飛び起きるような人だもの。


「つまり訓練司令官さんは、部屋にいないと言う事だね。

困ったなぁ。」


それなら宿の責任者に聞けば何か分かるかなぁ。

部屋割は機密情報に値するから、他人が把握している事などまず無いだろう。

しかし私は一分の望みを掛け、ロビーへの階段をトボトボと降りた。




「何で私は、こうも運に見放されているのかな…。」


確かに受付には人がいた。

だがそれは、先輩に仕事を押し付けられた、働き始めたばかりの、

新米ホヤホヤだと言う少年だった。


「だから教えてやりたいのは山々なんだけどさ、

俺は本当に何も知らないんだ。

まぁ、先輩のノートならそれなりの事が書かれてるかもしれないけど、

俺が見たってバレれば首が飛ぶかもしれないからなぁ。

でも……もし君が俺とデートしてくれるなら、調べてやってもいいかな。」


「なにナマ言ってるの少年。」


「俺は少年じゃ有りません。

マリウスと言う立派な名前が有るの。

俺の事を余りガキ扱いしないでほしいな。

君だって似たような年だろう?」


あのね、王女様の付き添いとは言え、こっちは一応お客だ。

ナンパなどせず、もう少し敬意を持って対応してくれないかな。


「そうだ、部屋が分からないなら俺の部屋に泊まって行けば?

俺、朝まで勤務だからベッドは仕事明けまで使わないし、

もしよかったら使ってく?」


「滅相もございません、

あなたのベッドを使うなど恐れ多くてできません。」


あんたの部屋に泊まって、

いつご本人様に忍び込まれるのか分かったもんじゃない。

もし何か有ったとして、いくら訴えても断然私の方が不利だ。


「まあ普通断るよね。

さて、お遊びはお終い。

部屋割りは教えられないけれど、責任者の人の連絡先ぐらい分かると思うよ。

今調べてきてあげるから、ちょっと待っていて。」


何と、今のやり取りは暇つぶしでしたか?

まあいい、とにかく誰かしらの部屋は分かるんだ。


「お待たせ~。

101号室が連絡先になっていたよ。

その責任者の名前は……ガリアンさんだね。

どの部屋か分かる? 何だったら案内してあげようか?」


「いやいやいや、分かりますとも。」


だって、すぐそこの部屋のプレートに101って書いてあるもの。


「なんだ残念。

それじゃあね。

デートの約束忘れないで。」


デート? 何ですかそれは。



さて、101号室を訪ねた私がお会いしたのは、

財務管理担当ガリオンさんと訓練司令官さんとあと数名。


「エリー、こんな夜中に独り歩きなんてしてはダメだ。」


あっ、隊長もいた。


「えっと、お忙しいところ申し訳ございません。

隊長、今夜のお部屋は何号室でしょう。」


「えっ、今日は私の部屋で寝てくれるのかい?

分かった、一緒に帰ろう。」


「ユリシーズ様、何馬鹿な事を言っているんです。

まだ明日の確認が終わっていないでしょう。

エリーちゃん、隊長の部屋は204号室です。

当然ひとりで行けますね。」


「はい、訓練司令官様。」


304号室なら、さっきまでいた訓練司令官さんの部屋から2部屋向こうの所だ。

迷う方が難しい。

私は101号室を後にし、隊長達の部屋へと向かった。

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味噌っかすな私をなぜに隊長が溺愛するのでしょうか はねうさぎ @hane-usagi

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