第24話 事情聴取

その日は休憩予定の地で、何とか宿泊所を確保できた。


「私は野宿でもよかったのに……。」


王女様は、残念そうに呟く。


「王女様、イレギュラーもまた楽しいものですよ。」


「エリーちゃん、あなた今日は私と一緒に寝ましょう?

今回の武勇伝も聞いてみたいし。」


「いえ、私には隊長達のお世話もございますし。

それに今回活躍なさったのはお姉さま達です。

だからお姉さまと一緒にお休みになさるといいかと……。」


途端にさぁっとちりじりになるお姉さま方。

何と素早い。

その波に乗り、私も姿を晦まそうとしたけれど、

やはりお姉さま達ほど年季が入っていないので、

逃げ遅れましたとも。

遠くで見ていた隊長達の目が、どことなく寂しそうに見えたけど、

今夜の支度は、自分たちでやって下さい。

お願いします。


「ユーフェミア様、お楽しみの最中申し訳ございませんが、

ジュエリーの事情聴取が済んでおりません。

今夜のお休みは何卒お一人で。」


「え~、それは明日にすればいいでしょ。」


「そうも参りません。

こちらも多忙を極めておりますので。」


ごめんなさい。

私が移動時間を削りまくって、

皆さんに余計な仕事が発生しているせいですね。

でも、報告は終わっておりますよ。


「あの子達にしたのは報告でしょう?

これから行うのは、私との正式な事情聴取です。」


「はい………。」


そして私は大人しく、訓練司令官さんにドナドナされました。




「それでは辻褄が合わないでしょう。

あなたは魔法陣の解除の仕方を覚えていたと言っていましたよね。」


「は、はい……。」


「しかし、あなたが行った方法は、

その魔法陣が消える様に念じながら、

そこに手を当てたと言いましたよね。」


「は、はい……。」


「しかし、私は魔法陣解除の講習時、

そんな方法を教えた覚えは無いのですが。」


「は、はい……。」


訓練司令官さんの突込みは半端ない。

重箱の隅をつつくように、理路整然と物事を処理し、

疑問をぶちかましてくる。


「すいませんでした…。

解除方法を覚えていませんでした。

ですから、その方法をお姉さま達に聞こうと思ったんですが、

取り込み中と判断して、聞くことが出来ず、

仕方ないので独自におまじないをしていました。」


「なるほど、それならば辻褄が合いますね。

私はてっきり通りがかりの辻魔法使いが、

なんちゃって魔法で掛けたものが、

タイミングよく劣化して、魔法陣が解けてしまったかと思いましたよ。」


「そうか、そうだったんですね。

タイミングよく劣化したんですか。

いや~、私もおかしいと思ったんです。

ただの思い付きのおまじないが効いたなんておかしいですよね。」


魔力が無茶苦茶高い魔術師でも、

それなりの方法を知っていなければ、

魔法を完成させる事は出来ないって聞いた事が有るもの。

ただの私のおまじないが効く訳無いじゃん。

でも、訓練司令官さんの表情が、

いまいち理解できない。

なぜ呆れたような顔をしているんだろう。


「ちなみに基本呪文などを使わずとも、

自分の思う通りに魔法を掛けられるほどの魔力を保有していなければ、

この隊に入隊する事は叶いませんよ。」


ウ・ソ!


「そんな話聞いてません!

それでは私なんて、この隊にいる資格が無いですよ。

そうだ、でしたらなぜ魔法の授業など有るのですか。

そんな人ばかりなら、そんなの必要無いじゃないですか。」


「一般論の取得ですよ。

それと、自分の力を発動する為の切っ掛けでしょうか。

幼児にただ縄跳びをしてみろと言っても、

出来はしないでしょう?

ですから縄跳びの方法を教える。

それと同じです。」


縄跳びと魔法が同じか!?

違うだろう!

いや、待てよ…。


「訓練司令官様、

ならば私もこの隊に入隊できたと言う事は、

私にもそれぐらいの魔力が備わっていると言う事でしょうか。」


「いえ、あなたの場合、特殊ですから。」


そうか………。

私はやっぱり特別にお情けで隊に入れてもらったんだ。

やっぱり味噌っかすは味噌っかすか…。

だが、こうやって隊にいるって事は、

それなりに役に立っている…?

皆さんに迷惑をかけていない…?

あ、あれ…、疑問形ばかりじゃないか?

大丈夫か私。

このまま隊に置いてもらえるのか?

そう言えば、最近除隊を考えると聞いた覚えが有ったな。

まずい、まずいぞ私。

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