第23話 別れ
まぁ、かたはすぐ着くな。
威勢はよくても、群れたへなちょこな盗賊など、
お姉様3人なら、あっという間に片が付くってもんよ。
大して時間も掛けず、取りこぼしも無く、
あっという間におっさん達はお姉さま達に捕まった。
「お姉様、危うい所をありがとうございました。」
危うかったかどうかは別として、とにかく、していただいた事に感謝。
「エリーちゃん…。」
あっ、怒ってる。
これはかなり怒っている。
ごめんなさい、申し訳ありませんでした、すいません、もう二度としません。
あれ、これ最近したばかりだ。
「あなたって子は、一体毎回毎回毎回、何をしているのですか。
今回も、希少なフェルリンを助け、盗賊を一網打尽にできましたが、
その為に王女様を危険な目に遭わせる訳にはいかないのですよ。
で、今回の原因は何ですか? また迷子ですか?
そんな事が続けば、あなたの除隊も考えなければいけませんね。」
「そんな!
お姉様、何とかご慈悲を!」
お姉様に縋りつき、泣きを入れる。
前回は誘拐で、今回はお花を探していたんです。
いや、今回も誘拐か……。
どんだけお子ちゃまなんだ、私…。
「とにかく、報告と連絡です、相談は受け付けません。」
「はい………(泣き)」
と言う訳で、私は一切合切を報告した。
フェルリンちゃんの魔方陣を解除した経緯を除いては…。
あれ?そう言えば隊長は?
こんなとき一番に飛び出して来るのは隊長だった筈。
そんなつぶやきが聞こえたのか、お姉様の顔が、残念そうに変わる。
「隊長ですか?
あの方も普段でしたら判断力が有り、頼りがいのある方なんですがねぇ。」
そう言い溜息をつく。
他のお姉様も同じく。
そうか、また残念な事を仕出かして、
とうとうお姉さま達に拘束でもされたのか、懲りないなぁ。
「とにかく盗賊達をどうしましょう。
全員に目を光らせて、次の町まで引率するのはかなりの危険と労力を伴います。
いっそ拘束したまま、ここに捨て置きますか?」
お姉様、それでは魔物たちのごはんになるだけ、
それは人間としてどうかと…。
「そうですね、ここに置いて行くフェルリンの餌にも当分困りませんし、
それもいいかもしれませんね。」
フェルリンちゃんの餌…。
ちょっと心を動かされたけど、やっぱり人間として…。
「冗談ですよ。」
冗談かい!
「フェルリン、あなたは私達の言葉を理解できますか?」
『当然です。』
まるで心の奥に響くようなフェルリンの声。
「ならば少しお願いしたい事が有ります。」
『あなた達は私の恩人だ。
何なりと聞いてしんぜよう。』
「私達は大切な旅の途中。
この馬鹿どもを連れて行く訳には参りません。
ですので、大変申し訳ないのですが、
大して時間は掛からないと思いますので、
この者どもをひっ捕らえに来る兵が到着するまで、
見張りをお願いできますでしょうか。」
『しかと承った。
して、こ奴らの餌は。』
無用とお姉さまが答える。
む、むごい…。
そりゃぁ、人間、一日、二日、三日ぐらい、
何かを飲み食いしなくても、生きて行けるぐらいの事は知っている。
でも、私には耐えられない。
しかし、体力や筋力が無駄に有りそうなおっさん達なら大丈夫かな。
『あい分かった。
してその後は。』
「ご自由に。
あなたは解放されたのです。
その後は御存分に生きて下さいませ。
人に危害を加えない程度に。」
フェルリンちゃんは、嬉しそうにクフンと吠えた。
「お礼を兵に持たせましょう。
ご希望する物はございますか?」
『そうじゃな…。』
しばらく考えた後、甘いもの…スイーツも良いな。
フェルリンちゃんは、そう呟いた。
いいよねスイーツ、美味しいよね。
「では、おおよそ二日ほどで大隊が到着すると思います。
それまでよろしくお願いします。」
『任された。』
それから私達は、慌ててその場を引き上げる。
何と言ってもまた予定が狂ってしまったのだから。
もしかして今夜も野営だろうか……。
気になったのは、解放された隊長が、
目を潤ませながら纏わりつくウザさと、
別れ際のフェルリンちゃんの寂しそうな目だった。
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