第19話 レイクサイドキャンプ
エルマ大先輩に命令され、私は一切合切報告をする。
先輩にとって、私の嘘などすぐ分かるとの事。
なぜだろう……。
一切合切、つまりこの事件の最初から最後までだ。
私が勝手に抜け出してスイーツを買いに行った事から……。
王女様は、冒険活劇のようだと可笑しそうに聞いている。
大先輩はユーフェミア様の手前笑っているけれど、
その目が怖い、オーラが痛い。
まるで身に刺さってくるようだ。
これは絶対に後で、お説教とお仕置きが待っていますよね…。
ごめんなさい、申し訳ありませんでした、すいません、もう二度としません。
心の中で何度も平謝りしたけれど、
多分伝わっていないよね。
もし伝わったとしても、そんな事で許してもらえる訳もない。
「取り合えず、報告書を提出なさい。」
はい、つまり反省文&始末書の事ですね。
それですべてがチャラになればいいな。
まぁ、甘い考えだと思うけど……。
「まあ、あなたが仕出かしたおかげで、
解決した事件も有りますからね責めはしませんが。」
それ、褒めてません、責めてます。
出発してから数時間、すでに日は傾きかけている。
またまた休憩の為に立ち寄った、町はずれの湖のほとり。
夕焼けが水面に映ってとても綺麗。
だけどそんな事で、周りの空気を有耶無耶にできはしなかった。
「出発が遅れ、宿泊を予定していた町に着くのは夜中になります。
暗くなれば途中で魔獣に襲われる確率も高くなります。
ならばこの町で宿を取った方がいいかと思われますが。」
「しかしここでは、満足の行く宿など無い。
ユーフェミア様に我慢していただく訳にはいかないだろう。」
「仕方ないでは有りませんか。
危険を冒すなら、それぐらい我慢していただいた方が…。」
「ですが一国の王女様を、そんな粗末な所にお泊めする訳にはいきません。」
「そうは言っても、もし途中で魔獣や賊に襲われでもしたらどうする気だ。」
「あら、怖いのですか?
王女様をお守りする自信が無いと仰る。」
「そうは言っていないだろう!
私を愚弄するつもりか‼」
議論は白熱しているようです。
「王女様、きれいですねぇ……。」
「本当に…。
逆さ夕焼けが湖に映ってとても綺麗。
あらエリーちゃん、あそこに一番星が。」
「えっ、どこですか?
お願い事をしなくちゃ。」
「嫌ねぇ、お願い事は流れ星にするのよ。」
「そうでした~。」
湖のほとり、お茶を片手に王女様との夕焼け見物。
あ~、ほのぼのする。
「エリーちゃん……。
何のんびりしてるんですか。
この先どうするか、皆、真剣に考えているのに。」
「すいません、でもとても綺麗で和んでしまって。
こんな所にずっといれたらいいな、何て。」
「そうね、ここなら夜空の星も良く見えて、
さぞきれいでしょうね。
エリーちゃんは沢山の星を見た事有る?」
「ありますよ。
キャンプした事も有りますし、
遠征のお付きで野営をしたことも有りますし。」
「いいわねぇ。
私なんて、夜はほとんど建物の中だから、
満天に輝く星なんて見た事無いわ。」
「きれいですよ~。
星の川、運が良ければすごい数の流れ星を見ることが出来ます。
お願いし放題ですよ。」
「お願いし放題…。
見たい、絶対見たい!」
と言うユーフェミア様の一言で、
今夜はここに野営する事になった。
各自の収納の中には、ありとあらゆる物が入っている。
下手な宿に泊まるより、よっぽど優雅に過ごせるほどだ。
王女様のリクエストで、キャンプ風に過ごす事になる。
収納から取り出した天幕を組み立てた。
一見すればテント、だが一歩中に入ればふかふかのベッドや、
必要な物が据え付けられている。
そしていくつものテントを取り囲むように、鉄壁の結界が張られている。
虫一匹通さない。
だから蚊に刺される事も無い。
これは私達、特殊部隊のお仕事。
そして、料理も。
「お食事が出来ましたよ~。」
エルマ大先輩が叫ぶ。
キャンプと言えばバーベキューだ。
お肉だ。
気取った事などしなくてもいいし。
「王女様、お肉何がいいですか?
牛、豚、鳥、トカゲ、カエル、ワニ、魚、すっぽん。
何でも有りますよ。
美味しそうですね。」
「そうねエリーちゃん。
でも、お肉ばかり食べてちゃだめよ。
お野菜も食べなくちゃ。
大きくなれないし、お肌にも悪いわ。」
お野菜ですか……………。
お肌はどうでもいいけど、背はもう少し…、
いや、お姉さま達ぐらいにはなりたいです。
でも、食事時に和気あいあいと話をしたり、
好きな物を好きなだけ食べるなど、城や宿では出来ない事で、
王女様もとても楽しそうだ。
「……エリーちゃん。」
「はい?」
「きっとあれは流れ星。
今、私、生まれて初めて流れ星と言うものを見たわ…。」
「え~、ずるいです。
何で教えてくれなかったんですか。
私も見たかった。
お願い事はしましたか?」
「エリーちゃん、いくらこのような状況でも、
今あなたが話をしている方は王女様です。
ただの使用人である私達が、そんな馴れ馴れしくしてはいけません。」
「やだわエルマ―。
エリーちゃんならいいのよ。」
「いいえ、今夜はある程度目をつぶりますが、
度が過ぎますと、示しがつきません。」
「それならエリーちゃん。
我が家の養子になりなさいな。
そして私の事をお姉様と呼ぶの。
あら、名案だわ。」
それは嫌です。
つまり今のお仕事が出来なくなる訳ですよね。
謹んでお断りします。
隊長もつらつらと反論して、私の味方をしてくれた。
「エリーがあなたの家族になると言う事は、
私の傍から離れ、碌に話も出来なくなると言う事ですから。」
隊長。
結局私欲ですか。
でも、家族になると言うのは王家に入る……。
絶対にお断りです。
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