第16話 反撃
扉に耳を当て、中の様子を確かめる。
「畜生、一体どこに行ったんだ!
ここからじゃぁ、何処にも行けない筈だ。」
「そこから逃げたんじゃないのか!?」
「そんな馬鹿な、ちゃんと鍵は掛かっているぜ!」
その声と共に、扉のノブがガチャガチャと音を立て、左右に少し動く。
つまりこの直ぐ向こうに敵がいる訳だ。
私は目標を扉の向こう、そうだな、5メート範囲に設定。
多分地下室にいるのは男二人。
おばさんは上にいる筈だ。
着飾ったドレスで、下に降りるとは思えない。
ならば、この魔法で二人片付け、
すぐにターゲットをおばさんに向ける。
この向こうの相手の身長は私より高い、
ならばダメージを与えるには、少し上部を狙おう。
私は取って置きの魔方陣を構築し、一気に放出。
「ていっ!!!」
舞い上がる粉塵。
粉々に砕かれた木片が飛び散る。
「ありゃ、マズったか。ちょっと威力が強すぎたかも。
まあ、訓練教官さんも、お姉様も見ていないから、怒られないか。
うん、結果オーライ。」
私の飛び込んだ室内には、二人の男が倒れていた。
床に転がり、どうやらケガをしている。
でも、この程度なら、しばらく放っておいても大丈夫だろう。
視界がクリアになる前に、
男の体を踏み台にし、上の部屋にジャンプ。
「何者だい!小娘!」
上に出た途端、おばさんが私に大剣を突き付けた。
「ただのメイドでございます、マダム。
私は仕事に忠実でございますので、
ここに連れて来られた以上、仕事をしたいと思いまして。」
今回は害獣駆除ですね。
「ほう、メイドかい。
それならメイドらしく、掃除でもするのかい。」
大剣を軽々と扱い、更に私に近寄ってくる。
「ええ、そうさせていただきます、わ!」
私は声と共に軽々ジャンプし、一回転後おばさんの後ろを取る。
太腿に括り付けてきたナイフを素早く抜き取り、おばさんの首に当てた。
「さぁ、ゲームオーバーです。
無駄な抵抗は止めた方が賢いと思いますが。」
「それであたしに勝ったつもりかい。
やっぱり子供だねぇ。」
するとおばさんが、後頭部で頭突きをかましてきた。
そこには髪飾りに見せかけた、短いレイピナーが飾られていた。
でもね、あなたも言ったでしょう?小娘って。
つまり私は子供、言いたくないけど、背は低いのよ。
あなたがいくら頭突きをしても、
あなたの武器はかなり頑張らないと、私には届かないよね。
私はすかさず、レイピナーをおばさんの髪から抜き取る。
右手に短剣、左手にレイピナー。
「困ったわ。
両刀使うのは、まだ慣れていないのよね。
間違って殺してしまったらどうしましょう。」
途端におばさんの顔色が変わった。
「ごめんなさい。」
「な、何を謝る。」
ほら、ケガさせちゃう可能性のが高いから、一応謝っておこうと思って。
「謝るって事は、大人しく投降する訳かい。
そうだね、下に降りたブローたちがすぐお前を捕まえに来る。
酷い目に遭いたく無ければ、大人しくその剣を渡しな。」
「あら、おじさん達でしたら、
多分もう立ち上がれないと思いますわ。
いけない。
けっこう血が出ていたから、早くしないと死んじゃうかも。」
「何を言っているんだ、このアマ!
ブロー、バルト、ぐずぐずしていないで、さっさと上がって来な!」
それは無理だと思う。
だって、二人とも足が明後日の方向に向いていたもの。
おまけに気を失っていたし。
治療しようにも、おばさんを捕まえてからじゃ無いと、出来ないし。
「畜生!
あの子らに何をした!
もしあの子らに何か有ったら、ただじゃおかないからね!」
そう言い捨てて、おばさんが飛び掛かってくる。
だめだって、今の私は両刀、それも左手のレイピナーは使い慣れない武器。
誤って刺したら大変だよ。
でもおばさんは大剣を持っているから、自分の方が有利だと考えたのだろう。
私の言葉を気に掛ける事も無く、剣を思いきり振り下ろす。
おばさん、大剣って重いでしょ?
動きが鈍くなるって知ってる?
対する私の武器は小型。
おばさんの思っている事は間違っているんだよ。
有利なのは私の方。
私はブンッと音を立てて振り下ろされた剣を潜り抜け、
素早くおばさんの効き手に傷をつけた。
「ぎゃあぁぁ…!」
ごめん、レイピナーだったわ。
「な、何をするんだ!人を殺す気かい!」
「そんな気は無いです。
ただあなたの動きを止めたかっただけ。
でも、さっきちゃんと謝ったおいたでしょう?」
「人を馬鹿にするんじゃ無いよ、ガキのくせに!」
「バカに何てしてません。
あなたを敵と認識したから、戦ったんですよ。」
「そんな事はどうでもいい!
は、早く解毒剤を。
早くしないと死ぬ。」
「毒を塗ってあったんですか?
それは大変だ。」
確かにその戦法は有るけれど、
私個人としては、卑怯なやり方だと思う。
「何を呑気にしてるんだい、
あそこの引き出しに入っているから、
早く持ってくるんだ!」
「私を油断させるための嘘かも知れませんよね。
証拠は有るんですか?」
するとおばさんは、大剣を遠くに投げ捨て、
怪我をした手を私に突き出した。
見ると傷口の周りが紫色に変わっている。
これは多分、リコラーダの根でしょうか。
一応猛毒の部類ですね。
痺れ、嘔吐、そしてその紫色はいずれ全身に広がり、
死に至る。
だったけかな。
「何首をひねってるんだい、さっさと持ってくるんだよ!」
おばさん、人に頼みごとをする時は、
ちゃんとお願いしなくちゃいけないんですよ。
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