第14話 休憩地

リヴィンさんのご家族、つまりベルトムート侯爵さん及び

ご家族から使用人の人まで、私は大そう感謝されました。

王女歓迎の宴の間に、一体何が有った!と大騒ぎされましたが、

単に足を治療をしただけです。

まぁ訓練の一環の練習台にさせてもらいました、すいません。

今まで何人もの医者に見せたが、誰一人として治せなかったのに、

こんな小さな子供が短時間で治してしまうとは……と驚かれました。

この国の医者は、どういう方なんでしょうか。

医者と言う定義を変えた方がいいです。

……すいません。

私は医者では有りませんでした。


「ジュエリさん、もし宜しければ

このまま我が家に留まっていただけないだろうか。」


そう侯爵様にお誘いを受けたけど、

当然却下です……ね。

隊長が物凄い形相で断っています。


「ねぇお姉さま、これは私の意志は関係ないのでしょうか。」


「そうねぇ、あなたの気持ちが一番尊重される筈だけど、

この様子では多分無理ね。」


ルビーお姉さまが隊長を見ながらそう言う。

まあここにいる全員が成り行きを注目していて、

ほぼ全ての人がそう思ってるんじゃないかな。


「それに私達もエリーちゃんが隊からいなくなると、とても寂しいわ。

でも、エリーちゃんはどう思っているの?

ここに再就職したい?

もしそうならば、私達は反対はしないけど。」


エリーちゃんがここに残るなんて爆弾宣言をかましたら、

隊長の出方が見ものだろうな。

クスッと笑いながら、お姉様は呟く。

でも、私にはその気は有りませんよ。

こんなにやりがいのある職業はほかに有りません。

メイドは天職と思っていますから。


取り合えずベルトムート侯爵は私の勧誘は諦めてくれたようで、

私達の出立の時、大した物が用意できませんでしたが。

そう言いながらも、沢山のお土産と、

どうぞお役立て下さいと、一つの袋を差し出した。


「やったわねエリーちゃん。」


お姉様がとても楽しそうだ。

どうやらその中身は金貨のようです。


「多分手数料を引いた残りは、エリーちゃんの臨時収入になると思うわよ。」


そう教えて貰ったけど、手数料がいくらになるか分からないから、

ぬか喜びにならないよう、期待するのは止めよう。




さて今日も今日とて、私は馬車の中で王女様の着せ替え人形になっております。

今日のチョイスは、薄い水色のフリルたっぷりのドレス。

いつの間にか魔法でふわふわに整えられた私の黒髪には、

花が無数に飾られています。

すぐに萎れる生花がいつまでも綺麗なのは、

きっとこれにも魔法が掛けられているんでしょう。

何と無駄な魔力の大盤振る舞い。

私なんかを着飾って何が楽しいのでしょう。


「ん~~エリーちゃん可愛い!何て愛らしいの!」


王女様がギュウギュウと私を拘束します。

分かりましたから、一応そう言う事にしますから、

その腕の力を抜いて下さい、お願いします。



やがて馬車は本日一か所目の休憩地に着きました。

にぎやかな広場に面した貴族の屋敷です。

きらびやかな内装と家具、掃除も行き届いているみたいですね。

でも私の趣味では有りません。

私はもう少し素朴で、自分が気に入った物が有れば十分です。

うさぴょんとかね。


王女様や隊長さん達は、もてなされる為に中に通されました。。

その間私達は待機です。

私は広い庭の一画に次陣取りました。

人が行きかう広場に面した柵沿いです。


「いいなー、楽しそうだなー。」


つい興味がわき、広場をじっと眺めます。

すると広場の端っこにスイーツの店が有るのを見止めました。


「スイーツ……。」


いや、自分も持っていますよ。

お気に入りのお菓子を収納に入れてあります。

でも、ご当地ならではの物ってあるじゃないですか。

珍しくて美味しいって物かもしれないでしょ?


「確かここでの滞在は30分強、

あそこまでダッシュして帰ってくれば、皆で食べる時間は十分あるわ。」


そう思って私はさっそくここを抜け出す事にした。



「おばさん、ここにあるお菓子、全部3つづつ包んで下さい。」


出店には色とりどりのマカロンが、たくさん並んでいた。

みんな美味しそうで、とてもじゃないけど選べない。


「まあそんなに、お嬢様お腹を壊さないようにしてくださいね。」


お嬢様?

わぁお、私はお人形姿のまま、ここまで突っ走ってきたんですね。

これは何ともはしたない。

それでも私は代金を払った財布と共に、

収納に沢山のマカロンをしまい込んだ。


「お姉さま達、喜んでくれるかなぁ。」


そう思いながら、スキップしながら、ルンルンと屋敷へ戻る。

と、突然大きな手が私の行く手を阻んだ。


「大人しくしろ、さもなくばぶっ殺すぞ。」


どすのきいた低い声が、私をそう脅す。

えっと、武器は携帯しているし、反撃しても大丈夫だと思うけど、

ここには人が多すぎる。

町の人を巻き込むわけにはいかない。

お茶のお礼に、この町のごみを一つ片付けてもいいですよね。

タイムリミットは20分。

うん、何とかなるかな。


私はその男に言うがままに付いて行く事にした。

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