第10話 迷子 1

さて、隊長達は宴会です。

だからと言って私達は暇では有りません。

ミーティングをするべく私達に用意されたホールに急ぎます。

貴重品などは各々持っていますので、盗みの心配は有りませんが、

取り合えず部屋にはトラップを掛けておきましょう。



「お待たせしました。」


部屋に着くと、全てのお姉さま達が揃っていた。

今回の護衛任務は、精鋭部隊は約80名。

その他に下っ端の兵隊の方々もおりますが、

その方達には特殊部隊は付きませんので、

何やかやで今回私達編成チームは、訓練司令官さんを含め28人の出動です。


「エリーちゃん遅い。

何か有ったの?」


優雅にお茶を傾けながら、ステファニーお姉さまが仰います。


「すいません。

隊長達のお支度に手間取ってしまって。」


私はもっと手早くやらなければならないと反省するが、

お姉様は、悟ったように溜息をついた。


「いい、エリーちゃん。

駄々をこねる子には、ゲンコツの一つもあげておけばいいの。」


えっ、隊長達を殴ってもいいの?

そりゃぁ出来ない事も無いけど、それって不敬に当たるよね。


「そうされたって、怒るような器の人なんて騎士の中にはいませんよ。」


そう育てましたからね。とお姉さまが満足そうに微笑んだ。

凄いです、さすがお姉さま。


「さて全員揃ったので、明日の説明をしておきましょう。

明日はフロスト街道 別名2831号線を進みます。

道は比較的平坦なので、そう苦労は無いでしょう。

ただ一か所だけ、見通しの悪い所がありますので、気を引き締める様に。」


はい。


「エリー、引き続きユーフェミア様から、

お世話係にあなたの指名がありましたがよろしいですか?」


「それって命令では無いのですか?

お断りする事も出来るのでしょうか。」


「できますとも。

私達の判断にも寄りますが、大体は個人の判断を優先します。

いくら偉い方でも、聞き分けの無い子には鉄槌を…よ。

ですが、それだからこそ、私達は最善を考え、

自分の意見、行動に責任を持たねばなりません。

よく覚えておいてね。」


そんな事をしたら反逆罪で、下手すりゃ打ち首かと思っていたけど、

そうじゃ無いんだ。

意外と上の人も優しいのね。



自分の意見に責任をか……。

出来れば他の人に変わってほしいけれど、

そうなると変わってもらった人に迷惑が掛かるかも知れないな。


「大丈夫です。

王女様の身、明日も命に代えてお守りします。」


「いい心構えです。

任せました。

でも、辛くなったらいつでも言うのですよ。」


ありがとうございます。

このエリー、明日も頑張って王女様のおもちゃとなりましょう。


「では、次です。」


明日の休憩地、その地理や環境。

美味しいお菓子のお店。

最近人気の有る小物屋さんなど、色々な情報も提供されました。

楽しみだけど、そんな事を聞いても、行ける時間など有るのでしょうか。


「臨機応変よ。

仲間内で相談しておいて、隊員の見張りをちょっと共有して、

その間に手を開けた人が走ればいいの。」


「と言う事は、このぺペロのバームクーヘンも手に入れることが出来るんですか!?」


「あら、エリーちゃんはそれが欲しいの?

明日の当番は私だから、買ってきてあげるわね。

幾つほしいのかしら。」


「えっ、本当ですか?」


馬車の中で皆で食べる分と、隊長さん達の分と、私用にも欲しいし…。


「あの…、10個って可能ですか?」


そんなに沢山大丈夫かな。

当然お姉様には他のお使いも有るだろうし…。


「あら、それだけでいいの?

私は自分の分だけで20個は確保するわよ、

収納に入れておけば日持ちするから。

多分明日はありったけ買い占める事になりそうね。」


なんと、在庫が有る事を期待します。


その場で今日の夕食を取り、隊長達が帰る前に部屋に戻ります。

そうしないと、トラップに隊長達が掛かってしまいますからね。


他に欲しい物があったなら、明日の朝までに言ってね。

お姉様にそう言われました。

欲しい物は沢山ありますが、

ここの名産品のガラス細工などは、やはり自分の目で選びたいし、

やはりぺペロのミックスキャンディーでしょうか。

でも、無理に買わなくてもいいのよね。

などと思っていると、いつの間にか知らぬ間に見覚えのない廊下を歩いていました。

目の前には明らかに他と違った扉が有ります。

両開きの大きな扉。

どうやら魔道具で特定の人を感知し、開く仕組みになっているようです。


「ほわ~、立派な扉だなぁ。

と、いけない。早く部屋に帰らなきゃ。」


ここは外を見る限り1階の様だし、隊長達の部屋は確か2階だったよね。

階段はどこかな。

そう思っていると、中から声がしました。

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