第6話 悪魔の雌豹軍団。
「隊長、新しいパンツです。」
そう言って買って来た下着類を隊長に渡した。
いつまで膨れていても時間は有限です。
やらなければならない事は、まだ残っています。
お姉さま曰く、大人は都合の悪い事は、
すぐに忘れなければいけないそうです。
それが人付き合いを円滑にする方法だそうです。
「許してくれるのかエリ―。」
「一体何の事でしょう。」
そう言って私はにっこり笑ったのに、
隊長はさらに肩を落とした。
私は言い方を失敗したのでしょうか。
その後エルガーお姉さま隊長の所に行き、任務内容の確認をします。
結局、今回の遠征の目的は、
我が国の王女、ユーフェミア様に依る隣国への視察だそうです。
と言う表向きの理由の裏は、王子様とのお見合いのようです。
隊長達は王女様の護衛です。
しかしその命令の裏は、王の我儘。
我が国のかっこいい騎士団を見せびらかすのが目的らしいです。
かっこいい騎士を見せびらかす=いつもカッコ良くしなければいけない。
頑張って下さい皆さん、ご愁傷さまです。
「お見合いって、第一王子様ですか?第二王子様ですか?」
「それが第一王子のトラバス様なんですって。大変よねぇ~。」
まあ、ご結婚となったら大変だろうな。
あちらの王子様が。
何せうちの王女様って一部の人には、はっちゃけ王女で知られてるから。
王女様は馬に乗る。それも嬉々として。
乗馬服を着て、馬に跨り疾風のごとく駆けまわる。
趣味は鍛冶。
ナイフから矢じり、大きな剣を打っているのも見たな。
当然、その具合を確かめるのも大好きだ。
時々、うちの訓練施設にも顔を出して、自分の作った物の切れ味を試しているけど、
その時、王女様が私達の格闘術を真剣に見ていた覚えがある。
趣味がまた一つ増えなければいいのだけれど。
とにかく頭はとても切れるし、猫を被るのも得意。
きっと旦那様になる人は、コロコロと丸め込まれてしまうだろう。
「今回の事はあなたの来る前から決まっていたので、宿泊に関しては
近隣の屋敷にお邪魔する手はずが済んでいます。
野営などほとんど無いから、いつもよりかなり快適な旅よ。
と言ってもエリーちゃんにとっては、初めての経験ね。」
「はい、とても楽しみです。
それなのに隊長達ったら、まったくも~~。」
「まあ許してあげなさい。
悪気は無かったんだから。」
そう言ってお姉さま隊長は笑うけど、
私に取っては悪意にしか感じられません。
次の日集合した隊長達や他の騎士たちは、
メチャクチャかっこいい隊服を着込んでいます。
この姿には、日頃お世話をしながらも、こけ落としていた我が部隊員も、
やられてしまいますね。
皆さん凄ぉくカッコいいです。
とても、いつも髪の毛をボリボリと掻いて大欠伸をしていたり、
お姉さま達に叱られて、シュンとしていたり、
隣の席の人と、ポテトフライの取り合いをしている人の様には見えません。
さて、出立の時間です。
隊長達は、ご自分の愛馬に跨っています。
用意した一番大きくて立派な馬車にはユーフェミア様が乗られます。
本当は馬で行きたがったのですが、それはどうぞご勘弁をと拝み倒されました。
残りの馬車にはお姉さま達が4人づつ乗ります。
いつもは専用の幌馬車で、まるで遠足の様に行きますが、
今回は特別だそうです。
「さすがお見合いよね、国王も見栄張っちゃって。」
専用の幌馬車は、天気のいい日は幌無しで走るそうです。
なぜかって?
襲撃などが有った場合、間髪入れずにお世話しに飛び出せるようにです。
今回は目的がお見合いですが、
それでも何か有った場合、
馬車には、すぐに知らせが入る魔道具が付いています。
準備は万端です。
私達も馬に乗れますが、あえてそれはしません。
ただのメイドと思われれば、相手も油断するでしょうし、
お仕着せのメイド服の方が、武器を隠し持つのに適しているからです。
でも最近私達の事が巷でも噂されているようです。
”悪魔の雌豹軍団”と。
そのネーミング、酷くありませんか?
みんな年頃の女の子なんですよぅ。
もう少しかわいいのがいいです。
まあ名前の事はお姉さま達と後でゆっくり考えて、
町にふれ回りましょう。
「出発!」
隊長の号令の下、隊列は動き出しました。
でも、どうしてなんですか?
私の乗る馬車は、お姉さま達と一緒ではなく、
なぜ一番豪華な馬車に、王女様と一緒に乗っているのでしょうか。
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