第7話 取り合い
私がこの馬車に乗るのは、やはり私が新米のせい……。
いえ、違いました。王女様のご指名だそうです。
「だってエリーちゃんって可愛いんだもの。」
さいですか。
「だって、私って男兄弟ばかりじゃない?
だから妹が欲しいのよ。
だからね、ユリシーズ・マッカーティにお願いしたの。
エリーちゃんを頂戴って。
即答で断られちゃったけどね。」
隊長がお断りになったんですか。
私はちょっと嬉しくなったけど、
「小さすぎて、私に預けるにはまだ早いって。
そんな事無いわよね。
エリーちゃん、先輩達に負けないぐらい強いのに。」
くっそ~、隊長はまだ私を子ども扱いするんだな。
でも、やはりユーフェミア様は、
あの時の訓練をご覧になっていたんですね。
でも良かった~、隊長が断ってくれて。
もし私が王女様の担当になっていたなら、
妹扱いで私に仕事が来なくなるどころじゃ有りません。
そりゃぁ王女様はある程度でしたらご自分を守る事は出来るでしょうが、
でも、実戦は無理でしょう。
例え妹ポジションと言えど、
そのはっちゃけを追いかけ回り、
護衛しながら自分の身も守らなければならないなんて、
とても大変な仕事になると思います。
無理です、もしやらなければならないなら、私が3人ほど必要です。
「でも、エリーちゃんが来たいって言えば、
ユリシーズはきっと断らないと思うのよ。
ね、エリーちゃんはいい子だからお願いできるわよね?」
王女様のお願いなら、断りたくないけど、
でもまだ私は隊長が言うようにまだヒヨッコです。
「ごめんなさい!
まだ私には王女様付きは無理です。
隊長達の世話で手一杯なんです。」
「そっ……か。
そうよね~、あの隊長達って手が掛かりそうだものね。
でも、もしヒヨッコさんが飛べるようになったら、私の所に来てくれる?」
「でも、その頃でしたら私、妹なんて可愛げなんて無くなりますよ。」
「そんな事無いわ。
エリーちゃんはいつまで経ってもエリーちゃんだもの。」
そりゃぁ私はいつまで経っても、たとえババァになっても私ですけど。
でも、配属先がいつかは王女様付きに決定ですか?
下手すりゃあ、隣国に移住決定ですか?
要思案ですね。
私は馬車の中では、王女様の話し相手になったり、
おもちゃになったりして、王女様が退屈しないようにお相手しました。
さすがに今お付きになっている、エルマ大先輩にはこんな事出来ませんものね。
私は今、動く着せ替え人形化しています。
「エリーちゃんが私の馬車に乗ってくれるって聞いたから、
私の小さい頃の物を色々持ってきたのよ。」
例え暇つぶしの相手となろうと、
王女様が満足して下さるなら、思い残す事は有りません。
「やっぱりこの若草色のドレスっていいわね。
私のお気に入りだったのよ。
買って来たフリルたっぷりのエプロンを着けて、
これに、今流行りのこの花飾りを付けて、
ほら、すっごくステキ。」
確かに綺麗でしょうけど、
王女様にはとてもお似合いだったでしょうが、
私には無理です。
こんな地味顔に似合う筈が有りません。
ところで王女様、小さい頃の物を持ってきたと仰っしゃっていたけど、
このエプロンとかは買い求めたんですか?
確かに王女様はエプロンはお持ちでは無いでしょうが、
買われたんですか……わざわざ…。
これ以上私用の物が出てこない事を祈ります。
休憩地では私は王女様に手を引かれて、馬車の外を歩きましたが、
皆さん微笑ましく見てくれました。
どうやら王女様は、人形と化した私を見せびらかしたらしいです。
隊長が私達に気が付き、足早にこちらにやって来ました。
「エリー、良く似合う。
とってもかわいいぞ。」
そう言ってニコニコ笑い、私の頭を撫で繰り回す。
むぅ~っ。また子供扱いですか。
「ねえ、ユリシーズ。
やっぱりエリーちゃんを私にちょうだい。
大事にするから。」
「特殊部隊を大事にしてどうするつもりです。
彼女達は、使える者を守って何ぼです。
守られる方では有りません。」
ほうっ、隊長がそれを言いますか。
「なら、特殊部隊員として依頼します。
彼女を私の傍付きにしなさい。」
「それは了承できかねますね。
私は言いました。
エリーは入隊したてで、まだまだ訓練が完了しておりません。
ユーフェミア様をお守りできるには、
そうですね、あと20年ほど必要でしょうか。」
隊長それは酷いです。
つまり私はそれほど手が掛かると言う意味ですか。
「それは無いでしょう。
もしそれが事実なら、訓練司令官が能無しと言う意味ですね。」
「いえ、彼女はとても優秀です。」
「それなら、エリーちゃんが悪いとでも言うの?
それは無いわよね~エリーちゃん。
あなたはとても強いし、お利巧ですもの。」
誰かお願いしますぅ~。
二人を止めて下さい―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます