第5話 お小言

「副隊長、新しい下着類です。

収納をお願いします。

それと、荷物の最終確認は必要ですか。」


「いや、大丈夫だ。

再確認もしてある。

そうだ、古い下着を除いておくか。」


そうですね。その方がよろしいでしょう。

じゃなきゃ、男の人って平気で有る物を適当に着ちゃうんでしょ?


それと、私はインベントリから本を数冊取り出す。


「副隊長、

店員さんから、既に副隊長は新作のパズルを購入済みと聞きましたので、

新しいタイプのパズルを求めてきました。

これはナンバープレイスと言う数字パズルだそうです。

やり方は初心者用の一番前に乗っていますが、

副隊長にはきっと必要ないかもしれません。」


3×3枡。それが縦横3個づつ。

合計9×9枡。それに数字がランダムに入っているパズル。

取り合えず初心者用1冊と、最上級者向け5冊。

後、そのパズルを20個も組み合わせている、とてつもないパズル表を2枚。

今日入荷した最新のパズルと言う触れ込みです。

帰るまでの暇つぶしになればいいのですけど。


「ほうっ、なるほど。」


「副隊長、それは今解く為の物じゃ無いです。

今日やるなら返して下さい。」


まあまあと言って、副隊長がそれを見たまま椅子に向かう。

はぁ~、明日渡すべきだったか。

それから強引に荷物をチェックして、任務完了。

注:副隊長の分


「あの…、エリー。

俺のは…。」


隊長はおずおずと私に話しかけてくる。


「隊長にはやはり私は必要ないようですね。

前回の事と言い、今回の事と言い、私に仕事をさせたく無いみたいなので。」


「それを言うならギルだって……。」


そりゃ、ツーカーの仲のお二人ならば、何でも言い合えるでしょうから、

副隊長は今回の件を隊長に反論できたはずです。

でも反論しなかったんですよね。同意したんですよね。つまり同罪です。

でもダメです。

今日教わりました。

罰をいかに効率的に身に染ませるには、

二人より一人のがいいそうです。

二人だと連帯感が出来き、一人の時より、罪悪感が薄まるそうです。

私にも覚えがありますから、納得です。

副隊長には、後日ゆっくりと味わっていただきましょう。


「隊長。

ギルバート様は副隊長です。

立場的にあなたに逆らう事は出来ませんけど。」


「こいつはそんなに可愛い玉じゃないぞ。」


まあ、そうだとは思いますけど。


「では、今回の事を言い出したのは、副隊長なんですか?

では私は副隊長を責めればいいのですか?」


「いや……。そうでは無いが。」


「それでは責任は隊長に有る、で宜しいですか。」


「ああ…。」


と言う事で、今回責めるのは隊長一人と言う言質を取りました。


「では隊長、今回の遠征の件、なぜ私に何も言わなかったのですか。」


「いや、それはだな、あのそれだ。」


隊長は一生懸命言い訳を考えているようです。


「私自身の支度も全然しておりませんので、時間が無いんです。

弁解が有るなら、早くしていただけませんか。」


「えっっ!」


何ですか、その今気が付いた感は。

隊長は自分の分だけ用意をすればいいと思っていたんですか?

隊長達のお世話をする私達も一緒に行動するのが当たり前です

当然私達も行くのは知っていましたよね。

私達はその為に戦闘訓練も受けているんですから。


「ダメだ!エリーは留守番だろう?」


「なぜですか。

訓練指導官さんも、お姉さま達も、私は行くと決定済みなのに、

どうして隊長だけそんな事を言うんですか。

どうして私だけを連れて行ってくれないんですか。

私の成長を阻害するなんて、隊長は私の事を嫌いなんですか?」


「そんな、俺がエリーの事を嫌いなんてあり得ないよ。

なぜそんな事を言うんだ。」


そんな悲しそうな顔をしてもだめです。

いつまでも庇っていただいたら、私はいつまで経ってもこのままじゃ無いですか。


「言いますよ。

私のやる事を邪魔ばかりして、訓練やお仕事に口を出して。

私には訓練司令官さんや、お姉さま達が付いていますから、

たとえ失敗しても、大事になどなりません。

大丈夫です。」


すると横から、副隊長が小声で、


「そこに隊長も付いてるって言ってやると、奴は喜ぶぞ。」


そう言いますが、そんな事などしませんよ。

つけ上がらせるばかりです。

だから副隊長、その発言は無視させていただきますね。


「おかげで私は何一つ自分の支度をしてないんですよ。

今から出発までに全てしなければならないんです。」


嘘です、支度などすぐにできます。

服だろうが、食料だろうが、かき集めて、

インベントリに放り込むだけですから。


「そう言えば今回の情報も、何も受け取っていませんでした。

お姉さまに説明を受けに行かなければなりませんね。

こんな忙しい時に、お姉さまにまでご迷惑をかけてしまいます。

いいですか、隊長の我儘で迷惑をする人がいるんですよ。

分かっているんですか。

またうさぴょんを連れて来ましょうか?」


「い…、いや、あれはエリーにあげたものだ。

エリーの部屋に置いてやってくれ。」


かなりこたえたのでしょうか。

シュンとした隊長がそう言いました。


「隊長、ほうれん草が大事なんですよ。」


何故ほうれん草が大事なのか分かりませんが、

こんな時お姉さま達は、よく私に言います。

きっと、ほうれん草を始めとするお野菜を食べれば、

体調のバランスも良くなり、頭にもいい影響が有るのでしょう。


「分かった、エリーにはもう隠し事もしない。

報告も連絡も、相談事もする。

だからうさぴょんは連れて来ないでくれ。」


どうやらお説教は完了のようです。

でも、ほうれん草が報告、連絡、相談の事だと、

初めて知りました。

棚ぼたでしたね。

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