第4話 伝えられなかった命令
最近何やら城内が慌しいような気がします。
出入りの業者がいつもより多く出入りしているし、
荷物を抱えたお姉さま達が、おしとやかを装って、
実はバタバタと廊下を行き来しています。
それと馬や馬車の数が、城内に異様に多く集まっている気がします。
それに、明日から特殊部隊の訓練も、しばらく休みと言い渡されました。
絶対におかしいです。
私に内緒で皆さん何か企んでいるんでしょうか?
まあ、そんな筈は無いでしょうけど。
仕方が有りません、聞くは一時の恥じ、聞かぬは一生の恥と言います。
知らないまま、何かが有ったら大変です。
「ルビーお姉さま、皆さんどうかなさったんでしょうか。
とても忙しそうですけど。」
するとお姉さまは、キョトンとしたような顔で私を見つめます。
「えっと、いつも通りだと思うけれど、どうかしたの?」
一時の恥じです。
「だって、皆さんとても忙しそうだし、明日から訓練もお休みだって……。」
ルビーお姉さまは暫く考えた後、怪訝そうな顔をして私を見た。
「エリーちゃん、もしかして知らなかった?
そんな訳…、いえ、有り得るわね。
何せ、この事が決まって通達が行き渡る頃に、
エリーちゃんは入隊して来たんだものね。」
「何かが決まっていたんですか?」
近々有るのは、……2か月後の陛下の誕生日?
でも、パーティーの準備には早すぎるわよね。
他は、タニアお姉さまの結婚式。
は、3か月後だし。
いいわよね~担当する騎士様とラブラブになってのお嫁入。
でも、今の任務を蹴ってまで、退役する利が有るのかしら。
他に何か有ったかな。
「エリーちゃん、本当に何も聞いていなかったの?
誰もあなたに伝えていなかったのかしら。
これは困ったわね。」
やっぱり近々何か有るらしい。
しかし一体何が…。
「えっと…。
エリーちゃん、明日王女様のお付きで、
我々のお世話する第一騎士団が、ゴウバントルにお出かけするのよ。」
何ですと?
「だから今は、その用意の最終確認で皆忙しいのよ。
私は、エリーちゃんはもう用意が整っているのかと思っていたわ。」
「初耳です。」
「その様ね、困ったわ。
他の人も訓練の合間に支度をしていたから、きっと一杯一杯だと思うの。
でも、今から支度をするとなると、やり切れないわよね。
どうしましょう。
何とか誰かに手を開けて、手伝ってもらって……。」
「いいえ、お姉さま。
今回の遠征で何か必要な特別なものは有りますか?
例えば、WCb58型遠方弾とか、ガリオンとか。」
全て魔力で発動する機械式の武器だが、
魔力のみでの攻撃より、よっぽど効率がいい。
「いいえ、そこまでは必要じゃ無いわ。
しいて言えば、礼服型の騎士団の制服や、磨き上げた勲章かしら。
あちらへのお土産は、訓練指揮官様レベルの方が用意してくれているし、
エリーちゃんがしなくてはならないのは、隊長達のお支度位ね。」
一番厄介じゃないか。
取り合えず今回の隊長達の任務は、戦闘ではないようですね。
それ以外の支度は、いつも通りでいいのかな。
それなら多分すぐに済むだろう。
何せ隊長達の事。
私の負担を考えて、既にある程度用意を終えている。
だからこそ、私の耳に情報が入ってこなっかった……。
まったくもうっ!
でも、セボンから、マドレーヌを取り寄せる時間はあるだろうか。
あれが有るだけで隊長のやる気が違ってきますからね。
後は副隊長用に、トリスタンのパズルセットの新作ですか。
取り寄せる暇など無いから、買いに行かなくては。
今から間に合うかな。まさかもう購入済みでは無いでしょうね。
ア~~厄介だ。
とにかくすぐに行動を起こさなければ。
「ありがとうございましたお姉さま。
おかげでいらぬ恥を掻か無いで済みました。
私もすぐに用意に取り掛かります。」
チョコンとお辞儀をして、外に続く扉に向かった。
魔通信で、隊長達に準備の様子を確認した。
会議中だったらしいけど、かなり詳しく準備状況を教えてくれた。
やはり不足している物が有ったわ。
「仕方が有りません、足を延ばして買い求めて来ましょう。」
ふっと息を付き、店へ向かった。
どこの店かですって?
当然下着屋です。
この度は礼服の隊服を着用です。
当然下着もそれに相応しい物を着用するのが礼儀です。
でも多分隊長達は、そんな物どうせ見えないんだから
今着けているもので十分だろうと思っている筈です。
とんでも有りません。
そんな物を着用させたのであるなら、
特殊部隊の名折れです。
旅程中必要な枚数を用意しなければ。
そう言えば、今回の行き先や、日程を聞いておりませんでした………。
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