夜の風をそのまま文体にしたような、日常的な物語でありながらどことなく幻想を見ているような感覚がとても素敵な作品です。
女性同士の関係つまり百合ですがそれに加えて主人公が成長してく物語でもあると思います。
あらゆる物語は成長小説なのでこの選択は間違っていないのかなと。
主人公のモモもストレスに曝されている一人の人間として描かれ、アイドルを偶像として捉えることにはなっていません。
可愛い美少女として書くことは可能ですが、それをしないのは中々難しいことのように思えます。
可愛さというものは普遍的ではなく変わっていくものです。
モモもそのことに気が付ける日が来るでしょう。
だからこそ彼女は自分を大切にしたいと思っているはずなので。
アルコールやナギさんの力を借りてストレスを吐き出し、思い悩む姿は誰にでもあるものでこの主人公を共感できる存在にしているのです。
アイドルはある意味、神様とも云えるかもしれません。
どう足掻いても彼女の行動や選択は誰かに影響を与える。
でもそれは悪い方向にも良い方向にも転がるのです。
そんな彼女が唯一心を許せる相手がナギさんですがある秘密を抱えています。
その秘密を持ってモモと接するのは少し苦しいことでしょう。
しかし神様であるモモを救うことが出来るのは一体誰なのでしょうか。
その問いはラストに至ることでより大きな叫び声を上げます。
5センチが隔てる関係は5センチが創る関係でもあるのです。
この作品は女性同士の関係を扱ったものですが何よりも美しいと思いました。
恋愛を見ているというよりはきれいな音楽を聞いているような感覚。
それは二人の未来を暗示しているかのようです。
恋愛が好きな方はもちろん、そうでない方も読んでみてはどうでしょうか。