問いと願い

「キミは死ぬ事が怖くないのかい?」

 これはある青年へ過去にボクが問いかけたこと。


「もちろん死ぬのは怖いです」と彼は言った。


 怖いと思うのはやはり皆そうなんだろう。だけど彼の場合は少し違うのかもしれない。


 心臓だけが緩やかに衰弱していき、最後には完全に止まってしまう不治の病。そんな病に侵され、今はこの病棟で治療法という名の実験を受けている。


 彼には教えたけど、かつてはボクも同じようにずっと死に直面してきた。とはいえボクの場合は先天性で治療法があったけれど。それでも発作を起こす度にこのまま死んでしまうかもしれないと思った事を良く覚えている。

 そんな日々で先生や看護師さんが沢山お話してくれたし、ボクの病気を治すためにずっと寄り添ってくれていた。そんな姿にボクはとても憧れていた。

 だから、看護師になるとボクは決めたし、勉強して資格もちゃんと取った。

 でも今勤めている病棟が行ってる生体兵器を生み出すための人体実験は許されることではないとは解っているんだ。だけどボク含む医者や看護師は病棟に逆らう術はない。


 …ボクはどうすれば、患者を生体兵器にせずに救えるだろう。人を救いたいと願うだけでは何も解決しないのは解っている。

でもどうすればいいのだろう?


その答えを模索する日々は続く。



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