第2話 眩暈

 去年、断薬してた薬の服用の決意をした。

統合失調症の薬というのは副作用がある。頭も多少ぼーっとしてドーパミンが抑えられてるせいか鬱っぽっさも出るし、何より“太る”のが辛かった。

友達も少なく恋人もいないわたしは、甘いもの、食べ物を食べることが一番の相棒。仕事終わりや休日のちょっとした間においしいものを注文して、購入して手に取って食べる、あの瞬間が、し・あ・わ・せ。

元々、普通体系よりすこしぽっちゃりであったが、薬を飲むとちょっと食べただけで太る。おしゃれもしたい、綺麗だと言われたいそんな盛りのわたしにどうして信用もできなくなったお薬を口にできるのだろうか。

他の種類の薬もあり種類ごとに同じ統合失調症の治療薬であっても効き方も副作用も違う。グレープフルーツジュースは飲んではいけないという注意書きの薬を飲んだら鬱になって日常生活に支障を感じたのでやめ、新しい方の薬だと処方された薬は夜中にうわっと目が覚めて脳が覚醒しそのあと眠れないので服用をやめた。どれも合わないので結局一番肥満になりやすく糖尿病にも注意が必要な薬が体と心に合っていた。


 高校は通信制で卒業、だけど、通信制の大学は卒業できなかったわたしは、フリーターにしかなれなかった。

求人は接客や飲食品関係の製造の仕事が多く、1年と数か月前の秋から年末にかけて働いた短期の食品製造の仕事も楽しかった。

綺麗な食材用の容器がベルトゴンベアで流れてお洒落でおいしそうな食材を優しく載せて盛り付けする…。そのような仕事ができて社会に受け入れられている喜びを十分に感じれたはずだ。他にも単発の派遣で十分お金を稼げた。様々な企業の求人があり、単調な作業なのに夏は高自給なこともあり働いて生きる幸せを与えてくれていた。

だけど統合失調症の陽性症状は被害妄想をつくりそしていつもイライラとし人間関係を悪くさせ、働き辛くした。こんなにわたしという存在を是正できそうな仕事場があるのに、それを続けることができない、それは、はらわたが捩れるような苦しみだった。


 薬を再び服用しようとしたのは、生きることについて真剣に考えたからだ。自分の幸せがほしくて薬をやめ、そして生きるために必要に迫られてまた服用を始めた。


そして、自分は一般雇用は無理だと悟り、就労移行支援事業所を頼ることに決めた。何回かメールでお問い合わせをし、そして迷いが消え通所することになった。

現実を受け入れるのが難しいわたしは頭がぼーっとし、だけど就労移行支援事業所の穏やかで温かい雰囲気に癒された。就労移行支援事業所ではパソコンの勉強などをし、利用者と一緒にグループワークも楽しんだ。

(わたしを受け入れてくれる場所がある。)

わたしは少し春めいたウキウキした気持ちになった。

そして先の不安もいくらか消えて家でのんきに古いゲーム機を出してきて通所しない日は遊んでみた。今も思い返せば何か温かいものに守られ遊んでられた幸せな時間だった。

そうして数か月たち、わたしは就職が決まった。

研修も2か月行いそうして本就職となった。

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