終わり
第47話 つながる歌
私は今日死ぬだろう。
春樹と別れて病室に戻った途端、また身体が重くなり、いつもより酷く、そのまま意識を失った。
気がつくと私は酸素マスクがされており、横には両親と先生と、数人の看護師、そして、結衣と康太と春樹がいた。
「春ちゃん!!僕のことわかる?」
「せん…せぇ……。」
「春!!しっかりしろ!!」
春樹の慌てている顔が見える。
「はる…き…。ごめ…ね。」
隣にある機械から規則正しく、ただ少しずつゆっくりになっていく音が聞こえた。
「春!まだダメだ!まだ!ほら、これ、書くんだろ?なぁ春!!」
「ごめん……。しあ…わ、せに…なっ…て…。」
私の意識は少しずつ遠くに…
春樹が泣いているのが見える。
お父さんとお母さんが泣いているのが見える。
結衣と康太が泣いているのが見える。
幸せだった私の17年間。
走馬灯のようなものが頭をよぎっていた時、歌が聞こえた気がした。
「ノータイトル……。ありが、と、う……。」
ちゃんと届いたよ。
私はそのまま17年の生を終えた。
2月18日、午前3時28分。三嶋 春。17歳。
──歌がみんなに届いてますように。
10年後──
「ねぇお父さん!あの歌歌って!」
「わかったよ。」
桜が満開に咲き誇った道。
手を繋ぎ歩く家族。
ふと足を止める。
「春。春の歌は私達が覚えてるからね。」
「仁美、行くぞ。」
「えぇ、春樹くん。」
「あ、お父さんとお母さん手繋いでる!桜も繋ぎたい!!」
風が桜を撫でるように吹いた時、あの時のような桜吹雪が目の前に浮かぶ。
「仁美ちゃん!春樹!こっちだよ!もう先に花見やってるよー!」
「結衣ちゃん!ごめんねー!春樹くんってば寝坊したくせに準備するの遅くって。」
「桜ちゃん!遊ぼう!」
「春美ちゃん!あっちに行こう!」
「あんまり遠くに行くなよー!」
「康太くん、大丈夫よ。見えるとこにいるんだから。」
「女の子だぜ?誘拐でもされたらって気が気じゃないんだよ。」
「過保護だな。」
「うっせー。お前もだろうが春樹。」
「桜は世界一可愛いからな。」
「ほらほら、娘自慢大会は後にして、はい。お酒持って。」
「みんな来れてよかったね。仁美ちゃんも増えて春ちゃんも喜んでるよ。」
「まさか、私が春樹くんと結婚するなんて春も思ってなかっただろうなー。春、春樹くんは私が幸せにするから、見守っててくださいねー。」
「大丈夫。俺は十分幸せだ。」
「はーい、じゃあ酒をもてー!カンパーイ!」
「お前が仕切るのか。康太。」
「はい飲んだ飲んだ!春樹はあれ持ってきたか?」
「あぁ。」
「じゃあ早速歌いますかぁ!」
届いてますよ。みんなの思い。
ありがとう。繋げてくれて、ありがとう。
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