第45話 誕生日

私たち4人は誕生日が2月の後半に連続で来る。

16日に結衣、17日に春樹、18日に康太、19日が私だ。


だから誕生日を祝う時は17か18に一気に祝っていた。

今年は18日に祝うことにしていた。


結衣の合格発表もこの日である。

受かっていたらお祝いも兼ねて、落ちていたら慰め会をしようと思っていた。


16日の朝。

目が覚めると真っ先に結衣に電話をかけると、すぐに出てくれた。


「おはよう。結衣。誕生日おめでとう。」


「おはよう春ちゃん!ありがとう!!身体は大丈夫?今日学校が終わったらそっち行くからね!」


「うん。待ってる。」


結衣は学校に行ってくると楽しそうにしながら電話を切った。


何もすることがなく暇になり何となく動画を開く。

すると、1番上の人気急上昇1位のところに私たちの動画があった。


コメントが沢山あり日に日に増えているようだった。


何となく読んでみようと表示すると、


歌が上手い!


というコメントがほとんどで、嬉しかった。

コメントをどんどん下にやって行くととあるコメントが目に止まった。


この人たちの楽しそうに歌っている曲が1番好き!


これを見た瞬間、私の曲は永遠に私のものだと、欲が出た。


誰にも渡せない。この曲を歌うのは私じゃなきゃダメなんだと。


この間の桜木先生の話がふと頭によぎったが、答えは既に決まっている。


昼の検診の時、診察してくれている桜木先生に話した。


「先生、この間の話。」


「あぁ、決まった?」


「はい、申し訳ないのですがお断りしてもいいですか?」


「そっか、残念だな。けど仕方がないね。そう伝えておくよ。」


「すみません。」


「大丈夫だよ。」


先生はそう言って病室を出ていった。



夕方になり結衣が来た。隣には康太もいた。


「お疲れ様。結衣、朝から楽しそうだったね。」


入ってきた結衣の機嫌がかなりいいことは見てわかった。


「実はね、私たち、卒業したら入籍することにしたの!」


「ほんとに?おめでとう!!」


「本当は大学卒業まで待つつもりだったけど、思いのほか問題が多すぎてな。」


「問題?」


「あの動画だよ。あれで思いのほか人気が出過ぎて、もう学校では結衣の人気が出てな、それを羨ましく思った女子に男好きだの、ビッチだのあることない事言われてるから俺が言ったんだよ。俺達高校卒業したら籍入れるんでって。」


「私が1番恥ずかしかったのよ?教室の真ん中でプロポーズするんだもん。」


「素敵じゃん。ナイス康太。」


しばらく2人の惚気を聞いていると、ドアが開き春樹が入ってきた。


「春樹、遅かったな。」


「お前らなぁ、2人でさっさと逃げやがって、俺があいつらの相手をする羽目に…。」


春樹は学校で注目を集めた結衣と康太の話を色んな人に聞かれたらしく、それらを相手していたら遅くなったらしい。


「ごめんね春樹。」


結衣は手を合わせて謝っていた。


全くと、次は康太に説教をしだした春樹。

その様子を見ながら私と結衣は穏やかに見守ていた。


私は結の袖を軽く引っ張った。

すぐに反応して私の声が聞き取れるように結は顔近づけてくれた。


「どうしたの?」


「結衣、ハッピーバースデイ。あと、婚約おめでとう。わたし、凄く嬉しい。」


「春ちゃん。私もありがとう。最高の誕生日だよ。」


結衣は今までで1番の笑顔で私にそう言った。

とても幸せそうで私もとても幸せになれた。


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