第42話 ずっと一緒に
病室のベットの上からいつもと変わらず降り続ける雪を最近ボーッと眺めてしまう。
もうすぐ1年が終わる。
色んなことがあったなと思い返すとつい思い出し笑いをしてしまう。
そろそろなんだと身体が悲鳴をあげていた。
もう、身体を動かす力が無い。
感覚もない。
薬を投与され始めて色んな副作用で苦しんだ。
しかし、症状が悪化しすぎて薬は効かないと判断され治療用の薬は外された。
部屋に置かれているテレビに目をやると年越しの番組が騒がしく流れていた。
テレビを見ているとドキュメンタリードラマが始まった。ガンと向き合って亡くなったある少女の話だった。
少女は逝く間際、とてもいい顔をしていた。
なんとも言えない、嬉しそうな、でも悲しそうな、だけどなんの後悔もないような。
いつの間にか夢中になってみていたらしく、声が聞こえて首を横に向けると春樹と結衣と康太が居た。
「春ちゃん…。」
結衣は何故か泣いていた。
「なんで泣いてるの?」
「春ちゃん。」
結衣は私にしがみついてもっと泣いた。
「結衣は昔と変わらず泣き虫だなぁ。ね、2人とも。」
「…そうだな春。」
返事をしたのは春樹だけ。康太は静かに私たちを見つめていた。
いや、結衣のことを優しく見守っているようだった。
「結衣…良かったね。」
私は腕をあげて結衣の頭をゆっくり撫でた。
すると結衣は更に泣き出した。
ふと気づいた、結衣たちも指にリングをしている。
「みんな一緒だね。4人で結婚するみたい…。」
そうふざけて言うと康太が私の頭を乱暴に撫でた。
「お前らのおかげなんだ。俺たちはジジィになってもずっと一緒にいる。見ろ、リングはお前たちと色違いにしたんだ。4人で死ぬまで一緒なんだって結衣がな。」
結衣と康太が2人で手を挙げてリングをせてくれた。
春樹もそっと私の手を取って2人の手の横に持っていく。
「俺達の友情は永遠だ。」
はるきのその一言で私も涙が溢れた。
「良かった。2人が仲直りして。離れ離れになったらどうしようって思ってた。」
「短い喧嘩だったけど、初めて康太と本音で話す機会ができて、春ちゃんを頼りきってしまってた自分に気づいたの。春ちゃんのおかけでおかげでわかった。ありがとう。」
「お前にはいつも助けられてばかりだ。ありがとな。」
あの康太が、少しびっくりしたけど私はつい笑ってしまった。
「おい!俺は真剣にだな!」
「わかってるよ。嬉しい。私こそありがとう。」
「春、もうすぐ1年が終わる。一緒に。」
「うん。」
その後みんなで年越しまで思い出話をして笑いあった。
「3、2、1、あけましておめでとう!!今年もよろしくお願いします!!」
私たちはずっと一緒。
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