第41話 神様
あれから結局入院することになり、身体を動かすことがだるく感じることが多くなった。
春樹は毎日病院に来てくれて、時間ギリギリまでいてくれる。
雪が積もり寒いだろう。
けど、必ず優しく微笑みながら会いに来る。
「春、起きてる?」
「うん。お疲れ様春樹。」
春樹が来る時だけは身体が動く。
病室に入ってきた春樹に向かって両手を伸ばすと必ず抱き締めてくれた。
「今日もありがとう。寒かったでしょ?」
「お前に会えるなら別にいい。春は今日は何してた?」
「今日はずっと音楽聴いてた。」
「あの動画、まだ伸びてるな。」
「うん。たくさんの人が聞いてくれてるんだよね。嬉しい。あ、このコメント見て。春樹イケメンだって。当たり前じゃんね。」
最近のコメントにルックスのことについて書かれてるものがかなり多くあり特に春樹のことについて書いてる人が多かった。
私が笑ってると春樹が少しムッとした。
「どうしたの?なんで怒ってるの?」
本当はわかってる。
「…別に。それより、ちゃんと薬飲んだか?」
「ごめんって。そんなにいじけないでよ。薬は飲んだよ。」
「いじけてない。薬飲んだんなら今すぐ寝ろ。」
「いじけてるじゃん。」
「お前わかってて面白がってるな。」
春樹が少し笑った気がした。
「バレた?春樹って表情に出ないから分からない時あるけど、今のは完全なる嫉妬でしょ?」
「…言うなよ。」
私は盛大に笑った。
「春樹って案外子供だね。」
「お前ほどではないけどな!」
後ろを向いた春樹の耳が赤くなっているのを見てさらに笑ってしまったら、今度は私の目を手で覆った。
「ちょっとー、貴重な春樹くんのお顔が見えませんよー?」
「見なくていい。」
照れている春樹がとても可愛くて、目を覆っていた手にそっと手を重ねた。
私にとっての神様は春樹だけだ。
重い心を解き放ってくれたのも、勇気をくれたのも。
春樹は私の幸せの神様だ。今はずっと私だけの神様だ。
その日はそのまま眠ってしまった。
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