冬休み
第38話 雪
あのライブから1ヶ月が経ち私たちは冬休みに入っていた。
康太と春樹は無事推薦で行きたいとこに受かったらしく、結衣は一般で勝負する事になったらしい。
仁美も無事推薦で受かり私たちは学校でやることが無くなり、授業のほとんどを寝て過ごす日が続いた。毎回怒られるものの、先生も案外楽しんでいるみたいで寝たフリをして先生を驚かすことが日課となりつつあった。
今日は23日。
私は携帯握りしめて春樹に電話をかけた。
『もしもし?』
「もしもし?春樹、明日か明後日空いてる?」
『どっちも空いてる。』
「え、そうなの?んー、どっちかでちょっとデートでもって思ったんだけど、どっちがいい?」
『どっちも…。』
「何それ。」
『明日泊まりでちょっと遠出しないか?』
「え、どこに?」
『どこでもいい。春が行きたいとこに行こう。』
「ほんと!?じゃあね、沖縄!」
『…県内でお願いします。』
「えぇー。」
『じゃあ、海に行こう。』
「こんな寒い時期に海ー?」
『沖縄だって同じようなもんだろうが。』
「全然違うもん!」
『わかったよ。じゃあ明日海ってことで。』
「…わかった。」
『お泊まりセット忘れんなよ。』
「春樹こそ、忘れないでね!」
そのまま電話は切れた。
私は急いで階段を降りてリビングにいたお母さんに明日泊まりで海に行くことを話した。
お母さんはすごく心配していたけど、ダメとは言わなかった。
部屋に戻り準備をしていたら電話が鳴った。
「もしもし?」
『あ、春ちゃん…。今大丈夫?』
「うん。いいけど、どうしたの?元気ない?」
『あのね…、さっき、康太と別れた。』
ふと窓の外を見ると雪が降っていた。
「ねぇ結衣、今からデートしない?」
『…うん。』
「じゃあ10分後に駅に集合ね。」
『うん。』
私はコートを着てマフラーを巻き家を飛び出した。
電話越しで結衣は泣いていた。
必死に声を殺して静かに泣いていた。
駅についてすぐわかった。
「結衣!」
「春ちゃぁああああん!!」
結衣は私に気づくと飛びついてきた。
そのまま結衣の頭を撫でる私。
周りから変な目で見られたが関係ない。
結衣が泣き止むまで私はずっと頭を撫で続けた。
雪は優しく降り続け、一緒に結衣を慰めているようだった。
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