第37話 生配信4

スポットライトが当たる。

その瞬間、静かになる会場。


何も考えなくても勝手に動く指。

アコギの音が響く。


「皆さん。今日は本当にありがとうございました。これをもちまして、ノーネームは解散します今まで応援してくれた方、今日初めて聞いたにもかかわらず暖かい言葉をくれた方。本っ当にありがとう。みんなのこの笑顔が、この先もずっと続くよう願って歌います。」


前奏を少し長めに弾き歌い出す。


「頑張れの一言が、私を救ってくれた。楽しそうなその笑顔が、私を笑顔にしてくれた。悲しいこと、辛いことあっても、支えてくれる人がいる。大丈夫だよって背中を押してくれる人がいる。焦らないでゆっくりと、間違えてもいいから。今度はあなたが幸せになる番だよ。」


私の願いは一つだけ。

みんなが幸せになれますように。


私は今とても幸せだから、今度はみんなを幸せにしたい。

この気持ちが伝わっていると信じて。


病気になって気づいたことが多すぎる。


私のソロ曲。

「幸せの歌」


聞いた人が幸せになれるように。

辛いことを乗り越えられるように。


曲が終わり頭を深く下げてしばらく動かなかった。

静寂の時間が流れる。

どのくらいたったかは分からないが頭を上げ舞台袖にはけて、幕が降りた。


これで私たちのバンド人生も幕を降ろした。


「春!」


俯いたまま顔を上げずに舞台袖に戻った私を春樹が1番に抱きしめてくれた。


「春。」


「私、幸せ者だなぁ。」


私は泣きながら笑って顔を上げた。


そばに居た結衣と康太も私を強く抱きしめてくれた。


それから私は3人の腕の中で意識を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る