第35話 生配信 2

17時になりライブハウスの扉が開く。

今日は土曜日。人が来るにはいい日時。


300人ほどの規模の会場だが、最前列には親族関係が入れるようにしてもらった。

私たちは楽屋で会場の様子をモニター越しで見ていた。


「うわぁ…、なんかいつもより多くない?」


「私たちの実力だよ春ちゃん。チケット即完売って聞いたし、生配信待ってる人も多いらしいよ。現在で1200人だって。多分これからまだまだ増えるよ!…良かったね春ちゃん。」


「うん。私の歌はこんなにたくさんの人に届いていたんだなぁ…。」


「まぁ、多少なりともフォークロ影響もあるとは思うけどな。」


康太が横から入ってきた。


「なんでそんなこと言うかなー!今感動のシーンだったじゃん!」


「ま、でも、お前の歌は最高だからな。このくらい当たり前だな。」


そう言うと康太はトイレと言って楽屋を出ていった。


「康太も嬉しいんだよ。普段ライブやる時は200人規模だったから。こんなに多くの人がいてくれて。」


「ツンデレだなー。」


私と結衣は大きく笑う。


30分前になりアナウンスが流れる。

私たちはみんなソワソワしていた。


時間が迫るにつれスタッフがバタバタしだした。


裏では色んな声が響く。


この感じ、久しぶりだ。

上手くできるかなんて心配は私たちにはない。


舞台袖に行き5分前のブザーを待つ。


ノーネーム、フォークロ、スタッフみんなで円陣を組む。


「今日は絶好調ですか!?」


『おー!!』


「楽しませる準備はできてますか!?」


『おー!!』


「楽しむ準備はできてますか!?」


『おー!!』


「最高のライブを届けましょう!!」


『おー!!』


心はひとつ。みんなで気合を入れ、すぐさま持ち場に戻る。


春樹は横でずっと手を握ったままだった。


そしてついに、開幕のブザーが鳴り響く。

会場は静かになって私たちはステージへと立つ。


始めよう。最後で最高の瞬間を。

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