第33話 前日
いよいよ明日に迫った本番。
練習を重ね、新曲が2曲出来上がり万全の体制で最終確認とリハが行われた。
オーナーも初の試みだと言っていたためいつも以上に念入りに準備をする。
「「「「ありがとうございました!!」」」」
4人でスタッフの人たちに挨拶してオーナーの元に行く。
「明日大丈夫そうだね。」
「オーナーのおかげです。ありがとうございます。」
私が笑ってそう言うと、
オーナーは嬉しそうに私の頭を撫でてた。
「君が春ちゃん?随分と可愛らしい子が無茶をしたもんだな。」
オーナーの背中から声がして覗き込むとそこには40歳位の男の人が3人立っていた。
「えと、もしかして…。」
「どうも、始めまして。元フォークロのベースボーカルやってました。野田 宏明(のだひろあき)です。ヒロって気軽に呼んでね。」
「俺はドラムやってた久木 晴貴(くぎはるたか)だ。」
「えと、ギターやってた…、桜木 夏生です。」
「えっ!?」
びっくりして大声で叫んでしまった。
「春ちゃん知り合い?」
私の後ろどお茶飲んでいた結衣が聞いてきた。
「この間話した弦狂いの夏生さんだよ!」
「えっと…、僕は代えなので、桜庭さん。あなたが出るべきでは無いですか?」
そう言って桜木先生はオーナーを見る。
「桜木…。」
「え、どういうことですか?」
桜木先生に問いかけると先生は話し始めた。
「桜庭さんは元フォークロのギターだよ。僕は途中で抜けた桜庭さんの代え。本格的にグループには所属してなかったから。」
「桜木、余計なことは言わない。」
そういったオーナーは口調こそいつも通りだったが、表情は明らかに曇っていた。
「俺たちは怒ってねぇよ。」
すると、ヒロさんがポンとオーナーの肩を叩いた。
後ろで久木さんも無言で頷き、同じようにヒロさんが叩いた反対の肩を叩いた。
私たち4人は置いてけぼりにされていたものの、場の空気を読んで静かに立ち去ることにした。
それに気づいた桜木先生がごめんねと口パクで謝っていた。
それから10分程経ちオーナー達が私たちを探しに来た。
「ごめんね!ちょっと色々あったけど、明日、僕達4人で出ることになったから!」
オーナーは嬉しそうにそう報告した。
その時のオーナーの目は少し赤くなっていた。
「はい!よろしくお願いします!!」
私たち4人はちらっと目を合わせて笑った。
みんな思っているんだろう。
(私たちみたいだ。)
すれ違って、1人で抱えて。何があったのかは分からないけど、何となく、感じた気がした。
オーナーは今心の底から嬉しそうだと。
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