第30話 霞んだ星

いよいよ10月に入り11月のライブの流れなど順調に決まって私も練習に熱を注いでいた。


体育祭の件で仁美は病気のことに勘づいているようだった。でも何も言わずに、最近はずっと一緒にいようとする。


そして、

ついに左手にまで痺れの症状が現れた。

私はライブが上手くいくかすごく心配だったが、そんなことを言っている暇はなかった。


「オーナー!やっぱり無理そうですか?」


「うん…、探してはいるんだけどね…。やっぱりみんなもういいおじさんくらいの歳だしね…。そうそう見つからないとは思ったけど、もう少し探してみるよ!」


「すみません!よろしくお願いします!」


「春ちゃんの方はどう?練習とか、捗ってる?」


「はい!!新曲もできたんであとは本番に備えて練習してます!」


「新曲か!早く聞きたいな!」


「リハではやらないんで本番を楽しみにしててください!」


「わかったよ。じゃあ今日はある程度決まったからやることないし、このあとご飯でもどう?」


「いいんですか!?焼肉がいいです!」


「少しは遠慮して…。と言いたいところだけど、本番1か月前のモチベーション上げにはちょうどいいし、行こうか!」


「やったー!!」


そのまま私たちは近くの焼肉に行くことになり、そこでも色々と進行、パフォーマンス、出演者についてたっぷり話し合った。


「じゃあ春ちゃん気をつけてね。無理しすぎないように。」


「はい。ごちそうさまでした!」


オーナーと別れて携帯を見ると康太から着信が来ていた。

折り返しかけてみると康太はすぐに出た。


「もしもし?」


『おい春!お前どういうつもりだよ!ソロライブって、俺たちグループじゃねーのかよ!』


「あはは…、春樹のやつ…。」


『答えろよ!勝手にライブキャンセルして、勝手に解散したくせに、自分は勝手にソロでやるのかよ!』


「康太、ごめんって。ほら、そっち受験で忙しいだろうし、結衣からも無理かもって言われてて、勝手にしたのは謝るけど、落ち着いて時間とか合いそうだったらまた再結成すればいいと思ってたし。」


『おっ前は!俺はやらないなんて一言も言ってねぇぞ!結衣は過去問の成績が毎回イマイチだったから勉強に集中したいって言ってんだよ!けど、俺と春樹は志望校によゆーで届くんだよ!俺は指定校貰ったし。正直、結衣より頭のいい俺は、趣味と学業両立できるんだよ!結衣もすぐ成績伸びるだろうし。だから、11月のライブに俺らも出るぞ!春!』


「噛まずによくスラスラと…。ありがとう。

もう、そんなに出たいなら仕方ないなぁ!出してやらんこともない!その代わり、絶対受験、成功させてね。」


『ハッ!俺がお前に電話した時点で成功率は99.99パーセントなんだよ!』


「100じゃないんかい!」


『何事も100パーなんてありえねんだよ。だからさ、春も頑張れよな。今回も新曲あるんだろ?それ後でデータで送れよ?もちろん結衣と春樹にもな!』


「わかったよ。康太、ほんとにありがとう。おやすみー!」


私は電話を切って空を見上げた。

そこには星が少し霞んで見えたが、綺麗に輝いていた。






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