第28話 体育祭
この前2週間全力で練習した。
ついに今日が本番だ。
「只今より、第43回、体育祭の開会を宣言します。」
この一言で学校の雰囲気が変わる。
競技は順調に進み、仁美も文句を言っていた割には楽しそうだった。
「春ー!見てた!?私去年より足早くなったかも!」
「見てたよ!ビリからの1位はかっこよかった!!」
「ねえねえ、お昼どこで食べる?」
「屋上は?」
「春好きだよね。屋上。去年も屋上だったよね。」
「そうだっけ?」
二人で話していると次の競技のアナウンスが流れた。
「あ、次出なきゃだから、行ってくるね!」
仁美が手を振りながら大勢の人の中に消えていった。
『次の競技は借り物競争です。いろんなお題を用意しておりますので皆さん頑張ってください。』
そのアナウンスとともに選手たちが入場する。
その中には仁美もいて何故かすごく凛々しい顔立ちに見えた。
ホイッスルとともに競技が始まった。
お題は変なものばかりで、【イケボの人】や【イケメン】【佐藤健似の人】など、女子校ならではの欲望が詰まったお題だった。
ちなみに佐藤健似のお題で、うちの学校の教師を連れて行った子がやり直しをくらっていた。
連れていかれた先生はどことなく悲しそうだった。
次はいよいよ仁美の番だ。
一番乗りでお題を手に取り中身を見た仁美はこっちに向かって走ってきた。
「春!来て!」
私は手を取られて先生が止めるのを無視して仁美とゴールへ向かって走った。
審判の人に紙を渡し中身を確認する。
「お題は歌が上手い人ですね。」
【おっと、一番乗りのお題は歌が上手い人だったようです!では、アカペラで1曲お願いします!】
急な実況からのフリ。
仁美は私を見て頑張れと小声で応援している。
私は係にマイクを渡された。
マイクを両手で持って思いっきり息を吸い込む。
「〜♪〜〜♪」
私は自分の曲のワンフレーズを歌って静まり返った会場を見渡す。
みんながこちらに注目していた。今までの賑やかな声が一切聞こえない。
数十秒後、会場には盛大な拍手が響き渡った。
【なんとも聞き惚れる美声でしたね。!会場も盛り上がったところで次の選手が到着です!】
私は拍手を受けながら自分のチームのテントに帰った。
瞬間、一瞬目の前が暗くなった。
私の見張り役の先生がそれに気づきなんとも複雑そうな顔をしながら救護テントまで誘導してくれた。
「三嶋さん!あれほど走ってはダメと言ったのに!…でも、とても綺麗な歌声でした。思わず聞き入ってしまいましたよ。さすが有名バンドのボーカルですね。でも、約束はちゃんと守ってください!」
「ごめんなさい。」
そのまま保健室に行きベットに寝転ぶと意識はふと途切れた。
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