第23話 最後の夏休み2
家族旅行は沖縄に行くことになった。
水族館、海、郷土料理など沖縄ならではを堪能し楽しい3泊4日を過した。その間病気のことはほとんど忘れられた。そして不思議なことに沖縄に滞在した3日間は、痺れも気絶も無かった。
病は気からというのはあながち間違いではないのかもしれない。
家に帰ってからは旅行の反動か、寝たきりの日が2、3日続いた。
特に何も問題はなかったがせっかくの休みを一日中寝たことで無駄にしてしまったと思うと少し悔しかった。
生活ペースが戻ってきた頃、私はやるべきことをいくつか思い出し急いで携帯を開いてある人に電話をかけた。
「すみません。忙しい時に。今大丈夫ですか?」
『大丈夫だよ。珍しいね。春ちゃんから電話なんて。』
「ちょっとお願いがありまして。」
『なんでも言ってくれ。いつも盛り上げてもらってるし、できることなら力になるさ。』
「ありがとうございます。あの、1日でいいのでライブハウスを貸して欲しいんです!」
『それは、理由を聞いても?』
「詳しくは話せないんですけど、やっぱり、色んな人に歌を聴いて欲しくて。迷惑なのはわかっています!解散して音楽やめた分際でこんな事言うの本当にふざけんなよって自分でも思います。でも、これが最後なので、お願いします!!」
私は頭を深く下げた。これは私個人のケジメである。
『…春ちゃんの頼みだ。もちろん。このステージ、貸切にしよう。』
「ありがとうございます!!」
『いつとか希望はあるの?』
「いえ、特には。」
『じゃあこっちで決めてもいいんだね。それなら今度直接会って話そうか。』
「はい!!本当にありがとうございます!」
『いいよ。こっちもライブの度に無理言って盛り上げてもらってるんだし、お互い様だよ。じゃあ仕事に戻るからまた後で連絡するよ。』
「はい!!お疲れ様です!!」
電話が切れると同時に私はベットへダイブした。
思い切り息を吸って枕に顔を埋める。
「よっしゃああああああああ!!!」
叫ぶように声を上げるが枕のおかげで自分にしか聞こえないくらいの声量になる。
本来、ライブハウスをたかが高校生の無名バンドのために貸切にしてくれることなんてまずありえない。
「本当に、いい人だな、オーナーは。感謝だ…。」
2年間、私たちをずっと応援してくれてたオーナーは本当に優しくて、何かあるといつも助けてくれた。私たち4人にとってはお父さんのような人だった。
そういえば、オーナーも昔バンドやっていたらしいが、詳しいことは全く分からない。
なにか引っかかる気がしたが、すぐに頭を切りかえギターを手に取りあの曲を弾く。
練習しなければならない。
私にはこれしか思いつかなかった。
最後の夏休みは、いい事だらけだったと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます