第16話 覚悟
ライブが近づく中、進路のこともあり結衣と康太はいつも以上に喧嘩をするようになった。
国立大学をめざしているだけあって勉強がかなり大変なようでストレスが溜まっていた。
「今のとこ、康太の音違ったよね?なに?やる気ないの?」
「お前こそ、段々早くなっていってんの気付いてねーのかよ。やる気ないのはお前だろ。」
「私のせいにするわけ?別に早くなってないし。」
「はい!ストップ!2人とも落ち着こ!結衣はこうたの言う通り少しだけテンポが早くなってたから気をつけて!康太もいつも以上に間違ってるよね?少し休もうか。で、いいよね春樹。」
「そうだな。少し疲れたし、休憩するか。」
「じゃあ15分後に再開するから!」
手をパンっと叩いて合図をすると同時に康太が部屋の扉を勢いよく開け早足で出ていった。
私は軽く視線で春樹に追いかけるように言うと伝わったようで直ぐに春樹も出ていった。
私は結衣の隣に座り飲み物を渡して頭を撫でてあげる。
「お疲れ様。ごめんね。こんな時期にまでバンド続けてもらっちゃって。」
「ううん。やってないとストレス発散できない。」
「当たりすぎてスティック折らないようにね。それ、康太から貰ったやつなんでしょ?結衣に似合ってるよねほんと。」
「春ちゃん。私、今回のライブを今年最後にしようと思う。受験終わったらまたやりから、辞めるって訳ではなくて…その。」
「うん。私も考えてはいた。他のバンドの子達も受験生が多いらしくて、どんどん解散してるっぽいんだよね。覚悟はしてたんだよね。そろそろかなって。」
「春ちゃん…。」
「仕方がないよ。音楽でやっていくならともかく、結衣達はやりたいことがあるんでしょ?なら、バンドは切るべきだよ。」
「うん。ごめん。」
「謝らないでよ。初めから、受験前には解散しようと思ってたんだから。」
「でも…。」
「でももヘチマもないの!ほら!最後のライブ、そんな暗い気持ちでやるつもり?嫌だからね!私そんな結衣とはステージに一緒に立たないから!」
「そうだね。最後のライブ気持ちよく成功させてお客さんにも楽しんでもらわないと。」
「そうだよ!お客さんを楽しませ、自分たちも楽しめ!これ、私たちのスローガン!いっぱい練習して最高のライブにしなきゃだよ!」
「うん。頑張る!」
本当は続けて欲しい。結衣も、康太も、春樹にも、ずっと音楽をやっていて欲しい。でも、ワガママはもう言えない。3人には1番の選択をして欲しい。その選択を私が邪魔をすることは決してならない。
それでもやっぱり──
「悔しいなぁ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます