新学期
第13話 教室
今日から新学期が始まる。
3年生として後輩を引っ張らなければならないが、正直、どうでもいい。
私としては次のライブのことしか頭に無く学校ものならなど、どうでもよかった。
授業内容が頭に入らず気づけば昼休みになっていた。お弁当を持って椅子ごと後ろの席に向く。
「つっぎーのライブは2ヶ月後〜♪」
今回はかなりはやい間隔で呼んでもらった。
この間の卒業ライブから私たちのファンが増えたからライブ回数を増やしたいらしい。
「今日元気だね春。」
学校で1番仲のいい浜田 仁美(はまだ ひとみ)が私の背中をつついて話しかけてきた。
「そうかな?いつも通りだよ〜。」
「この間のライブ良かったよ。」
「て、来てたの?」
「当たり前じゃん。うちの兄貴の卒業ライブだよ?」
「そうだけど、仁美って音楽興味なかったんじゃ。」
「そうだけど、最後だし聴いてやろうと思ってね。」
仁美はこの間の卒業ライブの主役である先輩バンドグループのボーカル、ジンさんの妹で兄妹共々私たちは仲が良かった。しかし、仁美はバンドには全く興味がなくジンさん達のライブに来ることは滅多になかった。
「さすが春だったね。兄貴たちより目立ってたわ。」
「え?嘘?」
「マジだよ。あの出演者の中でダントツ目立ってた。」
「うわー、先輩達が主役だから目立つなよってめっちゃ釘刺されたんだよねー。今回は派手なことやってないし目立ってないかと思ってた…。」
「今回はっていつも派手なことやってんの?」
「やってるよー。仁美は滅多に来ないし、私たちのは見た事ないから知らないだろうけど。」
「へぇ。どんなことやんの?」
「うーん、袖からスタンバってた後輩引っ張って無茶振りしたり、曲の途中で勝手に別の曲始めたり、でも一応スタッフさんに言ってないだけでメンバーでは決めてる流れだから失敗はしたことないけど。盛り上がれば怒られないし。」
「うわぁ、それ、私でもわかるわ。迷惑だな。」
「そうかもしれないけど、もうみんな慣れてるし、今ではそれが当たり前。何をしでかすか分からないグループで通ってるから大丈夫。」
「そうなんだ。でもこの間のはそんな風には見えなかったのに。」
「さすがに先輩達のライブはちゃんとするよ。」
「でも、あの最後の曲良かったよ。」
「でしょ?うちのオリジナルソングだよ。」
「うん。なんか、こう、聞き入ってしまった。よく入院してたのに追いついたなって、兄貴が言ってた。」
「まぁ、曲のベースはもうできてたし、そのあとの入院だったからその間にほかのメンバーがやってくれて私は退院してからは作詞しかしてないよ。」
「私は知らんけど、曲作るのって難しそうだよね。」
仁美は赤いトマトを私に差し出してきた。
「まぁ、最短で1ヶ月半くらいかな。その時はもう死んでるけどねー。でも基本3ヶ月で出来る!」
トマトを食べながら答える。
「仁美、トマト嫌いなおしなよ。」
「トマトを食べなくても死なないし、春が食べてくれるからいいの。」
「えー、もう食べてあげれなくなるよ?」
「あー、そういえば、春って進路どうすんの?進学?就職?」
「えっと、まだ決めてない、」
「早く決めないと、1人だけ置いていかれるぞー。」
私には進路なんて考えることは出来ない。
将来何をしたいという夢さえない。
その時ふと思った。
(結衣達は進路とか決まってんのかな…)
私はポケットの携帯取り出し幼なじみのグループメッセージで聞いてみた。
【みんなってもう進路とか決まってたりする?】
それだけ送って直ぐに携帯はポケットにしまった。
「なに?彼氏?」
何を勘違いしたのか仁美はニヤニヤしながら私のポットの携帯を見た。
「違うよ。メンバー。」
「そういえば、春のグループって男2人いたよね?」
「うん。1人は彼女もちだけどね。」
「なんだー、彼女もちかよー。」
「なに?」
「いやぁ、こんど2:2でどうかなと思っただけー。」
「はぁ!?ダメだよ!」
「はいはい。春は好きな男いないの?」
「いないよ。」
「メンバー2:2なのにそういうの無いんだ?」
「幼馴染だしなー。あ、でも、さっき言った彼女もちの子はもう1人の女の子と付き合ってるよ。」
「なら尚更じゃん。もう1人の男の子に興味無いの?」
「んー、私はそういう風には見れないかなー。」
「そうなんだー。」
ここでちょうど終わりのチャイムがなった。
私達は急いでカラになった弁当をなおして掃除へと向かった。
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