第8話 2週間
練習が終わり4人で帰りながら次のライブの話をする。
「2週間後、先輩バンドの卒業ライブに出る予定だったけど、正直今の段階では出れないよね。」
私は下を向きながらそう言うと、
「春ちゃん、大丈夫だよ。春ちゃんは音楽に関しては覚えが早いし、私達も春ちゃんが入院してた間覚えたから、あとは合わせるだけ。ついでに新曲ももう出来ました!」
サラッとすごいことをカミングアウトする結衣。
「俺達は、取り消すつもりないからな。ほらよ。」
新曲の楽譜と曲順が書かれた紙を康太がくれた。
知らない間に新曲までできて、曲順もしっかり考えられてて、これは…。
「春樹が全部考えてくれたんだよ。会場のスタッフさんとかに色々と掛け合ってくれてて、春ちゃんがやりたいだろうからって。」
「結衣、そういうことは黙ってろ。まぁ、俺のおかげで無事に入れてもらえるわけだから、春、俺に感謝しろよな。」
「それを言わなかったら素直に感謝してるわ。」
胸を張ってドヤっている春樹の頭を軽くチョップした。
「で、問題はここからなんだが、新曲の歌詞がまだ出来てない。まぁこれは作詞担当の俺のせいでもあるけど、歌うのは春だし今までも春が作詞してたんだから急に俺にやれって言うやつが馬鹿だ。」
康太はそう言って結衣を見る。
結はその視線に気づき思っいっきり康太を蹴飛ばした。
「だいたい無理なことを引き受けないでよ。康太がやってもいい的なこと言ったからじゃん。」
「こいつは単に作曲がめんどいだけだよ。結衣も馬鹿だよな。康太が作詞なんでできるわけねーのに。俺はこうなるだろーとは思ってた。」
「結衣をバカって言うなバカ!あと、歌詞はサビ以外は出来てんだよ!!歌うのは春だから、せめて春の分も残しといてよろうと思った俺の優しさだよ!」
「あんたが先に私をバカって…って、サビ以外はできてんの?なんで先に言わないの?じゃあもあとは本当に合わせるだけじゃん。」
私ができる前提で話がどんどん進む。
「春、サビくらいはお前のものだ。お前が書けよな。」
「まさか、康太に気を使われる日が来るとは…。」
私がぼそっと言うと康太は聞こえたらしく少し拗ねた。それを結衣が慰め機嫌をとる。
「そっか、わかった。ありがとう康太。あ、ちょっとファミレス寄っていかない?そこで覚えるから。」
「うん。いいよ!」
結衣は元気よく私の腕にしがみつきながらそう言って早歩きでファミレスへと向かった。
ファミレスで私は必死に新曲のメロディとギターのコードを覚える。
作曲は結衣と春樹がやったらしく私のギターは少し簡単なコードにしてくれていてすぐ覚えられた。
歌詞は康太と一緒に歌いながらメロディと同時に頭に叩き込むを繰り返す。1時間である程度覚えたため明日の練習の時間を決めてそのままその日は解散して帰った。
あと2週間。その間に3年の卒業式が入るため実質本番までの練習期間は1週間くらいだろう。
私は気合を入れるため家までの道をダッシュで帰り、家に着くとお風呂に入って部屋にこもり、夜中遅くまでずっと頭の中でメロディを覚えては歌いをしていた。
歌詞は、またあした考えよう…。
そのまま気絶するように眠った。
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