第6話 決断

また、意識を失った。

最近意識を急に失うことが増えた。


あの選択を突き出され1週間が経った。その間も幼馴染3人は毎日お見舞いに来てくれて、他にも学校の仲良かった子も来てくれていた。

私はまだ決められずにいた。

そして、3人にも病気のことを話せずにいた。


3日前に先生が


「若い子の進行は早い。なるべく早く決めて欲しい。春ちゃんには辛い選択かもしれないけど、後悔しない方を選んで。3日後までに答えを出して欲しい。」


と言われ、両親も最近は空元気だった為話をしようとしても出来なかった。

多分両親も覚悟をしているはず。


今日も朝方意識を失い目が覚めると夕方になっていた。


「はーるちゃん!!元気!?」


「結衣!!元気だよー!!毎日ありがとね!」


結衣たちが来て目が覚めてよかったとドキドキしながらいつも通り元気に返事を返した。


「いつになったら退院できるんだろうね。」


結衣は知らない。もちろん康太と春樹も、私がこのままベッドで過ごすことになることは、誰も知らない。


「早く春ちゃんの歌聞きたい。また一緒に音楽やりたいんだよね。春ちゃんが入院してから何か足りないなーって思ったら音楽をやってる日常だったんだなーって、思ってさ。春ちゃん。歌歌って欲しい。」


結衣は普段は絶対に恥ずかしがって目を合わせてくれないのにしっかりと私の目を見つめてそういった。


「春…俺、お前の歌だけはすごいと思ってんだから、あともうすぐでライブだぞ。お前が好きなライブなんだぞ。早く治せよな。」


康太は私の手に軽く自分の手を置いた。


「という訳だ。お前がいないと俺たちが調子狂うんだよ。」


春樹はそう言って笑った。

普段バカにしかしないくせに、なんでこういう時はちゃんと…


私は涙が出そうなのをこらえた。


「3人とも柄にもないこと言ってくれるじゃないですか?結衣にいたっては普段私が見つめると逃げる癖に今日は視線に熱を感じましたが。結衣は渡さん。これで結衣は私のものじゃあぁあああ!」


ふざけて結衣に抱きついた。


「ふっざけんな!結衣は俺のだよ!離れろこのサル!」


康太が素早く私の頭を叩いて引き剥がした。


私はこの日常が好きだった。


結衣に背中を押され、康太に心配されて、春樹に励まされて、なんて楽しい日常を、この日常さえ送れれば私は。


「決めた!ありがとう!結衣、康太、春樹!3人とも大好きだよ!!」


3人は私はがいきなり大声を出したことにびっくりしたのか最初は驚いていたが私が大声で笑い出すと一緒に笑ってくれた。


(これが、私の、決断。後悔しないように。)


それからしばらく4人で話して3人が帰ったタイミングを見計らって桜木先生が入ってきた。


「春ちゃん。」


「先生!私、治療は受けない!後悔はしたくない。最後の最後まで、私は音楽をやめない!」


先生は優しく微笑んだ。


「分かった。ご両親には直接そう言ってあげてね。春ちゃんは、本当に音楽が好きなんだね。」


「もちろん。私の歌で元気になる人が1人でもいるなら私は音楽を辞める気は無いです!」


笑ってそう答えた。


その後、両親が来て私の選択を伝えると、2人とも笑って、納得してくれた。


「春ちゃんらしいわね。音楽、小さい時から好きだったもんね。最後まで頑張って。」


お母さんはそう言うとギターをチラッと見た。


そこからすぐ退院の日を決め、薬、検診の日を事細かに決めていった。

退院は3日後。

ちょうど3月1だった。



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