第2話 運命
早くも2週間が過ぎ進級も近づいてきた。今は2月。3年生の卒業式には2年生も出席しなければならないため、そのリハやら準備やらで中々練習できなくなっていた。
今日はみんな都合が良かったみたいでいつものスタジオに集まることになった。
最近痺れが強くなってきている気がする。
そのままギターを抱えていつもの様に向かっていると、途中で春樹と会った為一緒に行くことになった。
「最近忙しいよな。」
「まぁ、卒業式も近いですしねぇ。私も早く卒業したい〜。」
「お前はただ勉強したくないだけだろうが。」
しばらくたわいもない話をしていた。
「なぁ、お前さ。」
春樹が急に真剣な顔してこちらを見て立ち止まった。
「今すぐ病院行け。」
「は?どうしたの急に。」
「お前気づいてねぇの?右手、痙攣してるみたいに震えてるぞ。」
自分の右手を見ると、確かに激しく震えていた。全然気が付かなかった。
麻痺して感覚が無かったんだ。
「あー、最近よくあるから、少ししたら治るし大丈夫だよ。」
「何かあってからじゃ遅いだろ。すぐに行ってこい。」
「ダメだよ。せっかくみんなで集まれるんだし、今日はダメ。イベントも近いし練習を一日でも多くやらないと。」
「…じゃあ明日絶対行けよ。」
「わかってるよ。」
そう言ってまた歩き出した。スタジオに向かっている最中チラチラと右手を見ていたが一向に収まる気配はなく結局そのままの状態でスタジオに到着してしまった。
「おい、ほんとに大丈夫かよ?」
「おっかしいなぁ。いつもならすぐ治るんだけど。」
その時。プツン──と音が聞こえたと同時に意識を手放した。
目を覚ますと、天井が見えた。横には人の気配がしてそちらに顔を向けると、結衣が私の手を握っており、康太と春樹がその後ろに立っていた。
「なにしてんの?」
その声は3人には届かなかった。
「あ、春ちゃん?おきた!?先生呼ばなきゃ!」
結衣はボタンを押した。
「こ、こは?」
「ここは病院だよ。春ちゃん、スタジオの前で急に倒れたって。春樹がいて良かったよ…。」
「だから病院行けって言っただろうがバカ!」
「ごめ、ん…。」
春樹がこんなに怒ってるのを見るのは初めてで、少し怖かった。
「今、おばさん達もこっちに来てくれてるから…。」
結衣の手の震えが私の手に伝わってきた。
すぐにドアが開く音がしてお母さんとお父さんが入ってきた。
それと同時に先生らしき人も入ってきたため3人にはもう遅いから帰るようにと母親が説得し3人は帰っていった。
大丈夫だよと笑ってサヨナラをした時みんな心配そうな表情をしていたから申し訳なくなった。
3人が完全に見えなくなり病室には少しの沈黙が流れた。
すぐに先生が話し始めた。
「初めまして。春ちゃん。僕は君の担当の桜木 夏生(さくらぎ なつお)と言います。よろしくね。今回倒れた原因は脳にあると思われます。ここ最近で身体におかしいと思ったことはあったかな?」
軽く自己紹介をした後、私にそう問いかけてきたため正直に話した。
「最近右手の痺れがありました。最初は全然気にならなかったしすぐに治まってたんですけど、だんだん痺れが強くなってきて、なかなか治まらないし、痺れも増えてきてて。」
「痺れが始まったのっていつか覚えてる?」
「確か…1ヶ月以上は前かと…思います。」
「なるほど……。そうですね。とりあえず明日詳しい検査も行ってみますので今日はこのまま入院して頂けますか?多分このまま1週間は入院していただくことになるので明日までには着替えなどをお願いしたいのですが。必要なものの説明などもしたいので今からお時間良いですか?」
先生は両親と少し話して私にまた後でと言って病室を出ていった。
病室に1人残された私はまた訪れていた右手の痺れを必死に掛け布団で隠していた。
自分の視界にも入れたくないその震え方は、もはや痺れのレベルではなかった。
ただの疲れ。
そう思いたかった。
私はまたすぐに意識が飛んだ。
そして夢を見た。
──それが、あなたの運命。
そう言われた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます