ノータイトル

橋倉 輝

始まり

第1話 違和感

三嶋 春(みしま はる)17歳。

私はどこにでもいるような普通の女子高生である。

高校生の憧れのバンドもやっている。

私は昔から歌うことが大好きだった。

誰かに歌を届けることが好きだった。

中学3年の時、お母さんがふと

「はるちゃんの歌声は綺麗だからみんなに聞かせたいわ。」

と言ってくれたのを期に幼なじみである綾瀬 結衣(あやせ ゆい)、三好 康太(みよし こうた)、野原 春樹(のばら はるき)にバンドを組もうと毎日誘っていたら最初は拒否していたが卒業前には3人とも折れて4人でバンドを組むことになった。結衣は小学生の頃から和太鼓をやっておりドラムをやらせたら才能が出た。2ヶ月も経たずに叩けるようになっていた。

康太と春樹は男ならギターを弾けて当たり前と中学1年の時からやっていたらしいからすごく上手かった。そして私は春樹のギター練習を見ているうちに何となく弾けるようになっていた。

要するに、結衣はドラム、康太はベース、春樹はギター、そして私はギターボーカルという必然的なポジションが出来ていた。


バンドを結成して2年。もうすぐ高校2年生も終わろうとしていた2月のこと。

高校は私だけ別になったが放課後は必ず近くのスタジオに集まってみんなで練習をしていた。地元の小さなライブハウスのオーナーが私たちのことをすごく評価してくれており毎回イベントの時は呼んでもらっている為そのための練習が欠かせなかった。


私は少し駆け足で歩道橋を渡り肩にかけたスクールバッグを反対の肩にかけ直そうと持った時、右手が微かに痺れた。

最近こういう痺れがたまに来ることがある。


「カバン重すぎてちょっと血の流れが悪かったのかも!」


なんて誤魔化していたが自分のことは自分がよくわかる。確実に右手に違和感が生まれていた。


「やっほー!おまたせー!」


3人にはバレないようにずっと隠している。

4人揃ったところでスタジオへと入った時、また右手がかすかに痺れていた。

もちろんそんな手でギターを弾くことは出来ない。


練習をしばらくして、暗くなったから終わろうと片付けを始める。


「疲れたー!のどかわいたよー!」


「そうだね。春ちゃん一緒に飲み物買いに行こう!康太達は片付けお願いするね。」


そう言って結衣と二人で自動販売機に向かう。

結衣は美人だ。女の私が見惚れるほど。

じーっと結衣の横顔を眺めていると結衣が私の視線に気づいた。


「またやってる。」


そう言いながら苦笑いしてる結衣も可愛かった。


「私は結衣ちゃん推しなので。」


「春ちゃん、何かあった?」


やっぱり、バレてた。


「何もないよー?どうして?」


「春ちゃん、今日ミス多かったよね。」


「今回の曲、あんまり練習できてなくて、ごめんねー?」


「…分かったよ。春ちゃん。」


これは、早めに病院に行くべきなのか。

ずっとこの痺れが続かれるのはとても困る。


この日は結局そのままみんな解散した。

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