夜明け
真っ暗闇の中。なにも見えない。助けも来ない。泣いても泣いても。光は射さない。
俺、唐真湊士は今熱いトーク真っ最中。友人の真尋ちゃんこと大友真尋にコクられた、瀬賀竜快。こいつと真剣な話している。
真尋ちゃんと俺が入ってきた時点で成侍が"CLOSE"にしたらく店には誰も来ない。
いるのは、俺、成侍、瀬賀の3人。
「ねぇ、瀬賀さん。瀬賀さんは奥さんもいて子供もいるのに、真尋ちゃんと寝たの。」
「もともと、ゲイだったんですけど。親に結婚を急かされ。母を泣かせるわけにもいかずしぶしぶそのお見合いを受けてその流れで結婚」
「で?」
「それでも、最初はうまく行ってたんです。子供もできて。」
「・・・」
「でも、今は別居中でして。」
「へー。それで気晴らしに真尋ちゃんを抱こうと?」
「いや、そんなつもりは無かったです。ただ、誘われたから。」
「じゃ、瀬賀さんは誘われたからシた。それで、いいんですね。」
「は、えっ?」
「そんな理由。最初だけですよ許されるの。」
「最初だけ・・・。」
「だって瀬賀さん、『貴方は気持ち良かった。またしたい』って理由で、真尋の連絡先を聞いたが教えてくれない。だから、真尋がしてきた交換条件を期待していた。またSEXできるかもしれないという思いで」
「・・・」
「しかし、真尋はいつになっても来ない。1週間、1ヶ月。でも、好きな相手じゃないんです。諦めようと思いませんでしたか。」
「それは・・・」
「そんなに良かったですか。半年待てるくらい良かった。」
「・・・」
「もし、真尋がちゃんと、1週間後とかに来ていて、何回かヤれたとします。そしたら、今日の断り方あいつに出来てましたか。」
「・・・」
「だったら、気があるようなことしないで下さい。」
「本心言って、分かんない」
「え?」
「分かんないんですよ。話していて楽しい。そばいて欲しい。好きという気持ちはどこかにあります。」
「あるならなんで」
「妻との関係をハッキリさせてから、付き合いたかったんです。」
「じゃ、ちゃんと真尋にしっかり説明してやって下さい。」
「で、でも。もう。」
「真尋にはちゃんとした恋をしてほしいんです。ノンケやクズばかりに恋をしてまって、いつも傷ついて終わる。」
「えっ・・・」
「意外ですか。」
「はい。恋愛経験豊富かと」
「豊富ちゃ豊富ですよ。ただ、今の真尋からしたら恋愛なんて自分を傷つけるものでしかない。もう少しだけ、話し聞いていただけますか。」
「はい。」
「真尋は今、恋愛に卑屈になっています。理由は前の彼氏が女を作って、その女のお腹にはもう子供すらいた。」
「そんな・・・その人はノンケだったんですか」
「いや、ゲイでした。いや、バイだったのかなぁ。仲間の感じだってしてたんです。」
「それなのに」
「はい。男との浮気だったら、まだ傷も浅くて済んだと思います。でも、女とだと俺たちには越えられない壁がどうしてもある。」
「子供ですか。」
「そう。相手との子供を作ってあげられない。」
「で、その後真尋は」
「1週間荒れました。酒を飲んで泣いての繰り返し。いつもより荒れかたも酷くて俺も心配していると、次第に色んなやつと寝るようになった。」
「え・・・」
「それは今も治ってないです。」
「じゃ、それで僕に声を」
「多分。色々話したんですよね?」
「はい。趣味とか」
「普段ならすぐ、ホテルにって感じなんです。でも、そんな会話をしたってことは、真尋は無意識でなにかを感じたってことだと俺は思います。」
「そ、そうなんですね。」
「あの、瀬賀さん。気がないなら行かないで下さい。もし、可能性があるのなら行ってあげて下さい。」
「え?」
「ここをずっと真っ直ぐ行くと左側に少し小さめの公園があります。そこに真尋はいます。」
「わ、わかりました。」
「いっちゃったよ。どう思う成侍は上手く行くと思う?」
「きっと、いきますよ。」
竜快さんにフラれてバーを飛び出した俺は、ただひたすらに走り続けた。涙も止まらない。
竜快さんに奥さんと子供がいたなんて信じられない。信じたくない。
じゃ、なんで俺とのSEXをOKしたんだ。なんであんなに優しく抱いたんだ。
上手くいかなかった。なんで俺はいつもそういう奴ばかりに恋をしてしまうんだろう・・・。
それから、どれくらい走っただろうか。涙は止まらないまま、走り続けているとケータイが鳴った。
坂町からだ。
『もしもし。真尋さん。』
「う、うん」
『今どちらにいらっしゃいますか。』
「分かんない」
『近くになにかありますか』
「えっと。こ、公園」
『分かりました。今迎えに向かいますので動かないで下さい。』
「えっ、」
そういうと電話は切られてしまった。
前だって。好きになる奴は女を作ったり、女がいたりする。もう、恋はやめよう。そう何度思ったことか。今回で本当に最後だ。
公園に来てから30分は経っただろうか。何処からか俺を呼ぶ声が聞こえた。
「真尋」
「湊士?」
「いや、俺」
近くに来てやっと分かった。竜快さんだ。
「え?なんで。」
「えっと。話したいことがあって」
「俺はないから。気がないんだろ。だったら帰れよ。」
人の気持ち分かってて迎えに来るか普通。それも告白を断った相手だ。
「帰んないなら俺帰るわ。じゃ。」
「ま、待って。真尋」
そう言って腕を捕まれた。
「痛いんだけど。離せよ。」
「今離したらいなくなるだろ。」
「いなくならなきゃいいんだろ。」
「あぁ」
「分かったから離せ」
「うん」
「で、話しってのはなんだよ。」
「えっと。さっきあんなこと言って信じてもらえないかもだけど」
「なんだよ。速く言えよ。」
「俺。真尋のこと好きだ。」
「は?なに言っての?」
心臓が握り潰されるように苦しい。
「分かってる。さっき断っているのに。」
「好きなのは分かった。それで?なにしたいわけ?」
「えっと・・・」
「SEX。それとも、デート。」
どっちもしたいのは俺だろ。
「・・・真尋」
「なんだよ」
「俺どっちもしたい。でも、今の俺だとなにもできない。」
「は?したいならすりゃいいだろ。今だって押し倒せる。抵抗しねぇよ。それで気が済むなら」
なに言ってんだ、俺は。自分で言って自分で虚しくなる。
「真尋」
「なんだよ」
「今の俺には手を出す権利もデートする権利もない。」
なんだよ。それ。今したいって言ったじゃねぇか。
「しっかりけじめをつけないと。」
「別にけじめなんて要らねぇだろ。今抱いたって、別にいいんじゃねぇの?」
「それは、だめだ。」
「別にまだ、俺。竜快さんのこと好きだからいくらでも抱かれてヤるよ」
「真尋。それは・・・」
また、俺は傷つけたのか。あのときも、そんな傷ついた顔をしていた。
「ねぇ、竜快さん」
「え?」
傷つけてしまったと思うと一気に怒りが収まってしまう。
そんな、自分に呆れてしまう。
「湊士からなに聞いた?なんか俺のこと聞いたでしょ?」
驚いた様子で竜快さんは俺の方を見つめている。
「あっ、えっと・・・元カレのこと。」
「あ~。桜太のこと。」
そういいながら、桜太との過去を思い出した。
「ねぇ、竜快さん。少し寒いね。戻りながら話そうか。」
俺は湊士にバーまで戻ってもいいかと電話かけた。
「もしもし」
「おっ。真尋ちゃん!どう?大丈夫?」
「あぁ。」
「良かった。」
「その。二人でいるとこ悪いんだけど」
「いいよ。戻ってこいよ」
「マジで悪い。」
「気にすんな」
「あぁ。」
そう言って電話切った。
電話が終わり。竜快さんにどこまで話を聞いた。
「湊士どこまで話した?」
「えっと、女の人との浮気で・・・」
「それなりに聞いたんだね」
「う、うん。勝手にごめん」
「いいよ。別に、湊士が勝手に話したんだろうし。」
桜太との過去は思い出したくないことのほうが多い。
「桜太は、俺の高校の時の同級生だったんだ。」
「そうだったんだ」
「うん。もともと俺は桜太に気があって。でも、伝える勇気が無くて諦めてた。そしたら、高校卒業してから何年か後に二丁目で再会した。」
「あれ?大友じゃん!」
「そ、そっちこそ。新谷じゃん。」
二丁目なんかで同級生と会いたくなかった。それも、気になってた奴とか。
「こ、ここ。二丁目だけど新谷なにしてんの?」
「相手探し」
「へ!?新谷ゲイだっけ?」
「いや、別にどっちでもいける」
「そ、そうなんだ。」
「あぁ。あっ、大友。今相手いるの?」
「居ないけど。」
嫌な予感がする。
「じゃ、俺とどう?高校の時俺のこと好きだったろ。」
なんで。いつ俺はへまをした。気付かれないようにしていたはず。
「ずっと俺のこと見てたもんな。よく目合うなって思ったんだよ。そしたら、卒業式の日。お前俺の机で泣いてた。好きだったって。」
あのとき見られた。誰もいないと思ってたのに。
「えっと、それは。」
「それで机にまで、好きだったなんて書いて」
「なんで、それ。」
「忘れ物あったから取りに戻ったんだよ。」
「そ、そうだったのか」
「あぁ。」
「でも、あれからめっちゃ時間たってんだ。好きなやつも変わったよ。迷惑かけて悪かった。」
「謝って欲しい訳じゃない。俺の相手しない?」
「は?」
「俺のこともう好きじゃない?」
そう、優しく囁く。
「そ、そういう訳じゃねぇけど。」
「じゃ、決まり!今日から俺の彼氏」
「え?」
高校卒業してから、何人かの人と付き合った。それもクズばかりと。そんな奴等と付き合って来た俺は、桜太が一番いい奴と思い込んでしまった。
好きになったのだって、顔じゃない。たまに垣間見える優しいところだったから本当は優しい奴と勝手に思っていた。
そのあと、俺たちは桜太の部屋に行った。
「新谷の家。でかいな。」
「新谷じゃない。名前で呼んで」
「えっと、桜太。」
「あぁ。賃貸だけど。」
「家賃いくらだよ」
「そんなの聞いてどうすんの」
「どうもしないけど。」
「そんなことより早くヤろ。」
そう言ってキスをしてきた。
高校の時のあの気持ちを癒すかのような甘くて気持ちいいキス。
それから俺たちは、何度もキスを交わし。甘い甘い。SEXをしてから眠りについた。
次の日起きると、桜太の姿はなく置き手紙だけが置かれていた。
『今夜、7時に来て。話したいことがある。鍵はポスト』
「なんだよ。起こしてけよな。」
そんなことを1人で言いながら、一旦家に帰った。
その日は、仕事も休みで1日中寝てすごし、7時前には桜太の家についていた。
約束より少し前だがチャイムを鳴らすと桜太が出てきた。
「速やかったね」
「あぁ。暇してたからな」
「ふーん」
「それで、話ってのは?」
「真尋、ここに住んで?」
「は?」
付き合って1日目でそんなことを言われるなんて予想もしていなかった。
「無理だよ」
「なんで?」
「なんでって。さすがに同棲はまだ速いだろ」
「それと、働かなくていいよ。」
「話聞いてた?それに、働かなくていいはマジで意味が分かんない」
「言葉の通り」
「同棲は多目に見ても、働かないのはお前にも悪い。同棲するなら、全然足しにはならないだろうけど少しは家賃出すし」
「そんなこと気にしなくていいよ!」
「いや、気にするだろう普通!」
「お願い。真尋。『うん』って言って」
「言えねぇよ。そんな、仕事やめろとか。」
「じゃ、お仕置きしなきゃ」
「は?なに言っての?」
そう言って、桜太は俺を引き寄せズボンを脱がした。
「ねぇ、真尋。四つん這いになって」
「は?嫌だ」
反抗すると、いきなり押し倒され、首に桜太の手が・・・
その手はゆっくりと首をして閉めていく。いくらもがいてもやめてくれない。
だんだん息も出来なくなってくる。
「くっ、苦しい」
「あははは。苦しい。」
「し、しぬぅ」
「まだ。死んじゃうの困る」
冷たい目で俺を見下ろす桜太。
「速く離して、、、」
視界がどんどん暗くなってゆく
「じゃ、俺の条件飲んでくれる」
「あっ、あぁ。」
やっと、閉めていた首を解放してくれた。
「ゲホォゲホォ。な、なにすんだ」
「なに?お仕置きだよ。」
この時初めて、桜太の本性を知った気がした。それでも、俺は桜太のことを嫌いになれなかった。
「ね、真尋。」
「あ?」
「俺、真尋が違う男好きになるんじゃないかって不安だよ」
「は?ならねぇよ」
「そんなこと分かんないじゃん。」
確かに。共感してしまう自分がいる。
「ならねぇから。今日はもう寝ろ。」
そうして、桜太を寝せていると自分までうとうとしてきて寝てしまった。
次の日起きると・・・
手が動かない。足も動かしてみると足もだ。金縛りか。でもまぶたは開いて視界ははすっきりしている。
手足が動かないことに戸惑っていると、扉が開く音が聞こえた。
「おはよう。真尋。よく寝れた?」
「えっ。あぁ。それよりこれ」
「あぁ。これ?手足鎖で繋いであるから」
「は?ふざけな離せよ」
「ダメだよ。」
「仕事場とかにも電話しねぇと。家とかにも行きたかったし」
「その必要もない」
頭の整理がつかないまま色々な情報が入ってくる。
「全て俺が手を回しておいたから」
「え?」
「だから、真尋は俺と気持ちよくなればいいだけ」
「いや、え?」
「いいから、黙って」
いきなりのキス。状況が理解できないまま流されてしまう。
長いキス。
それからの日々は桜太に流されるようにSEXして飯を食って寝てSEXしての繰り返しだった。
相変わらず、あの日のように手足は繋がれたままのことが多いが鎖は家での生活が困らない程度までは長くしてもらった。
桜太は、今までしたことのないようなプレイをしてくる。
この生活が4ヵ月続いていたある日。
「真尋、今日は尿道プレイとかもしてみよ」
「え。」
「怖くない大丈夫!」
と、言いながらカテーテルらしきものを取り出してきた。
「か、カテーテル?」
「そーだよ。」
「マジかよ。そんなの入らねぇよ」
「入る」
「今回はマジで無理」
何度かそのやり取りをしていると、冷たい目で俺を見てくる。最近よくその目で俺をみる。
そして、なにかしら理由をつけて首を締めてくるようになった。
今、一緒にいるのも好きだからじゃない恐怖だからだ。
今だって床に倒されて、上に桜太が乗って首を締める体制だ。
「いい?首」
首にあてていた手がどんどん締まってくる。
「苦しいの?」
「うっ、くっ、苦しい」
「あはは。毎回、そんなに首締められて、そんなにいい。」
いいわけない。なんて答えても締めるつもりでいるならきくな。
いつからか首を締められることに恐怖は感じても抗う気にはならなくなった。
そんなことを考えているうちに、いつものように視界が真っ暗になった。
気付いたら、勝手に終わっていて隣で桜太が寝ている。
でも、今日は何かが違った。意識が戻ると局部に違和感を感じた。
無意識に声が漏れる。
「あっ。はっ、んっ、やっめ」
「あっ、意識戻ったんだ。」
目が合うとそう言ってきた。
「いや、イッ、イく」
「いいよ?イけるなら」
頭が追い付かない。整理する余裕もないくらいに限界だ。
少し落着き、何があったかのか整理した。
「お、桜太。なにした」
「何って?これ?」
ゆっくりと桜太が局部のものを動かした。
「んっ、や、やめ。あっ。また。ヤバい」
「もう、前も後ろもグチュグチュなのに」
俺の局部にはカテーテルが挿入されていた。
「真尋。オシッコで出てる。そんなに気持ちいい?」
「いぁ、んっ。あっ。あっ。」
「意識戻ると声もヤバいね」
「んっ、イッ。あっ。イかせて」
「もっと奥。入れよ?ね?」
「は、はいんなぃ。」
涙まで止まらなくなる。
「入るから。ほらね。気持ちいいでしょ」
「あ゛。あっ。んっー。」
「前も後ろも顔も。ぐちゃぐちゃ。可愛い」
「あっ。いや。い、イッく。イく。」
「前説線気持ちいい?後ろからも刺激してあげようか」
後ろから、桜太のソレが入ってきた。ゆっくりと良いところに当たるように動かしてくる。それと同じように前もカテーテルも動かしてくる。
「あ゛が。んっ。ぐっ。ち●こイぐっ。」
「待って」
「あっ。あっ。んっ。溶ける」
「じゃ、そんなにイきたいなら速くするね」
「あ゛。あ゛。イぐっ。も、もうむりぃ」
「いいよ。イッて」
その言葉と同時にカテーテルも抜かれ今までたまっていたものが全て飛び出た。
「めっちゃ出たね。」
「んっ。んっ。あっ。」
「まだ、イッてる?」
そのあとまた意識が飛び気付いたら朝だった。
その日から、桜太は帰らない日が多くなった。
俺からしたら嬉しいが、手足が繋がれた状態ではどこにも行けない。
ある日ふらっと帰ってきたと思ったら適当にSEXをして終わり。
気持ちよさなんてだいぶ前から感じていない。
いつからだろう気持ちいいが何か分かんなくなったのは。
いつからだろう好きより恐怖が勝ったのは。
いつからだろう桜太の性処理の道具になったのは。
それから少したって取り上げられていた携帯を返された。
携帯を開くと湊士や坂町からの着信が山のように入っていた。
なんとなく湊士に電話かけてみた。
「もしもし。真尋ちゃん!?」
「あっ、うん」
湊士はなんだか焦っているような。安心したようなそんな声。
「心配したよ!大丈夫?元気?」
「うん。元気」
「半年前に成侍のバーに、新谷って人が真尋ちゃん。もう来ないっていうから焦ったよ!」
「ちょっと、色々あって。」
「そっか。元気な声聞けてとりあえず良かった!」
「うん。心配かけてわりぃ。」
「後でちゃんと話してね」
「あぁ。」
「とりあえず、じゃね!」
「あぁ。またな。」
それからまた、数日たったある日。久しぶり帰ってきたかと思うと手足の鎖を外し、外に出ていいと言われた。
やっとこの地獄から解放される。二人とも一言も交わさない。
俺は、すぐに桜太の家を出た。
何ヵ月ぶりの外だろうか。
俺は、また湊士に電話した。帰るあてがないからだ。
「もしもし」
「もしもし」
「迎えに来てくんね?」
「いいけど、どこに?」
「とりあえず、坂町んとこのバーでいいや。この時間ならいるだろ坂町」
「多分。」
「じゃ、よろしくな」
電話切り。急いで坂町のバーに向かった。一刻も速く遠くに行きたかった。
どれくらい走ったのだろうか、気づけば坂町のバーは目の前にあった。
扉には"CLOSE"の文字。それでも、いることを信じて扉を押し開けた。
「あの、まだ、開店。あっ、真尋さん!」
「あっ、あの~。湊士が来るまで休ませて。」
ずっと走っていたせいか息が上がっている。
「は、はい。なにかお飲みになられますか?」
「じゃ、水」
坂町は素早く行動。俺の前に水を出した。
「ご無事でなによりです。私も湊士さんも心配していましたので」
「悪いな心配かけて」
「いえ。」
それから、30分ほどしてバーの扉が開いた。
「真尋!」
「おぉ!湊士久しぶりだな」
「うん。痩せたね」
「色々ありすぎたからな」
「なに。話したくないならいいよ。」
「いや。」
それから、俺はあったことを伝えた。
その日はその話が終わるり、何日か湊士の家に泊まることになった。
一人になると色々考えてしまうのでだいたいバーにいるが寝泊まりだけは湊士の家でしていた。
そんなある日、桜太がバーに女とやって来た。
「なぁ、真尋。お前速く相手作りなよ。女はいいよ。自分の子供ができる。自分の愛が形になるんだ。」
「えっ、」
衝撃過ぎて言葉も出なかった。
動揺してる俺に変わって坂町が言葉を放った。
「新谷様でしたね。そんなことをいいにここまで?でしたら、速くお帰りになれた方がいいかと思います。」
「そうするよ。」
桜太と女が帰ると、涙が止まらなくなった。坂町やあとから来た湊士にまで当たり散らした。
あの地獄はもうない。愛のないSEXだってもうしなくていい。そう確信できたのに涙が止まらなかった。
「そ、そんなことが。」
「竜快さん。俺バカだよね。」
「そんなこと。」
真っ暗闇の中、人ではなにも見えない。時間も過ぎない。それで一緒に誰かが泣いたり笑ったりしてくれるだけで一筋の光になってくれる。
誰よりも恋してる 杏璃 @You-me
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。誰よりも恋してるの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます